肉を含まない植物性食品を販売するライクミートは、スーパーボウルの開催時期にあわせて、TikTok初とされるスカベンジャーハント(がらくた集め:欧米ではポピュラーなレクリエーション)によるプロモーションおよびゲームを実施した。
試合中やその前後など、スーパーボウルの開催時期になると、アメリカ人が約14億本にも上る数のチキンウイングを食べているのをご存知だろうか? そして、この統計結果――食欲をそそられる人もいるだろうし、消費量に恐怖心を抱く人もいるだろう――に目を着けたライクミート(LikeMeat)という肉を含まない植物性食品を販売する小さな会社が、スーパーボウルの開催時期に合わせて、「ライクチキンウィングス(Like Chick’n Wings)」という、植物由来の鶏肉を模した新しいチキンウイング風商品の発売を発表した。
そして販売戦略としてライクミートは、72アンドサニー(72andSunny)が企画したSNSを使ったキャンペーンの一環として、TikTok初とされるスカベンジャーハント(欧米ではポピュラーなレクリエーション、オリエンテーリングみたいなもの)によるプロモーションおよびゲームを実施した。このキャンペーンの一連の動画には、そうそうたるセレブやクリエイターが起用され、そのなかのひとり、アメリカンフットボール選手のロブ・グロンコウスキー(通称:グロンク)が出演した最初の動画が2022年1月26日にTikTokで配信された。スカベンジャーハントの勝者は、2022年2月13日にロサンゼルスで開催される第56回スーパーボウルのチケットが当たる懸賞にエントリーできる。ホライゾンメディアのソーシャルエージェンシー、ブルーアワースタジオ(Blue Hour Studios)が一連の動画を制作した。
ウィングイット2ウィンイット
NBCで放送されるこの一大イベントに対しては、その文化的・社会的熱狂ぶりから、例年、広告主は30秒あたり650万ドル(約7億1500万円)もの宣伝(CM)費用を惜しむことなく投じている。しかし今年は、その費用がNBCに投じられない希なケースの年となった。
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このオーガニックな取組みは次のように行われる。2番目の動画のロックを解除するには、最初のグロンクのTikTok動画に埋め込まれている暗号コードを解読する必要がある。そして3番目の動画を見るためには2番目の動画で暗号コードを解読しなければならない……という具合に進んでいく。なお2番目以降の動画には、有名なTikTokのパーソナリティが含まれている(本稿では、ゲームの面白味をそがないために、パーソナリティが誰かは明らかにしないことにしておく)。最後の動画に到達できた人は、スーパーボウルのチケットが当たる懸賞にエントリーできる。
「TikTokプラットフォームを使ってのチャレンジは、ある種定番のことだが、今回のようなスカベンジャーハントを開催した人はこれまで誰もいない」と、ブルーアワーのクリエイティブディレクターであるアレグザンドリア・グラッソ氏は述べる(TikTokは、アップロードされるコンテンツの数が膨大であることから、これが初のスカベンジャーハントであるとは確認できなかった)。「私たちは意図的に、異なる背景、視点、スタイルを持つさまざまなパーソナリティを選んだ」。
このオーガニックな取組み「ウィングイット2ウィンイット(WingIt2WinIt)」ゲームが期待通りの相乗効果を達成したかどうかを測るのは時期尚早だが、これは、2022年を通してインスタグラム、Pinterest、インスタカート(Instacart)、Googleなどのプラットフォーム上で展開される、植物由来の代替肉食品ブランドのよるSNS有料キャンペーンの「前菜」に過ぎない。ライクミートはまた、サムズクラブ(Sam’s Club)、ウォルマート(Walmart)、ターゲット(Target)などの店舗でショッパーマーケティングによるプロモーションの実施も予定している。
「懸賞が終わったあとでも、これらの動画はビーガンだけでなくノンビーガンの人々のあいだでも意識や考え方を共有するツールとして存続するだろう」と、ブルーアワーのコンテンツ&クリエイティブ部門のバイスプレジデント、テイラー・ミシェル・ジェラール氏は話す。
「TikTokは最適な環境だった」
ライクミートの親会社であるリブカインドリーコレクティブ(LiveKindly Collective)のマーケティング責任者エミリー・クルースター氏は、チキンウイングが大量消費されるスーパーボウルの時期と、鶏にとって2番目に恐ろしい時期であるマーチマッドネス(毎年3月のNCAA男子バスケットボール1部リーグトーナメント大会の通称)に至るまでの期間は、ローンチの完璧なタイミングだと説明する。クルースター氏によれば、TikTokの利用は主にふたつの側面で理にかなっているという。「ひとつ目は、最近、アメリカでは、TikTokを見てレシピのアイデアを得る人が増えていること。ふたつ目は、TikTokのユニークな特徴――コンテンツを見た人が自身の課題に気づいたり、新しいアイデアを考え出したりできる――から、人々に私たちについて知ってもらうのにTikTokは最適な環境だったことだ」と、同氏は語る。
興味深いことに、ライクミートはテレビ広告(通常は消費者向けパッケージ商品の発売時の定番)を、コスト面および食事に対する消費者の趣向や方向性の変化から、当面の間は控えると、クルースター氏は述べている。「最近、そうした消費者の食事に対する変化について、ネット上で数多く語られている」と同氏は付け加えるが、その一方で、「人々は夕食のメニューについて、かなり前もって計画する。だからキャンペーンのタイミングは、新商品発売の数週間前には開始する必要がある」ことを強調している。
MICHAEL BÜRGI(翻訳:SI Japan、編集:長田真)
Illustration by IVY LIU