ブランド各社は、2022FIFAワールドカップ期間に消費者を掴もうとしているが、コカ・コーラ(Coca-Cola)もそんなブランドのひとつだ。米DIGIDAYは、同社の中南米マーケティング担当シニアバイスプレジデントのハビエル・メサ氏からW杯マーケティングについて聞いた。
カタールで開催されている2022FIFAワールドカップ。サッカー界におけるこのプレミアムイベントは、ブランド各社が自社のメッセージを広く知らしめられる、またとないチャンスだ。世界トップクラスの影響力を誇るブランドの多くは、その期間中に消費者の心をつかもうと、フィールドの外でしのぎを削っている。
そのなかの1社がコカ・コーラ(Coca-Cola)だ。米DIGIDAYは、同社の中南米マーケティング担当シニアバイスプレジデントであるハビエル・メサ氏から話を聞いた。コカ・コーラはそのW杯マーケティングを通して、多文化市場でいったい何を達成しようとしているのだろうか?
なお、読みやすさを考慮し、以下のインタビューには編集を加えている。
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──サッカーとワールドカップの多文化オーディエンスを魅了するために、コカ・コーラが今回取ったマーケティング戦略とは?
世界が熱狂するこのイベントは、コカ・コーラのマーケティングに非常に大きな意味を持っている。今回のキャンペーンは、グローバルブランドとしての哲学と「Real Magic」プラットフォームを土台として、ワールドカップの共有体験をさらに高め、リフレッシュすることが目的だ。このキャンペーンを通じて、サッカーファンに「Real Magic of Believing」を体験してもらい、いつまでも忘れることのない、シンプルなつながりを生みだそうとしている。我々は、大会期間中もその前後も「Real Magic of Believing」を存分に楽しんでもらうために、最高のアクティベーションや動画、サプライズも用意している。
──ソーシャルメディアにおける「Believing is Magic」キャンペーンのアプローチと、その実施については?
「Magic of Believing」には、2022FIFAワールドカップのためのデジタルハブ「コカ・コーラ・ファン・ゾーン」を利用した、特別なチャプターが用意されている。デジタル消費者体験を高めるためのアクティベーションで、その目的は、母国のチームをサポートするファンの感情や興奮、試合の思い出といったものを共有する機会を提供することだ。「コカ・コーラ・ファン・ゾーン」には、ファンが自身のソーシャルメディアアカウントを使って共有するソーシャルインテグレーションも含まれる。ユーザーは、コンテンツをサードパーティプラットフォームにエクスポートして共有することで、2022FIFAワールドカップの体験をさらに高めることができる。
そのなかのひとつが「ザ・プロミス」で、母国のチームをサポートするために立てた自らの誓いを、コカ・コーラのパッケージにカスタマイズするというもの。それをソーシャルメディアで共有したり、友だちと直接共有したりといったことができる。さらには「コカ・コーラ・ファン・ゾーン」内のソーシャルウォールに招待され、世界中のサッカーファンの「誓い」を見ることもできる。
「Magic of Believin」の源泉には、おなじみパニーニのフィギュアもある。中南米のファンは今年、8種類の限定デジタルフィギュアを手に入れることができるだろう。一方で、 コカ・コーラがファンに提供するパニーニのデジタル体験では、8人の限定サッカー選手を通じて、ファンがソーシャルネットワークで自身の感動的な話を共有することを促している。
──「Real Magic」プラットフォームとは? 大会期間中とその前後、コカ・コーラはファン同士のつながりをどのように維持していくのか?
