現在、多くの広告主が多様化を目指している。そんななか伝統的なメディアチャネルであるOOHを再検討するブランドが増えている。アナリストたちはデジタル技術の爆発的な普及とプログラマティックの進歩を理由に、OOHの広告支出は2025年までにパンデミック前の水準まで回復すると予測している。
新型コロナワクチンの接種率が高まり、多くの人が毎日の通勤を再開したことで、広告主はOOH(屋外広告)を見直し始めている。不動産ブランドのウィンダミア・リアル・エステート(Windermere Real Estate)もそのような広告主のひとつだ。最高マーケティング責任者のジュリー・デイ氏は、世界が再び動き出した今、OOHはより多くのオーディエンスを獲得する手段になると話している。
デイ氏によれば、シアトルに本社を置くウィンダミアはこの1年、OOHの取り組みと予算を徐々に増やしており、現在、広告予算の20%以上をOOHに投じているという。それまでは5~10%程度だった。ただし、デイ氏は具体的な数字に言及していない。
「人々は少しずつ通勤を再開し、交通量が戻ってきている。屋外広告は、人々が内と外を行き来しているこの瞬間を捉える機会を与えてくれる」。
Advertisement
「OOHにはデジタルより優れた部分も」
かつてウィンダミアのOOHは、あちこちのビルボードに限定されていた。しかし2年前、通勤客の目を引くチャンスを高めるため、シアトルでのひとつの駅を丸ごと使ったキャンペーンを実行した。そして2021年、ユーザー生成コンテンツを用いた新しいOOHキャンペーンを始動し、シアトル都市圏の少なくとも5つの駅をジャックした。
現在、ウィンダミアの広告予算の半分近くがテレビ広告に投じられている。ウィンダミアによれば、OOHはデジタル広告の次に多く、広告予算に占める割合は10%以下だという(ウィンダミアは詳細を明らかにしていないため、どれくらいの金額をメディアに投じているかは不明だ)。
「多くの企業がそうであるように、私たちは巨額の予算を持つわけではない。そのため、本当の意味で用途を絞り込む必要がある」とデイ氏は話す。「現在、OOHはいくつかのデジタル(広告の選択肢)より優れた方法に見えるが、私たちの戦略にはまだ多くのデジタルが含まれている」。
ほかの広告主と共通する見方
これはほかの広告主と共通する見方であり、多くの広告主が多様化を目指している。AppleがiOS 14、15で行ったデータプライバシーに関するアップデートは、とどめの一撃とも言われており、ターゲティングやアトリビューションの妨げになっているためだ。
このようにメディアミックスの多様化が叫ばれるなか、伝統的なメディアチャネルであるOOHを再検討するブランドが増えている。DIGIDAYの記事によれば、アナリストたちはデジタル技術の爆発的な普及とプログラマティックの進歩を理由に、OOHの広告支出は2025年までにパンデミック前の水準まで回復すると予測している。
広告エージェンシー、グッド・アップル(Good Apple)のメディア担当アソシエイトバイスプレジデント、ケイティ・コッツバック氏は「デジタル化されたこの世界では、ブランドが突出することが難しくなっている」と語り、画面に表示される広告の効果を高めるため、OOHを活用するブランドが増え続けていると補足した。「フリークエンシーを高めるための工夫は新しいものではないが、ブランドは今、突破口を開くため、チャネルを超えたフリークエンシーについて考えている」。
OOHでもデジタル化が進んでいる
伝統的に、OOHは長丁場のゲームだった。静的なビルボードはほとんど指標をもたらさないためだ。しかし、OOHでもデジタル化が進んでいると専門家はいう。プログラマティック広告プラットフォーム、アドムニ(Adomni)のCEO、ジョナサン・グダイ氏は「FacebookやGoogleの広告キャンペーンを立ち上げるのと同じくらい簡単に、デジタルビルボードと39種類の画面に文字通り数分で広告を掲載できるようになった」と話す。
コッツバック氏に言わせれば、広告の未来は過去を振り返ることだ。デジタルデータプライバシーの取り締まりが強化され、テレビ、ラジオ、OOHなどの伝統的なメディアチャネルが見直されているためだ。コッツバック氏はメール取材に対し、「OOHでは1対1で会話することはできないかもしれないが、何らかの形でパーソナライズを実現することが次の課題だ」と述べている。
来期、OOHにさらに広告費を投じるかについては、ウィンダミアは成り行きを見守っているところだ。「我々は毎年、どこに投資すれば最も大きなインパクトを与えられるかを検討している」とデイ氏は話す。「我々は投資に対して最大の効果が得られるメディアを見つけたいと考えている」。
KIMEKO MCCOY(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:長田真)