アディダス、W杯キャンペーンで新メディア戦略をテスト

アディダス(Adidas)は、インプレッションではなく、オーディエンスの注目や彼らがもたらすエンゲージメントで広告の価値を評価するメディア戦略を構築しようとしている。

アディダスの中核をなす消費者の多くが広告をブロックしており、従来型のデジタルメディアバイイングから離れることは、オーディエンスにリーチするもっとも効果的な方法だと、アディダスの計画を知る4人の幹部は話す。これは、リーチのために代理人には頼らず、ロイヤルティが高いオーディエンスを持つパブリッシャーやインフルエンサーと直接仕事をするという意味になる。

アディダスのワールドカップ向けキャンペーンは、この戦略変更の一番明確な例だ。このキャンペーンのために、アディダスのもっとも影響力の強い56人のアンバサダーが、ニューヨーク、ロンドン、上海、東京、パリ、ロサンゼルスにいるファン向けのコンテンツを作成する。音楽プロデューサーのファレル・ウィリアムスやテニス選手のキャロライン・ウォズニアッキ、モデルのカーリー・クロスなどのアディダスアンバサダーが、サッカーとは関係なく、アディダスと一緒に開発したコンテンツを彼らの個人チャンネルで共有するのだ。ワールドカップキャンペーンの第2弾は、ファンからクラウドソースされたコンテンツに力を入れることになっているという。

メディア戦略の詳細

アディダスは、メディア戦略の詳細は明らかにしていない。だが、キャンペーンのソーシャルメディアでの展開は各プラットフォームによってカスタマイズされ、興味や好みに応じて視聴者によってパーソナライズ化されると、広報担当者のひとりは説明した。この広報担当者は、アディダスが重要視する各都市のファンは、文化的に特別なメッセージを伝えるそれぞれ違うバージョンの広告を見ることになるだろうとも述べる。リオネル・メッシやポール・ポグバなどアディダスが支援しているサッカー選手たちもこのキャンペーンに参加。だが、アディダスは、キャンペーンの影響がサッカー以外にも及ぶようにしたいと考えている。

アディダスの広報担当者は次のように語る。「我々は、アディダスにとっての重要都市にいるアスリートやミュージシャン、アーティスト、映画監督を招いて、コンテンツを共同制作し、ブランドの物語を形作りたいと考えている。アディダスと彼らが一緒に作り出す、それらのイメージや瞬間・コンテンツは、(ブランドからの)史上初の、オープンソースキャンペーンであり、世界最大のスポーツイベントの鼓動をリアルタイムで感じるものとなる」。

ほかの多くの広告主と同様に、アディダスは何年ものあいだ、インプレッションをベースにしたメディアを計画し、ターゲティングにはクッキーのデータを使っていた。4人の幹部によると、アディダスはエージェンシーに対して、このアプローチでは永続的で価値の高い注目を集められないと言ってきたそうで、簡単に得られる短期的な無価値なメトリックスを追うのは止めたいとも伝えている。アディダスのシニアマーケターは、ビューアビリティ(可視性)やコンテンツターゲティングをいかにして品質の保証に使えるかを、エージェンシーに長々と説明してきた。

グループに価値を追加

アディダスと仕事をしているエージェンシーの幹部は、戦略のシフトを次のように要約する。「アディダスのようなブランドは、分散したパブリッシングモデルでのキャンペーンにますます目を向けるようになっているので、プラットフォームで強力なフォロワーを持っていれば、バートナーやインフルエンサーとして一緒に仕事をする価値も上がる」。

しかし、メディアバイイングエージェンシーAIPの最高経営責任者(CEO)、サム・フェントン・エルストン氏(前述の4人の幹部のひとりではない)は、パーソナライズ化されたコンテンツは「不安材料」になり得ると警告する。

「瞬間的なサプライズが過ぎてしまえば、その価値は無視される。文化的注目を確立することは、人を、コミュニティーを、文化を理解し、そうしたグループに価値を追加することを意味する。それを行うにはデータ以上のものが必要だ」と、フェントン・エルストン氏はいう。「ブランドは、自身のアイデンティティーに忠実である必要があり、彼らが属するコミュニティーや彼らがターゲットにしているオーディエンスの言葉やトーンで話す必要がある」。

Seb Joseph(原文 / 訳:ガリレオ)