アドテック東京の初日が2015年12月1日、東京国際フォーラムで開催された。キーノート・スピーチでは広告世界最大手WPP、日本を代表する広告主の資生堂、米SSP大手パブマティックなど各界の主要プレイヤーがスピーチをとった。他業種からの広告業界の参入、デジタル化の深化など2016年のマーケティング業界のトレンドを占うセッションになった。
キーノート第3部では、パブマティックのアジア太平洋担当のバイスプレジデントであるジェーソン・バーンズ氏が、日本は世界3位の経済規模にもかかわらず、デジタル広告の市場規模インド程度以下でマレーシアが背後に迫っていると指摘。インベントリー(広告在庫)の質は、3.6倍程度の市場規模の米国と同様のレベルにあるため、日本の規模はもっと大きくてもいいと語った。
アドテック東京の初日が2015年12月1日、東京国際フォーラムで開催された。キーノート・スピーチでは広告世界最大手WPP、日本を代表する広告主の資生堂、米SSP大手パブマティックなど各界の主要プレイヤーがスピーチをとった。他業種からの広告業界の参入、デジタル化の深化など2016年のマーケティング業界のトレンドを占うセッションになった。
GoogleやFacebookは「友を装う敵」
同イベントは、広告世界最大手WPPの最高デジタル責任者(CDO)のスコット・スピリット氏のキーノートスピーチで幕を開けた。同氏は、無数のアドテク企業による棲み分けを示す『カオスマップ』が、いまやGoogleとFacebookの2強の競争に書き換えられたと指摘。同社が展開するメディアプラットフォーム「Xaxis」で対抗すると話す。1970年代から広告業界に入り、WPPを築き上げたマーティン・ソレルCEOが、2015年9月末に開かれた広告祭アドバタイジングウィークで「GoogleやFacebookを『友を装う敵』だ」とし、オラクル、セールスフォースなども競合と認めていた。
さらにスピリット氏はデロイト、アクセンチュアのようなコンサル企業も競争相手になっていると語った。コンサル企業はクリエイティブエージェンシーを買収することで、戦略立案、税務、ITコンサルティングなど、本来のサービスに、広告に関するコンサルティング、クリエイティブなどを組み合わせ、極めて包括的なサービスを提供することになる。
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戦略的マインドセットが重要
続いてトークセッションはWPP最大のデジタルエージェンシー、VMLの日本代表、荻野英希氏がモデレート。スピリット氏は「国外を見てほしい」とし、中国でeコマースが著しく発達している例に触れ、「Uber(ウーバー)の登場のように破壊的なデジタル化は避けて通れない」と語った。資生堂ジャパンの音部大輔マーケティング本部長は、「戦略的マインドセット(思考の枠組み)が重要。なにが重要かを見極め、どんな戦術を用いるべきか、理解していることだ」と語った。
キーノート第2部では、デジタルエージェンシー、エムアールエム・ワールドワイド(MRM//McCANN:広告世界4位のインターパブリックグループ)でCEOを務める、マイケル・マクラレン氏は顧客の時代には、スターバックスのように中毒性のあるカスタマーエクスペリエンスの構築が重要と主張した。「顧客の靴を履いて10マイル歩くように顧客を理解することが必要だ」とし、商品を認知し、購買し、使用し、評価し、再び購買するサイクルを生み出すことを訴えた。
過小評価される日本の広告市場
さらに、キーノート第3部では、パブマティックのアジア太平洋担当のバイスプレジデントであるジェーソン・バーンズ氏が、日本は世界3位の経済規模にもかかわらず、デジタル広告の市場規模インド程度以下でマレーシアが背後に迫っていると指摘。インベントリー(広告在庫)の質は、3.6倍程度の市場規模の米国と同様のレベルにあるため、日本の規模はもっと大きくてもいいと語った。
セラー側は、CPMあたりの収益性を向上させることで、パブリッシャーの収益力を高める必要性があり、バイヤー側では、アドブロック、ビューアビリティ(可視性)、アドフラウド(広告詐欺)が、懐疑心をあおっているという。バーンズ氏はこれらを取り除くことで、バイヤーの自信を盛り立てることを提言。
モバイルアドサーバーの利用などモバイル最適化を求め、パブリッシャーの間では、複数のアドエクスチェンジへ同時に広告枠を投じるヘッダー入札(ヘッダー・ビディング)が注目されていることにも触れた。
マーケティングの場もモバイルへ
セールスフォースのマーケティングダイレクターの加藤希尊氏が登壇したセッション『いま問われる、マーケティング・オートメーションの真の価値』では、ワイン通販を手掛けるエノテカの事例紹介があり、今後はアドテク分野と協働し、よりスケールのある展望も見られた。
『消費者の信頼を勝ち取るモバイルサイトの条件とは』では、ユーザーのモバイルシフト傾向に触れ、今後のマーケティングの場も急速にモバイルへと移行すると指摘した。Googleが提唱した購買の機運が高騰する瞬間を指す「マイクロモーメント」を最大限に活かすには、 モバイルとデスクトップが一貫した「OneWeb」を構築する必要があると訴えた。
日本の若者たちの姿とは
日米のミレニアル世代、ジェネレーションZ、いわゆる今後のマーケットの主要プレイヤーになる世代について日米比較されたのが、『ミレニアル/GenerationZの心を掴むには?』。日本の若年層への実地調査を踏まえて、①プライベート重視 ②インタラクティブ志向 ③無課金主義などの傾向をあぶりだした。インスタグラムのハッシュタグで会話したり、「広告」を好まなかったりする実態が明らかになった。
米国では親の世代もソーシャルメディアを利用するため、若者が親のいないところに逃げていく傾向があるという。それがプライベート空間を重視したSnapchat(スナップチャット)の成功につながり、人種、宗教、趣向が多様な国柄から「近くの違うタイプより、遠くの同じタイプ」とオンラインでつながる傾向もあるようだ。
2016年はモバイル、動画、データ活用、マーケティング・オートメーション、広告会社以外のプレイヤーの参入、グローバル化、経験重視の若年層などのトレンドが、デジタルマーケティング界隈により色濃く影響を出すとの印象を受けた。少子高齢化の日本のデジタル化の流れは現在、欧米や中印などのアジアと異なっており、今後どのように推移するのだろうか。
Written by 吉田拓史
Image from Thinkstock / Getty Images