元祖「アグリーシューズ」ブランドことクロックスが6月初旬、DJのディプロ氏とのコラボレーションを発売し、瞬く間に完売した。いまやクロックスは、セレブ、モードメディアとコラボレーションしてきたが、今回、ビューティブランド、ベネフィット(Benefit)とキャンペーンを開始した。
この16か月間は驚くことの連続だった。あのクロックス(Crocs)が許容されるどころか、クールとみなされるようになっているというのもそのひとつだ。
元祖「アグリーシューズ」ブランドことクロックスが6月初旬、DJのディプロ氏とのコラボレーションを発売し、瞬く間に完売した。ベルリン発のメンズオンラインメディア『ハイスノバイエティ(Highsnobiety)』はこのコラボに関する記事に「Diplo’s Crocs propelled me into an existential crisis(ディプロのクロックスが私を実存的危機に追い込む)」という見出しをつけている。このクロックスがひときわ目を引いたのは、ブランドのトレードマークであるジビッツ™(シューズを好きなスタイルにカスタマイズするためのアクセサリー)で美しく飾り立てられていたことだ。ディプロ氏のバージョンは暗闇で光るサイケデリックなキノコだった。クロックスは以前行ったジャスティン・ビーバー氏やラッパーのポスト・マローン氏とのコラボレーションも完売しており、またラッパーのバッド・バニー氏とのコラボレーションは16分で売り切っている。
短期間に注目を集めたパートナーシップが続いたことで、クロックスは話題性を高めることに成功している。「コラボレーションによって新たな対話を始めることができた」とクロックスのシニアバイスプレジデントでCMOのハイディ・クーリー氏は言う。「おかげでブランドを取り巻くテンションと二極化を最大限にいかすことができた。それぞれのコラボレーションは独創的で意表をつくものですらあった」。
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美容ブランドとの話題を呼ぶコラボ
そして今回、美容ブランドとして最初にクロックスとコラボレーションするブランドとなるのが、ベネフィット(Benefit)だ。ベネフィットは昨年インスタグラムで実施したクロックスとの共同プレゼントキャンペーンで成功を収めている。そのキャンペーンは期待を上回るもので、インスタグラムのフォロワー数がベネフィットは1万4000人、クロックスは1万人増加した。「自分らしく(Come as you are)をモットーとし、誰もが自分の靴で快適に過ごすべきだというクロックスとコラボレーションすることが、我々のコアバリューやブランドと一致するとそのときに気づいた。オーディエンスも同じように感じていた」とベネフィット・コスメティクスの米国マーケティング担当バイスプレジデントのジェン・ホイップル氏は述べている。
「どちらもリスクや騒動を恐れないブランドだ。ビューティブランドとしてクロックスとパートナーシップを結ぶ初のブランドになる必要があると判断した」とホイップル氏は言う。その結果、誕生したシューズは、カラーがベネフィットのブランディングに合ったホットピンクで、ブロウジェルのギミーブロウやハンドミラーといったベネフィットを象徴するプロダクトをジビッツ™で表現したデザインとなった。このコラボレーションには、クロックス・クラシッククロッグ(69.99ドル、約7700円)とクラシック サンダル(49.99ドル、約5500円)の2種類のスタイルがある。
このローンチと並行して、クロックスとベネフィットはTikTokとインスタグラムのリールで「#benefitofcrocschallenge」というハッシュタグを使ったソーシャルチャレンジを主催した。
「我々はユーモアと楽しさを届けている。クロックスとベネフィットは、このチャレンジに参加するすべてのカスタマーにいつもどおりのメイクをしてもらうよう呼びかけているが、ひとつ仕掛けがあって、クロックスを手に履いた状態でメイクをしなくてはならない」とホイップル氏は説明した。このチャレンジを開始するにあたり、ブランドはMariale(インスタグラムのフォロワー数600万人)やMannyMUA(インスタグラムのフォロワー数400万人)といったインフルエンサーと提携した。参加者はコラボのシューズやベネフィットの製品などのプレスパッケージが当たるキャンペーンに応募できる。
