ミームの世界に飛び込んだブランドは多い。だが、若い消費者向けにミームを活用するというやり方は、かならずしも賛同だけを得られるわけではない。それは、若いオーディエンスの作り上げた茶化しやジョーク文化の背景を、ブランドが完全には理解できていない場合があるためだ。
バドライト(Bud Light)は昨年、インフルエンサーとコラボし、SNSアカウント上で定期的にミームを投稿した。同社のデジタルマーケティング担当シニアディレクターを務めるコナー・メイソン氏は、これによって実際に同社に好意的なオーディエンスとフォロワー、そしてエンゲージメントの増加につながっているという。
現在、バドライトはミームによるマーケティングをさらに強めている。8月第4週に同社は「インスタグラムに投稿するミーム制作を担当する『最高ミーム責任者』を募集中」と投稿している。当然というべきか、同社はこの求人をより広く周知するためファックジェリー(FuckJerry)といったミーム投稿アカウントを活用している。
「これまでとは異なる広告の必要性は、多くの人が認識しているだろう。SNS上でオーガニックな宣伝を行うことの重要性は増しつつある」と、メイソン氏は語る。「ミームを活用して、バドライトのフォロワーを増やすという手法は、楽しく手軽なブランドである当社にうってつけだ」。
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逆に笑いものになるリスクもある
バドライト以外にも、ミームの世界に飛び込んだブランドは多い。ドクタースカッチ(Dr. Squatch)やバンブル(Bumble)も、昨年からミームの活用を進めるブランドのひとつだ。昨冬、ブルームバーグ(Bloomberg)もミームを使った知名度アップのキャンペーンを試みたが、こちらは一部から「やりすぎ」という批判を受ける結果に終わった。
スティンクスタジオ(Stink Studios)のブランドディレクター、アレックス・スターテバント氏は「ミームはうまく、さりげなく使うのが効果的だ。消費者からも『ああ、これはあのネタだね、分かるよ』と肯定的に見てもらえるようになる」と語る。「SNSに関しては、いまだに驚くほど古臭いアプローチを採用しているブランドは多い。テレビCMの一部を切り取ってブランドのハッシュタグを付けるようなやり方では、SNSの現状にそぐわない。ネット発祥のミームを使ってオーディエンスに呼びかければ、より楽しく効果的なメッセージになるはずだ」。
だが、若い消費者向けにミームを活用するというやり方は、かならずしも賛同だけを得られるわけではない。それは、若いオーディエンスの作り上げた茶化しやジョーク文化の背景を、ブランドが完全には理解できていない場合があるためだ。その結果、「分かってもいないジョークに乗っかっているブランド」として逆に笑いものになってしまうリスクもある。
新しいブランドコミュニケーション
ブランドコンサル会社のケルトン(Kelton)で分析戦略担当ディレクターを務めるクバ・キーランシク氏は、「ミームはブランドにこれまで馴染みのなかったコミュニケーション方法だ。暗号のようなジョーク、さらにほかのミームや文化が背景として複雑に絡んでいる場合も少なくない」と語る。「ミームで成功したブランドをいまだ見たことがない」というのが同氏の見解だ。
ブルームバーグのように逆に笑いものになってしまうのも問題だが、ジョークが単に理解されなかったり目立たなかったりするのもまた考えものだ。実際、キャンペーンのなかにはミームの本当の背景を理解しようとせず、ミームのGIFや画像を拾ってきてブランドのメッセージをくっつけただけにしか思えないようなものもある。これでは笑いものになるのも必然かもしれない。
キーランシク氏は「ガワだけを持ってきて、それにブランドメッセージを載せる(たとえば「この製品が発売されたときの表情」)という安直なものは、若いユーザーから拒絶されやすい」と語る。
SNSコンサル会社のバイオス(BIOS)の創業者、エバン・ワイスブロット氏は「ミームを使っただけでRedditで話題になると思っているのであれば、それは誤りだ」と語る。「ああいったコミュニティでは、そもそもブランドはあまり歓迎されてこなかったという歴史がある。『本物』だと認められるには、生半可な取り組みでは不十分だ。当社はプロモーションには1ドルも使わずに、ブランド発とは思えないほど突き詰めたミームコンテンツでスリムジム(Slim Jim)のインスタグラムのフォロワーを5000人から110万人にまで増やした実績がある」。
「この分野はまだ成長を続ける」
ミームにリソースを割くブランドが増えるなか、エージェンシー役員らは広告と感じさせないミームを作ることが重要だと指摘している。ミーム作成者やミームを扱うサイトのなかには、オーガニックに大量のフォロワーが集まるブランドを立ち上げたところもある。たとえばファットジューイッシュ(The Fat Jewish)はワインブランドのベイブローズ(Babe Rose)をローンチし、6月にアンハイザー・ブッシュ(Anheuser-Busch)に売却している。
メカニズム(Mekanism)の最高ソーシャル責任者、ブレンダ・ガーハン氏は「ミームには巨大なコミュニティを構築する力がある。その力は知名度と売上を向上させるために使えるだろう」と語る。「この分野はまだまだ成長を続けるはずだ」。
[原文:‘A different language’ Why venturing into meme-based marketing can be risky for brands]
KRISTINA MONLLOS(翻訳:SI Japan、編集:長田真)