小売企業にとって、モバイルアプリは難しい分野だ。一般的には、アプリを開発しないでその機会を逃すよりも、アプリ開発をした方が良いと考えられている。しかし、実際にはブランドへの忠誠心が強い顧客だけがアプリをダウンロードし、利用することになるため、そのハードルは高い。
「アプリが最初に登場したころ、小売企業の大半がオリジナルアプリを開発するだろうと考えていた」と、調査会社eマーケター(eMarketer)のリテールアナリスト、ヨリー・ワームザー氏は話す。「しかし、実際に利用しているのは少数の企業だけだ。普通、消費者が小売企業のアプリをダウンロードすることは、ほとんどない」。
事実、ダウンロード数や定着率を考えると、小売企業がモバイルアプリに投資することは悩ましい。しかし、忠誠心の高い顧客は、ブランドにとって希望の光だ。仏マーケティング企業クリテオ(Criteo)が、2016年2月に行ったモバイルコマースの現状調査には、アプリが事業を後押しする事例が書かれている。
小売企業にとって、モバイルアプリは難しい分野だ。一般的には、アプリを開発しないでその機会を逃すよりも、アプリ開発をした方が良いと考えられている。しかし、実際にはブランドへの忠誠心が強い顧客だけがアプリをダウンロードし、利用することになるため、そのハードルは高い。
「アプリが最初に登場したころ、小売企業の大半がオリジナルアプリを開発するだろうと考えていた」と、調査会社eマーケター(eMarketer)のリテールアナリスト、ヨリー・ワームザー氏は話す。「しかし、実際に利用しているのは少数の企業だけだ。普通、消費者が小売企業のアプリをダウンロードすることは、ほとんどない」。
事実、ダウンロード数や定着率を考えると、小売企業がモバイルアプリに投資することは悩ましい。しかし、忠誠心の高い顧客は、ブランドにとって希望の光だ。仏マーケティング企業クリテオ(Criteo)が、2016年2月に行ったモバイルコマースの現状調査には、アプリが事業を後押しする事例が書かれている。
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また、同調査には、モバイルアプリの開発を優先した小売企業は、優先しただけの価値があったと示されていた。これは、2015年第4四半期のモバイル取引のうち、54%がモバイルアプリによる売買だからだ。注文あたりの平均額も、モバイルウェブ(92ドル:約1万円)やデスクトップ(100ドル:約1万1000円)で買い物する人よりもモバイルアプリ(102ドル:約1万1400円)で商品を購入する人の方が高い。
ユーザーエクスペリエンスを良くするために小売企業が、いかにモバイルアプリを改善しているのか、見てみよう。
1. 購入価格の高い顧客に注力する
小売企業のアプリはブランドに強い忠誠心をもった顧客によってダウンロードされるため、アプリはそれらの顧客の行動を把握し、反映させることが課題だと、ワームザー氏は話す。
「モバイルアプリを、事業の核となる顧客向けに作り、店舗内でも外でもブランドエクスペリエンスを向上させなくてはならない。まずは顧客が望むものを考え、その考えを軸にアプリを開発しなくてはならない」。
しっかりとした顧客サービスプログラムを提供している小売企業は、アプリで来店した顧客を瞬時に見極め、ポイントサービスを管理し、特別なメンバーシップの提供などを行っている。仏化粧品ブランド、セフォラ(Sephora)のアプリ、「ビューティーインサイダー(Beauty Insider)」が良い例だ。ユーザーは貯めたポイントを使用して、無料でアプリ内購入をすることができる。また、ユーザーが来店すると過去の購入記録などから判別される。
購入価格がもっとも高い顧客に投資することで、モバイルアプリのコンバージョン率がモバイルウェブのコンバージョン率と比べて120%向上したことも、クリテオの調査で判明した。
それぞれのチャンネルでの、ファネルごとのコンバージョンの推移 出典:クリテオ
2. アプリエクスペリエンスの個別化
米モバイルエンゲージメントプラットフォームロカリティクス(Localytics)が、2015年前半に行った調査によると、小売企業が開発したアプリのダウンロード率と定着率が2014年と比べて24%も向上したという。ロカリティクスの最高マーケティング責任者(CMO)、ジョッシュ・トッド氏は、この結果は小売企業がアプリエクスペリエンスをより個別化することに重点を置いてきたからだと話す。同氏は、特にプッシュ通知が素晴らしいといっている。
「昔はすべての人々に向けてテレビCMを放送していた。しかし、すべての人に適していたテレビCMはどれほどあったのだろうか?」とトッド氏は指摘。「それから比べると大した進歩だ。適した時間にパーソナライズされたメッセージがユーザーに送られる。顧客の行動を良く理解している証拠だ」。
アプリ内の買い物かごに入れている商品や、セール品の在庫数などを教えてくれるプッシュ通知に比べ、一般的な通知はユーザーを刺激しないとトッド氏はコメントし、ロカリティクスのデータによると、プッシュ通知を介したアプリエンゲージメント率は、2014年に88%も上昇しているが、2015年にはそこからさらに171%も上昇している。
プッシュ通知からのアプリエンゲージメント率の推移 出典:ロカリティクス
小売企業が顧客の閲覧履歴や購入履歴を調べれば、フィードにユーザーが好みそうな商品やセールの案内などを表示させ、よりパーソナルにすることができる。「アプリエクスペリエンスの個別化」にはまだ成長する余地が残っているということだ。
「アプリは、ユーザーエクスペリエンスの向上が第一だ。もし1年後、ユーザーデータを分析して次に何を買うのかがわかるようになれば、それはより有益なのは明らかだ」とワームザー氏は語る。
3. クロスチャンネルプロモーション
ユーザーやコンテンツを、アプリから外に連れ出そうと努力している小売企業はもっと先を観ている。
「小売企業は2つの問題で板挟みになっている」とトッド氏。「企業はアプリでも商品を購入してもらいたいと思っているが、店舗にも足を運んでもらいたいとも思っている。ここで、賢い小売企業はアプリを利用する。顧客の買い物かごや欲しいものリストの情報からユーザーにメールを送り、購入を促す。そして来店割引などを提供し、来店につなげるのだ」。
トッド氏によると、顧客の行動をアプリから別のチャンネルに移すことに加え、大手小売企業などはコンテンツの促進のためにほかのアプリとパートナーを組んだりしているという。ときには傘下内の企業同士でパートナーになったりもするそうだ。米高級百貨店チェーン、バーニーズ・ニューヨーク(Barneys New York)では、ネイティブコンテンツサイト「The Window」という2つ目のアプリを作成し、人気商品の販促のためにオンラインデジタル雑誌と頻繁にコンテンツ共有を行っている。
トッド氏は「バーニーズはユーザー情報を統合することによって、それぞれの顧客がどんな情報を欲しているのかを理解している」指摘し、「『The Window』の役目は商品を売ることではなく、顧客がブランドとより深い関係性を築くためのものだ。購入価格が高い顧客と深い関係性を築いてから、コンテンツやセールの告知などを提供するという目的を果たしている」とコメントした。
Hilary Milnes(原文 / 訳:BIG ROMAN)
Image via Thinkstock / Getty Images