米DIGIDAYの姉妹サイトのモダンリテール(Modern Retail)が毎週お送りするポッドキャストの最新回では、編集チームが2021年の小売業界の動向や将来展望を分析・予測。IPOが予定・想定されている企業の上場のタイミングや、EC企業をターゲットにした法案まで、さまざまな話題をカバーしている。
2020年は、「いつもとは違う1年だった」では済まされないような年となった。世界的なパンデミックであらゆる物事が根本から変わってしまった。小売業界もまた、例外ではない。
米DIGIDAYの姉妹サイトのモダンリテール(Modern Retail)が毎週お送りするポッドキャストの最新回では、編集チームが2021年の小売業界の動向や将来展望を分析・予測。IPOが予定・想定されている企業の上場のタイミングや、EC企業をターゲットにした法案まで、さまざまな話題をカバーしている。そしてどのテーマにも共通していたのが、2019年とは大きく様変わりしたということだ。
以下に、番組のハイライトの一部をお伝えしよう。
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なお、発言の意図を明確にするため一部に若干の編集を加えている。
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昨年はD2Cには強い追い風が吹いた。これは長続きするのだろうか?
スタートアップ担当編集者、アンナ・ヘンゼル氏:「2019年に書いた記事では、2020年にD2Cスタートアップ企業の多くが収益面で壁に直面するだろうと予測していた。自社ウェブサイトだけで生み出せる収益は限られているというのがその理由だ。しかし実際には、新型コロナウイルスによるパンデミック下で、これまでオンラインで買い物をしたことがなかった人も、店舗へ行けないためにオンラインで購入するようになった。また、それ以外の要因にも牽引され、全体的にオンラインでの購入が増加した。当初の予測を大きく上回り、2倍、3倍と収益が増えたD2Cスタートアップ複数社を取り上げ、その成長ぶりを取材し、記事にしたこともあった。2020年は、従来の予測をすべて裏切る形で、ECがかつてない速度で成長した年といえる。そのような状況下で、D2Cスタートアップ各社が注視しているのが、『2021年のEC業界の動向と将来展望』だ。消費者はこれからもオンラインで購入を続けるのだろうか? ウェブサイトに長期的かつ集中的に取り組むべきなのだろうか? といった問題をどう処理するか思案している」。
ECプラットフォーマーをめぐる法的責任の行方
小売担当レポーター、マイケル・ウォーターズ氏:「カリフォルニア州で、ある法案が今年審議された。結局通らなかったのだが、来年も検討される可能性がある。この法案は要するに、これまでECプラットフォーマーはさまざまな責任から保護されてきたが、今後、この保護が取り崩される可能性があるというものだ。Amazonだけでなく、イーベイ(eBay)やエッツィー(Etsy)をはじめ、あらゆるプラットフォーマーが対象になる。そのなかでも、Amazonの動きが非常に興味深い。最初はこの法案に反対したが、Amazonだけでなくあらゆるプラットフォーマーに同様に適用されると立案者が回答した途端に、支持に回った。一部の評論家は、基本的にAmazonは資金力があるため、責任問題を競合他社よりも優位に対処できると指摘している。実際、EC業界の最大手が法案に賛成しているからといって通過するとは限らないが、風向きは大きく変わるだろう」。
IPOの動向
ヘンゼル氏: 「D2Cスタートアップの多くが、上場のタイミングを遅らせようと考えているのではないか。2021年のIPO候補がすぐには思いつかない。キャスパー(Casper)は2020年に上場を果たしたが、必ずしも会社にとって有効なIPOだったかは不明だ。というのも、同社は顧客獲得コストが非常に高く、現在のユーザーのリテンションが良いと言えるのか、また新商品の良さが十分に伝わり、購入・普及へとつながっているのか判断が難しいからだ。一方で、IPOを上手く利用したといえるD2Cスタートアップは、ペロトン(Peloton)だろう。2020年は自宅でできるフィットネス関連商品の売れ行きが非常に好調だった。しかし同社はそれ以外の商品においても、サブスクリプションモデルを活用して既存ユーザーから収益を得ることに成功している。ペロトン以上に成長戦略として、このビジネスモデルに長けている企業であれば、さらに有効にIPOを活用できるだろう。今後、この類の企業の上場が増えると想定される」。
TikTokを使うレジ係がブランドのSNSマネージャーに?
ウォーターズ氏:「社員をちょっとしたインフルエンサーに仕立て上げようとしている小売企業が増えている。それは非常に面白いアイディアだ。すでに複数の企業が、各社独特の方法でこれに取り組んでいる。まだまだ企業数自体は少ないが、小売業界で働くということの意味を変えるような斬新なアプローチだ。ダンキン(Dunkin)やウォルマート(Walmart)のような大手企業でも、社員に仕事中にSNSに投稿させている。ダンキンドーナツの厨房といった舞台裏を写し、社員の働く様子を若干の脚色を入れつつ紹介している。もちろん、この取り組みは社員の必須業務ではない。だが間違いなく、根本的な変化が起きている。最近投稿したウォルマートの記事でも書いたとおり、同社は多くの社員に(TikTokへの)投稿を促しており、良い投稿であれば金銭的なインセンティブも得られる。これは間違いなく、PRとしてやる価値があるのではないか。これまで社員の扱いについて批判されてきた企業が、実際には社員が仕事を楽しんでいる動画がたくさん投稿されていくのだから。これは、消費者目線での会社の印象に大きく影響するだろう」。
[原文:A legal challenge for Amazon, and boom times for TikTok Modern Retail’s top trends for 2021]
Pierre Bienaimé(翻訳:SI Japan、編集:長田真)