「 ブラックフライデー に向けた リトマス試験紙 」:「独身の日」に続々参入しはじめた 米ブランド勢

2019年11月11日、いわゆる「独身の日」の朝、中国eコマース界の巨人アリババ(阿里巴巴)は、開始からわずか1分間で10億ドル(約1090億円)の売上を記録したと発表した。その数は、それから1時間弱で120億ドル(約1兆3000億円)にまで膨れ上がり、最終的には過去最高の384億ドル(約4.1兆円)に達した。

「本日、我々はブランドと消費者双方における消費の未来図を世界中に示した」と、アリババグループのTモール(天猫)およびタオバオ(淘宝網)の社長、ファン・ジャン氏は、eメールで断言した。

「独身の日」はもともと、中国の大学生らが90年代、バレンダインデーに対抗し、独身者を祝う日としてはじめたものだが、それがいまや世界最大の買い物デーにまで発展した。2013年の「独身の日」におけるアリババの売上は58億ドル(約6311億円)だったが、それ以降、年を追うごとに大きな成長を見せている。言うまでもなく、「独身の日」は中国における非公式な祝日だが、今年は米ブランドおよびリテーラーの参加数がさらに増加した。ただ、「独身の日」における米ブランドの成功規模は着実に拡大しているものの、小売売上高に関して言えば、米国のブラックフライデーのそれにいまだ水をあけられている。とはいえ、この「祝日」は米国市民にはさほど知られていないため、多くの米ブランドはこれをブラックフライデーやサイバーマンデーといった自国の買い物デーに備えるための試験場として利用している。

「いわばリトマス試験紙」

米ユニクロは今年、「独身の日」の11月11日にちなみ、いくつかの商品を米消費者に11.11ドル(約1200円)または111.10ドル(1万2000円)で提供した。いまだ四面楚歌状態の米ファションブランド、J.クルーは11/11に絡めたフラッシュセールを実施。高級デパートのニーマン・マーカスは「独身の日」関連の広告キャンペーンをインスタグラム(Instagram)上で展開した。アドビ(Adobe)による米リテーラー400社を対象とした調査によると、米ファッションブランドの1/4以上が「独身の日」関連のコンテンツ、またはプロモーションを発売または展開した。

「中国人顧客を狙う者にとって、『独身の日』は巨大な1日だ」と、非中国ブランドの中国人消費者獲得を支援する企業、ボーダーXラボ(BorderX Lab)の戦略的パートナーシープ部門トップを務めるナンシー・チャン氏は断言する。「我々の顧客である米ブランドのいくつかは、今年(2019年)の『独身の日』の売上が昨年のブラックフライデーのそれを上回った。しかも、米ブランド勢は『独身の日』を米顧客獲得のためにも大いに利用できる。ブラックフライデーを間近に控えるなかで開かれる『独身の日』セールは、そのためのいわばリトマス試験紙になるからだ。目玉商品を試せるし、一定量の在庫を確保するための発注数の目安もつけられる」。

米ブランド勢は「独身の日」のプロモーションに「11/11」の表記を使用できるという利点も大いに活用している。2014年、アリババは巧みに立ち回り、「11/11」と「Double(ダブル)11」の販促における独占的使用権を、中国限定であるが、認められており、この優位性がそのまま同グループの「独身の日」における支配的地位につながっている。ライバルJD.comの2019年の売上はわずか250億ドル(約2.7兆円)であり、アリババに100億ドル(約1兆円)以上の差をつけられた。

米ブランド勢は日本に次いで2位

米ブランド勢はすでに、中国人消費者を獲得する手段として「独身の日」を利用している。アリババの発表によれば、2019年「独身の日」の中国での収益高において、米ブランド勢は日本に次いで2位につけ、3位の韓国をわずかに上回った。

ナイキ(Nike)、ギャップ(Gap)、リーヴァイス(Levis)、ザ・ノース・フェイス(The North Face)、アンダーアーマー(Underarmor)を含む15の米ブランドが2019年の「独身の日」1日で、中国市場で10億ドル(約1090億円)超の売上を記録した。

このように米ブランド勢が中国で巨大な成功を収めつづける一方、中国ブランド勢も米オーディエンス獲得に乗りだしており、両市場の境界線はますます曖昧になりつつある。

「11月11日の『独身の日』が米市場でも利用できるのは間違いないが、ブランドがメッセージを発する際には注意も必要だ」と、チャン氏は指摘する。「『独身の日』は罪悪感を煽ることで、独身女性を購買行動へと駆り立てているとして、中国メディアから少々批判もされている。ただし米国の場合、11/11には『復員軍人の日』や『願い事が叶う時間(午前11時11分)』など、ほかの意味もあるため、中国ほど神経質になる必要はないと思われるが」。

DANNY PARISI(原文 / 訳:SI Japan)