タワードは、2021年8月にローンチしたラグジュアリーファッションのオンライン小売業者だ。同社は、1月10日、持続可能性に対する啓発イニシアチブに関して独自の試みを発表した。それは、顧客がオプトインすれば、年間の注文数を最高12回までに制限することができるというものだ。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。
持続可能性にフォーカスするファッションブランドや小売業者が、消費が地球に与える影響について消費者を啓発している方法にはさまざまなものがある。シューズ製品そのものにカーボンフットプリントを表示しているオールバーズ(Allbirds)や、100%廃材から作られたコレクションをリリースしているバッシュ(Ba&sh)などのブランドが挙げられる。
注文は1年に12回までと制限を設けたタワードの試み
タワード(Toward)は、2021年8月にローンチしたラグジュアリーファッションのオンライン小売業者だ。同社は、1月10日、持続可能性に対する啓発イニシアチブに関して独自の試みを発表した。それは、顧客がオプトインすれば、年間の注文数を最高12回までに制限することができるというものだ。オプトインした顧客は、チェックアウト時にその年に注文した回数のリマインダーを受け取ることになる。また、自分のアカウントで注文数を確認することもでき、注文数を計算するカウンターも表示される。
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タワードの創設者、アナ・カナン氏は、これは小さな変化だと言っている。同社は注文制限を義務づけているわけではなく、このオプトインに対して顧客へのインセンティブもない。ただし、将来的にはオプトインした顧客には割引やセールへの早期アクセスが提供される可能性が高いと同氏は述べている。この試みは、現時点では、顧客が自分の消費量を意識するための啓発ツールとして機能することを目的としている。
「意識を持つことは、常に最初のステップだ」とカナン氏。「何が問題であるかを理解していなければ、修正することはできない。注文数を意識するようになれば、消費量の多さが見えてくるだろう。ファストファッションによって、人々は無意識に頻繁に買うように訓練されてしまった。我々はその考え方に対抗を試みている」。
タワードは、シチズンズ・オブ・ヒューマニティ(Citizens of Humanity)やヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)のようなラグジュアリー製品を主に取り扱っており、価格帯は130ドル(約1.5万円)から、1000ドル(約11.4万円)以上である。
自分の消費行動に対する顧客の意識を高める
カナン氏によるとタワードの大多数の顧客の購入ペースは1カ月に1回だが、これはほかの小売業者には当てはまらないようだ。同氏は、マッキンゼーの2021年のデータを引用し、アメリカ人は平均で5日ごとに服を1点購入していると言う。1年に製造・販売される服の5点のうち3点は年末までに埋め立て処分されている。カナン氏は、タワードのeコマースサイトに制限を設けることによって、顧客がどこで購入しようと注文数を意識するように促したいと考えている。
「過剰製造を制限することよりも、もっと持続可能な方法で製品を製造することにフォーカスしているブランドが多い理由は理解している」とカナン氏。「それをコントロールするほうが簡単だからだ。どれだけの量が製造され、消費されるのかについてもっと意識を高めるためには業界全体の取り組みが必須で、それによって文化全体の変革がもたらされるだろう」。
注文の制限によるほかのメリット
注文の制限には実用面でのメリットもある。注文が減ると返品も減るという可能性だ。この2年間におけるすさまじい返品攻撃は、小売業者の財政には厳しいものだった。小売業者向けサイトのチェーンストアエイジ(Chain Store Age)によると、2020年における小売の返品は合計で4280億ドル(約49兆円)。ちなみに、タワードの返品ポリシーは、タグがついたままで未使用・未着用の製品を元のパッケージで購入後28日以内に返品する場合のみ受けつけるという、すでにかなり制限的なものである。
また、注文回数制限の動きは、製品供給の問題、つまりこのところブランドを悩ませている世界的なサプライチェーンの問題の緩和も目指している。
[原文:‘A cultural shift’: Luxury e-tailer Toward limits customer orders as a sustainability play]
DANNY PARISI(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)