大きく変化したクロックスのイメージ
だが、このクロックスブームが2020年に始まったと考えるのはアンフェアだろう。クロックス信奉者は、発泡樹脂のクロッグの履き心地のよさを以前からずっと絶賛してきた。それにファッションショーのランウェイにも登場している。2016年にはクリストファー・ケイン(Christopher Kane)がクロックスとのコラボレーションを発表、2018年にはバレンシアガ(Balenciaga)がプラットフォームエディションを製作して多くの批判を受けている。しかしバレンシアガは懲りずに2022年春のランウェイでウェリーブーツ形のクロックスプラットフォームを再び発表した。4月にはミュージシャンのクエストラブ氏がゴールドのクロックスを履いてアカデミー賞に出席。2019年には歌手のアリアナ・グランデ氏もクロックスを履いている。
そして現在、2022年春のメンズウェアコレクションで、ミラノとパリのファッションウィークのストリートスナップにクロックスが登場している。6月30日、Vogue.comのライターであるエミリー・ファラ氏は「ヒールを履いてる人がほとんどいないのに気づくだろう。そのかわり見かけるのはビルケンシュトックに、なんとクロックスだ」と書いている。しかしこの時点では、その「なんと」という言葉には皮肉が込められていた。最近のストリートスナップでは、クラシックなホワイトスタイルがもっとも多く見られている。7月3日のUK版『ヴォーグ(Vogue)』は「この夏、クロックスガールになる準備はできてる? 」と書いた。
ファンを取り込むインフルエンサー戦略
クロックスはインフルエンサー戦略に長けていて、クロックスを愛してやまないコンテンツクリエイターを起用している。たとえばシンガーソングライターのブレットマン・ロック氏(YouTubeのフォロワー数870万人)は、10か月前にクロックスのPRリストに掲載され喜びの声を投稿した。彼は現在では公式ブランドアンバサダーとして、有償でブランドに協力している。
ボディアクセプタンスの提唱者でインフルエンサーのケイティ・ストゥリーノ氏もアンバサダーだ。2020年4月頃、彼女はパンデミックの初期に人気となったイチゴの模様の白いクロックスをよく履いていた。そして2021年1月にアンバサダーに就任している。
「特にソーシャルメディア上でファンと真に双方向の対話をもつことで、常にトップオブマインドでいられるよう意識している。ファンに向かって一方的に語りかけるのではなく、ファンとともに会話をすることで、ファンが私たちを必要としているときにいつでもそこにいられるようにしているし、ファンがクロックスに何を求めているのかをより理解し続けることができる」と、クーリー氏は語る。
クロックスは大きな成長を遂げている。第1四半期の売上高は、前年同期比64%増の4億6000万ドル(約506億円)に達した。インフルエンサーマーケティング会社のトライブ・ダイナミクス(Tribe Dynamics)によると、クロックスは2020年3月から2021年5月までにEMVで4600万ドル(約50.1億円)を回収している。これは前年同期比で37%の増加である。クロックスの2020年3月から2021年3月までのEMVのキードライバーとなったトップ5は、ジャスティン・ビーバー氏、ブレットマン・ロック氏、プリヤンカー・チョープラー氏、オンラインマガジン『ハイプビースト(Hypebeast)』、そしてポスト・マローン氏だった。
ベネフィットとクロックスのコラボレーションは、7月13日正午(米国東部時間)にクロックスのウェブサイトで購入することができる。
今回のこの予想外のコラボレーションについて、ホイップル氏は「非常に早く完売するだろうと予想している。いずれにしてもそんなに長くかかるとは思っていない」と語った。
[原文:A new collaboration with Benefit further cements Crocs’ cult status]
SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:Maya Kishida、編集:山岸祐加子)