「AbemaTVのビジネスモデルは、世界的にも珍しい」:CA・AbemaTV 代表取締役社長 藤田 晋氏

壇上で話すサイバーエージェント 代表取締役社長、藤田晋氏の表情は、AbemaTV(アベマティーヴィー)の著しい成長を受けてか、終始朗らかに見えた。

同氏は5月24日、サイバーエージェントとテレビ朝日の合弁企業、株式会社AbemaTVが代理店向けに開催した、事業戦略と広告商品に関する発表会「AbemaTV Ads CONFERENCE 2019」に登壇。ローンチ時に掲げていた目標「WAU(ウィークリー・アクティブ・ユーザー)1000万」の達成も見えてきたAbemaTVの現状と、今後の展望を語った。

最近は、AbemaTVで新たにスタートした競輪チャンネルにハマっているという藤田氏。「自宅でお酒を飲みながら観ているのがたまらない」と話し、会場の笑いを誘った。本記事では、そのときの内容を全文書きおこし形式でお伝えする。なお、一部読みやすさを重視して、編集を加えている。

ローンチ時の目標は射程内

本日はAbemaTVの現状と、今後の方針をお話しします。昨今、テレビが観られる機会は減り、スマホが可処分時間の多くを占めるようになりました。そこで、UXやUIを工夫し「インターネット上に最適化されたテレビ局を作ろう」という考えで、テレビ朝日さんと合弁ではじめたのがAbemaTVです。今年で開局から3年目を迎えることになりました。

おかげさまで、令和に入る直前の4月30日には、アプリのダウンロード数が4000万に到達しました。開局したばかりのころは、プロモーションを強化してDL数を伸ばしていたこともありましたが、最近はオーガニックで成長してきています。

ちなみに、はじめての決算説明会でお話した1000万WAUという目標ですが、現在は900万台まで伸びており、ほぼ達成が見えています。そもそも、なぜ1000万なのか。これは、広告モデルのメディアビジネスは、とにかくたくさんの人が見る、大規模なものでなければ成立しないからです。なので、この数字を最低限の目標として掲げてきました。

次に、競合と比較したときの現況をお伝えします。これはApp Ape(フラー株式会社が提供する、アプリ分析ツール)のデータです。AbemaTVはいま、CGM(Consumer Generated Media:消費者生成メディア)であるYouTubeを除外した場合、国内最大級のMAUを抱えています。もっというと、NetflixやAmazonプライムは我々のような広告モデルではないので、そのふたつを除外すると、おそらくダントツの規模ではないでしょうか。また、ユーザーの半数以上が18-34歳で構成されており、若年ユーザーへのリーチに強いという、ほかの動画メディアにはない強みを持っています。

オンデマンド視聴が成長

AbemaTVはそもそも、リニア視聴でスタートしたのですが、ここのところオンデマンド視聴ユーザーが増えています。現在、有料会員は40万人を突破しており、それに合わせて広告商品の開発も行なっています。無料会員であっても、番組によっては、放送後一定期間は無料でオンデマンド視聴が可能なのですが、それを過ぎると月額960円の「Abemaプレミアム」に入会しなければ、視聴できなくなる。このような仕組みになっています。

「Abemaプレミアム」の成長要因は、まずUI・UXといったAbemaTVの機能面に、多くの投資をしていることが挙げられます。「追っかけ機能」や、WiFiがない場合の視聴に対応した「DL機能」はその良い例で、これらの機能は有料会員限定で提供されています。

加えて、オリジナル作品の強化です。動画メディアで有料課金を増やすためには、どれだけオリジナル作品を持っているかが、非常に重要になります。我々の場合は、いままで5000エピソード以上に及ぶ、オリジナルコンテンツを制作してきました。これは大きな強みだと捉えています。

世界でも希有なビジネスモデル

我々のビジネスモデルは、世界的にも珍しいと考えています。AbemaTVは、テレビをインターネットに置き換えたものを目指しており、いま競争の真っ只中にいる、AmazonプライムやNetflix、Huluとは異なるポジションにいます。現在の収益源は、広告と有料会員モデルが中心ですが、放送外収入として、ショッピングや公営ギャンブルの配信・券売など、多角的にビジネスモデルを成立させていこうと考えています。

たとえば最近は、競輪チャンネルをはじめました。これ、個人的にすごくハマっていて、自宅でお酒を飲みながら観ているのがたまらないんです。これは、我々のグループ会社でWinTicket(ウィンチケット)という、競輪のチケット販売をやっている企業があるのですが、そこと協力した取り組みになります。こういった、地上波のテレビでできなかったことにも、どんどん挑戦していきたいと思っています。

また、直近では番組や出演者のサポーターになれる「応援機能(ギフティング機能)」を搭載しました。いまは試運転の段階で、今後どのような形だと適正に課金していただけるかを検証しています。今後は、このギフティング機能を使った番組の企画なども進めていくつもりです。

加えてつい先日、番組によってはまだ許諾が取れていないものもありますが、海外視聴も可能になりました。第一段階として、まずは日本語で放送し、海外旅行中、もしくは海外に在住している日本人の方々でもAbemaTVを楽しめるようにしています。次の段階では字幕を入れ、さらに次の段階では、その国毎のコンテンツを作る予定です。

   

という

AbemaTVのビジネスモデルについて、笑いを交えながら話す藤田氏

電通、博報堂との資本提携

2018年の10月には、電通さん、博報堂さんと資本業務提携を行いました。現在、両社から弊社に出向してきている方もいて、一緒にAbemaTVを盛り上げようとしているところです。

これまで動画サービスは、さまざまな企業がチャレンジして、多額の資金を投資してきましたが、なかなか形にならずに撤退するということが相次いでいました。なので、電通さん、博報堂さんとの資本業務提携も、私としてはAbemaTVがある程度成長し、無視できない段階になってからの方が、協力してもらえるだろうと考え、いままでタイミングを伺っていました。

やはり、広告ビジネスをメインで展開する以上、大手広告代理店さんの力を借りずにビジネスを成長させるのは不可能だとわかっていたので、今回満を辞してご協力をお願いしました。

執念深くやり続ける

最後に強調しておきたいことがあります。それは、サイバーエージェントはインターネット会社ですから、AbemaTVのハイクオリティなコンテンツを作れるのは、テレビ朝日さんの力が大きいということ。我々がマーケティングやプロダクト作りを担い、テレビ朝日さんにはコンテンツ作りを担ってもらっていると。この協力体制は、今後もさらに強化していきたいと考えています。加えて、今後の考え方で重要だと思っているのは、やはり規模感です。どんなにニッチであっても、ある程度規模がなければ広告商品は売り辛い。

あとはやはり、ブランドセーフティです。これは引き続き強化していきたい。現状、インターネット広告に関していうと、ブランド広告主がわざわざお金を使って出稿したいと思える枠は、非常に少ないと考えています。CGMといわれるメディアが、大型の広告商品を扱っていますが、コンテンツがコントロールできない状態で広告を出すのは、ブランド毀損のリスクが伴います。だから我々は、広告主が少しでも安心して出稿できる広告商品を作りたいと考えています。

報道されるたび、AbemaTVは赤字だと、ずっといわれ続けているのは事実です。ですが、わたしは何がなんでも執念深くやろうと腹をくくっています。実際、売上も順調に伸びていまして、今年はまた昨年の倍ぐらいには成長できるのではないかと見込んでいます。

Written by Kan Murakami
Photo by AbemaTV