思いがけず人とつながる瞬間が、日常を非日常に変える。そんな瞬間のなかにこそ、マジックはある。「Real Magic」プラットフォームは、そうした考えの上に成り立っている。人が集まれば、魔法は現実のものになるわけだ。重要なのは、私たちを分かつものではなく私たちが共有するもので、これこそが、FIFAワールドカップで起こることであり、ほかにはない、人と人のつながりだ。従来のキャンペーンであれば、もっぱら大会期間中の5週間にフォーカスするが、コカ・コーラは、ファンにサッカーの試合が持つマジックを大会期間中だけでなく、その数カ月前から、そして大会後も信じてもらいたいと思っている。だからこそ、このキャンペーンを実施したのだ。
この世界最大のサッカーイベントを祝福する「Magic of Believing」体験の口火を切ったのは、「FIFAワールドカップ・トロフィー・ツアー・バイ・コカ・コーラ」で、サッカーの偉大な伝統が根付いているメキシコで10月15日に公式にスタートした。
コカ・コーラが制作したFIFAワールドカップ用のオーディオビジュアル作品6本は、スタティック型の公共広告90本以上とともに、大会期間中に発表されることになっている。また、ファンはデジタルハブ「コカ・コーラ・ファン・ゾーン」に参加して、さまざまなゲームを楽しめる。そしてもちろん、コカ・コーラと30年来のパートナーシップを組むパニーニも、今大会に新章を加えてくれている。これまでのフィギュアに加えて、中南米のファンに向けてコカ・コーラ限定フィギュアが8種類、実物のものとデジタル版で登場する。さらには、ファンに「Magic of Believing」を感じてもらうために、一部の市場ではほかとは異なる限定版のパッケージも登場することになっている。
──中南米はサッカーが根付いている地域だ。アルゼンチンやブラジルは常に優勝候補の筆頭に挙げられている。ワールドカップ期間中のコカ・コーラの商業戦略は、これらの市場を中心に練られたのか?
アルゼンチンやブラジルに、サッカー文化が根付いているのは確かだ。11月30日時点では、両国ともに「FIFAワールドカップ・トロフィー・ツアー・バイ・コカ・コーラ」という特別なアクティベーションが丸3日残っている。これに加えて、限定版や特別なプロモーションも登場する。我々がブラジルとアルゼンチンで行う個々の活動を特別なものにしているのは、間違いなく現地のファンの熱気だ。「Magic of Believing」が独自のリズムでビートを刻んでいる。
「FIFAワールドカップ・トロフィー・ツアー・バイ・コカ・コーラ」も今回で5回目を迎えたが、これは大きな偉業だ。世界中のサッカーファンが、オリジナルのトロフィーを実際に手に取って称え、ツアー関連のさまざまな活動に参加できるのだから。今回のツアーは、大会に参加する32カ国すべてをはじめて回ることができた。これもまた、今回のツアーに特別な価値を添えてくれた。
──コカ・コーラは、ファンの興奮に命を吹き込む「ストリート(Street)」という動画を公開した。その戦略とは? どのようにして消費者の心をつかもうとしているのか?
この動画を見ると鳥肌が立つ。最初のシーンでは、サッカーファンがコカ・コーラを飲みながら通りを歩いている。すると、通りは母国のチームがワールドカップで優勝したことを祝うシーンへと変わる。選手の名前を叫ぶ声、音楽、紙吹雪、バルコニーから身を乗り出す人々、分かち合われる興奮……そこにあるすべてのマジックが、チームの優勝を物語っている。そして、コカ・コーラを飲み干すと、そのファンはこれが現実の出来事ではなかったことに気付く。これから試合が始まることに気付き、不可能なことなどないと悟る。コカ・コーラはこの動画を通して、「Magic of Believing」の本質を伝えることができたと思う。
──コカ・コーラは「ストリート」のほかにも、ワールドカップ関連の動画を公開している。これら3本については?
ファンが母国のチームと交わす誓い、母国のチームに抱く情熱。それをめぐる体験をさらに高めてもらうためにコカ・コーラが制作した動画は、「ストリート」のほかにも3本ある。「タトゥー(Tattoo)」「シェーブ(Shave)」「ラン(Run)」だ。これらの動画のなかで、ファンたちはそれぞれ、もし母国が優勝したらタトゥーを入れる、髪を剃る、毎日走って出勤すると誓う。これらの動画の狙いは同様で、母国のチームをサポートするために立てた自らの誓いを、世界中のファンに共有してもらうことにもある。
[原文:A look at Coke’s World Cup marketing strategy with senior marketing exec Javier Meza]
Denny Alfonso(翻訳:ガリレオ、編集:島田涼平)