ヒップホップやスケートボードと同様の分野で人気があったアクティビティのひとつに、最近までほとんど禁止されていた「カンナビス」。合法化が進まず、ブランドの宣伝への制限があるため、ファッション業界がインスピレーションを得てきたにもかかわらず、カンナビスはこれまで見落とされてきたが、いま状況は変化してきている。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。
ファッションは常に、インスピレーションを得るためにサブカルチャーに関心を向けてきた。ストリートウエアのブランドは長らくヒップホップ、スケートボード、バスケットボール、ストリートアートからの影響を受けており、スラッシャー(Thrasher)のようなストリート発祥のブランドは、ファッション界の大御所となった。
しかしヒップホップやスケートボードと同様の分野で人気があったアクティビティのひとつに、最近までほとんど禁止されていた「カンナビス」があった。合法化が進まず、ブランドが宣伝できるものとできないものの制限があるため、ファッション業界がインスピレーションを得てきたにもかかわらず、カンナビスはこれまで見落とされてきた。しかし状況は変化しており、ファッションとマリファナの間をとりもちたいと考えるブランドにとって好都合といえるだろう。
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100年を超す歴史を持つフランスの手巻きたばこ用品ブランド「ジグザグ(Zig-Zag)」は、ローリングペーパーなど喫煙具を販売するブランドと称してきた。しかし同ブランドは、アフロマン(Afroman)の楽曲や、ドクター・ドレー(Dr.Dre)の『クロニック(The Chronic)』のアルバムジャケットに登場するなど、ヒップホップや大麻の喫煙との関係も長い。
12月1日にジグザグは「ジグザグ・スタジオ(Zig-Zag Studio)」を立ち上げ、ファッション分野に初進出を果たした。自社デザインやコラボレーションによってデザインしたアパレルコレクションを定期的に発表していく。初のコレクションは同ブランドのシニアマーケティングマネジャー、ハーラン・レイン氏がデザインしたフーディー(フード付きスウェットシャツ)、ジョガーパンツ、レターマンジャケット(スタジアムジャケット)、革製のバッグなどだ。
これらのアイテムには、「ボリス」と呼ばれる19世紀のフランスの兵士をモチーフにした、ジグザグのロゴが配されている。アイテムの価格は70~250ドルだ。同ブランドは過去数年間にもアパレル商品の販売を不定期に発表してきたが、そのほとんどがTシャツであった。今回の取り組みによって、ファッションの世界に大きく一歩踏み出したこととなる。
「個々のコレクションから多くの収益を生み出そうとは、必ずしも考えていない」と、ジグザグのマーケティング担当シニアディレクター、エリック・アンワー氏は語る。ジグザグ・スタジオの商品は、それぞれ150個限定で発売される予定だ。「ブランド認知度のために取り組んでいる。ファッションはブランド認知度を新鮮に保ち、高めていく手段なのだ」。
アンワー氏によると、最初のコレクションは2022年の1月か2月を予定している。詳細は明らかにしなかったが、「大規模なハイファッションブランド」とのコラボレーションになるとのことだった。
だがファッション界のカンナビスへの思いは、ストリートウエアに限られたものではない。カンナビスに多額を投じる有名ブランドのひとつが、ハンドバッグブランド「エディー・パーカー(Edie Parker)」だ。創業者のブレット・ヘイマン氏は2019年、カンナビスや関連商品(パイプや巻き紙など)に特化したライン「エディー・パーカー・フラワー(Edie Parker Flower)」を別ラインで立ち上げた。
ヘイマン氏によると、カンナビスとファッションの融合は決してスムーズではないという。連邦政府では依然として違法であり、また合法な州でも販売できるものや販売方法、宣伝方法についてさまざまな法律が州ごとに定められている。パッケージのルールについても、州ごとに異なる法律が存在しているため、同ブランドの中では資本を多く必要とする事業になっている。
エディー・パーカーには3つの異なるウェブサイトがある。これはサイト上で販売できる商品に関するさまざまなルールが存在することが理由なのだと、ヘイマン氏は述べる。ターゲットとする市場はマリファナ合法化の状況に基づいて選定しており、カンナビスが合法なマサチューセッツ州には10月に店舗を構えたほか、10月に合法化されたばかりのニューヨーク市でも11月末に店舗をオープンした。
「これは本当の挑戦だ」とヘイマン氏。「可能ならば、すべてを同じブランド内で展開したかった。でも別々にしておく必然性があるから、エディー・パーカー・フラワーは存在している」。
エディー・パーカー・フラワーを立ち上げてからまだ日は浅いが、そのあいだにも主流の顧客層間で、大麻喫煙を受け入れ羅れるようになったと、ヘイマン氏は語る。そしてハンドバッグと同じレベルの高品質で洗練されたデザインのカンナビス関連商品が市場にないことに気がついた。
「ファッションは、カルチャーのなかで起こっていることを表す」とヘイマン氏。「ミニスカートが女性解放の象徴だったように、カンナビスはカルチャー面で大きな変革をもたらすものだ。長きにわたって禁止され、ブラックコミュニティに圧倒的な影響力を与えてきた。それがいまでは一般化されつつあり、合法化される場所も増えている。最終的には、自分たちの生活のあらゆる部分を引き立てるために、ファッションに目を向けることとなるだろう。これはいまの人々にとって、もはや生活の一部になっている」。
[原文:‘A cultural reckoning’: Inside the blooming relationship between fashion and cannabis]
DANNY PARISI(翻訳:田崎亮子/編集:山岸祐加子)