Facebookは、広告主が広告キャンペーンにおいて、ブロックするパブリッシャーや動画制作者を管理しやすくするためのブランドセーフティツールを開発しようとしている。そのツールは広告主が利用するサードパーティのベンダーがコンテンツのブランドセーフティを監視し、ブロックリスト管理を自動化するAPIになると見られる。
Facebookは、広告主が広告キャンペーンにおいて、ブロックするパブリッシャーや動画制作者を管理しやすくするためのブランドセーフティツールを開発しようとしている。米DIGIDAYが以前、Facebookの広報担当者に確認したところによると、そのツールは広告主が利用するサードパーティのベンダーがコンテンツのブランドセーフティを監視し、広告主のブロックリストの管理を自動化するAPIになると見られる。
ブロックリスト管理ツールの登場は、Facebookの広告ネットワーク、オーディエンスネットワーク(Audience Network)に出ている広告に関する広告主の懸念を和らげる。だが、おそらくもっと重要なのは、パブリッシャーや個人クリエイターによる投稿に対して、Facebookが追加できるプレロールやミッドロールの動画広告数の増加を意味していることだ。
あるエージェンシーの幹部は、Facebookは最近の四半期にインストリーム動画広告へ「間違いなく販売フォーカスを移している」という。この幹部には、Facebookが2016年8月にテストをはじめたプレースメント広告を2018年第4四半期にテストしたクライアントが何人かいたそうだが、Facebookのインストリーム動画広告への広告主の投資レベルは「低い」と話した。「横に並べられると売り上げにつながらないと思われる怪しいコンテンツがたくさんある」と、この幹部はいう。
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Facebookは広告主に対して、彼らの広告を表示できるパブリッシャーやクリエイターの動画を制限する権限を与えてきた。広告主は、「議論の対象となる社会問題」「アダルト」「悲劇と対立」という3つのカテゴリーのコンテンツをブロックできるほか、一緒に広告を表示されたくない――Facebookページにひとまとめに出ている――特定のパブリッシャーやクリエイターのブロックリストを作成することもできる。
しかし、本記事の執筆に当たってインタビューした複数のエージェンシー幹部は、YouTubeのブランドセーフティ問題を受けての広告主の懸念や、Facebookのインストリーム動画広告がYouTubeのプレロール広告、ミッドロール広告に似ていることを考えると、コントロールはまだ不十分だと述べる。
PMGのソーシャルアカウントスーパーバイザーを務めるカーリー・カーソン氏は「インストリーム動画は、我々が望むほどコントロールが効かないもうひとつの部分だ」と話す。
ブロックされるパブリッシャーが多すぎる
匿名のエージェンシー幹部によると、インストリーム動画で広告主がブロックできるFacebookページは「1000を少し超える程度」に過ぎない。Facebookの広報担当者は、Facebookでは広告主が一度にブロックできる適格なページの割合を制限しているが、ブロックできるページの数は1000以上あると言っている(比較のために書いておくが、オーディエンスネットワークのキャンペーンでは、広告主は最高1万以上のサイトやアプリをブロックできる)。インストリーム動画広告を掲載するのに適正と判断されたFacebookページが3万8000以上あることを考えると、この数は少なすぎる、とこの幹部はいう。
Facebook上で自分の広告が誰の動画に付与されているかを監視しようとする広告主たちの取り組みをさらに複雑にしているものがある。パブリッシャーやクリエイターが短いクリップに動画収益化プログラムを追加することをFacebookが認めていることだ。Facebookが「Business Manager(ビジネスマネージャー)」ツールを通じて広告主に提供した2019年1月14日版パブリッシャーリストによると、動画収益化プログラムに参加しているページは3万8445ある。米DIGIDAYがリストをレビューしたところ、それらのページのうち8830は過去30日以内にリストに追加され、3944は2019年のはじまりとともに「20Of1」「Actionfullmoviesenglish」「BrownvillesFoodPantryForDeer」「xxSexi69xx」などのページ名で追加されていた。
Facebookは、広告主がキャンペーンを実施する前に、彼らの広告を掲載しそうな動画をページ内に持っているパブリッシャーやクリエイターのリストを提供すると同時に、キャンペーン実施後に実際に表示された場所を報告することで、広告主が監視する必要のあるパブリッシャーやクリエイターの数を減らそうとしている。キャンペーン前やキャンペーン後のプレースメント報告から、広告主はブロックリストをアップデートできる。しかし、これは手作業で行うプロセスであり、ブロックリストの管理が思うほど迅速かつ容易にできず、YouTubeで起こったような種類のブランドセーフティにまつわる炎上騒動を回避できないのではないかという不安がアドバイヤーたちに残る。
インストリームリザーブ
インストリームインベントリー(在庫)に関して広告主が抱いているブランドセーフティの懸念を解消するためにFacebookが最近取り入れた方法のひとつに、インストリームリザーブ(In-Stream Reserve)がある。インストリームリザーブは2018年9月に導入されたアドバイイングプログラムで、YouTubeの「Google Preferred(グーグル・プリファード)」と同様に、Facebookが良質でありブランドセーフだと考える、選び抜かれた数百のパブリッシャーやクリエイターの動画に対してのみ、広告主のインストリーム動画広告を出すというものだ。しかし、このプログラムがあったとしても、広告主はどのパブリッシャーやクリエイターが選ばれるかについてはFacebookの判断に任せざるを得ないので、インベントリーの質に関する懸念は残る。
カーソン氏は、「もっとホワイトリスト的アプローチで、小規模なクリエイターや優良ではないかもしれないコンテンツを確実に避けたいと思う」と話している。
Facebookのインストリームリザーブプログラムのインベントリーについて広告主が抱いている不安は、広告主がインベントリーにアクセスするのに要求される最低支出額をFacebookが引き下げたことを反映しているように思える。以前米DIGIDAYが報じたとおり、昨春、プログラムのテストがはじまったときには3カ月で最低75万ドル(約8200万円)だったものを、Facebookは9月の正式発表時までに25万ドル(約2700万円)に引き下げた。第4四半期にはそれを、広告主の投資希望額に合わせてさらに12万5000ドル(約1350万円)にまで引き下げたが、Facebookは、25万ドル分の価値があるインベントリーを彼らに提供するそうだ、と2人のエージェンシー幹部は説明する。
インストリーム動画広告に対するFacebookのブランドセーフティコントロールの現状に不満を感じてはいるものの、そうすることが自社ビジネスの利益につながるとしたら、Facebookがコントロールを強化して、望まないコンテンツにとともに広告が表示されるリスクを低減するだろうと、アドバイヤーたちは楽観視している。既存のツールと近く登場する予定のブロックリスト管理ツールは、Facebookのインストリーム動画広告に「より多くの予算を使わせる基礎になる」と、グループ・エム(GroupM)のマネージングパートナーでソーシャル担当グローバル責任者を務めるカイリー・テイラー氏は語った。
Tim Peterson(原文 / 訳:ガリレオ)