ファッション業界ではサステナビリティがマーケティングの流行だが、具体的な規制、特に罰則のあるものがめったにない。しかし、1月初めにニューヨーク州がファッション法(Fashion Act)を発表して以来、米国のファッション業界は騒然となっている。ほかにも、サステナビリティを強調した法案が提出されている。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。
1月初めにニューヨーク州が新たな法案を発表して以来、米国のファッション業界はこのファッション法(Fashion Act)に対して騒然となっている。これはニューヨークで事業を行うファッションブランドに対し、生産量や排出量といった項目を開示するよう求めるだけでなく、自社のプロセスにおけるサステナビリティについても大幅な改善を求めるものとなる。
近年、ファッション業界ではサステナビリティがマーケティングのバズワードになっているが、この業界には具体的な規制(とくに罰則のあるもの)はほとんど存在しない。たとえば「オーガニック」や「サステナブル」と表示できるものに関しては、虚偽広告に関する最低限の法律以上の規制はほとんどない状態だ。
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過去にオールバーズ(Allbirds)のような企業が立法を支持している。8月にオールバーズのサステナビリティ責任者であるハナ・カジムラ氏は米Glossyに対し、それがファッション業界に実際の変化をもたらす唯一の方法だと語っている。
「妥協したり、何が環境によいのか調べたりということを消費者側に選ばせるべきではない」と彼女は述べた。「その製品をよりよいものにするのは、企業側であるべきだ」。
以下では、今年ファッション業界に影響を与えるであろう、予定されている3つの法案について紹介する。
ファッション法
ファッション法は、この業界がこれまで目にしたことのない広範な規制案のひとつ。年間収益が1億ドル(約114億円)を超え、ニューヨークで事業を行う企業に対し、使用するすべての原材料の供給元を詳細に計画するだけでなく、排出量や生産量を開示することを義務づけるものだ。
この法律の影響に対してもっとも対策を迫られることになるのは大企業である。この法律がとくに対象としているのは、サプライチェーンが世界中に広がっているために概して新しいプロセスの導入がもっとも遅いとされる大企業である。法案には必要なプログラムを導入するための猶予期間は規定されていないが、可決されればそれも変更される可能性がある。
「ファッションコミュニティは、一般的にサステナビリティに非常に力を入れている」。そう話すのは、自身の名を冠したフットウェアブランドの創業者サラ・フリント氏だ。とくに、彼女のビジネスはすでにほぼ完全にその内容に準拠していることもあって、フリント氏はこの法案を支持すると述べた。「しかし、大きなブランドにとって、このような大きな変化を起こすにはしばらく時間がかかる。ある程度の規模になってしまうと、会社を抜本的に見直すのは非常に難しいからだ」。
サステナブル・コーポレート・ガバナンス・イニシアチブ
EUは2021年に「サステナブル・コーポレート・ガバナンス・イニシアチブ(Sustainable Corporate Governance Initiative)」を提案した。この新しい指令は、短期的な財務的成長よりも長期的な持続可能性を重視するよう企業に求めるものとなる。また、ハイレベルな意思決定にサステナビリティの目標を取り入れること、そして企業の行動が環境に与える影響について、排出量やそのほかのデータを追跡することも義務づけられる。
この指令の具体的な詳細については、ニューヨークのファッション法ほど明確ではないが、このふたつの提案は本質的に類似している。排出量や環境への影響に関する具体的な指標や目標はまだ検討中であり、今年後半には欧州委員会によって明らかにされる予定だ。2021年2月の時点で、EUはファッション企業や非営利団体を含む、業界全体で855の団体とその詳細について協議している。
ファッション法の経験があるセダム・ロー・グループ(Sedhom Law Group)のマネージングパートナーであるラニア・セダム氏によると、一般的にヨーロッパは米国よりも規制が厳しいという。
「ヨーロッパのブランドは規制に慣れている」とセダム氏は言う。「ヨーロッパの大手ファッションブランドは、すでにいくつかの対策を実施しているので、規制についてはおそらくアメリカのブランドよりも容易に納得するだろう」 とセダム氏は述べている。
グリーン・クレーム・コード
2021年10月に英国の競争・市場庁が発表したグリーン・クレーム・コード(Green Claims Code)は、2月中に発効しそうだ。この裁定は、製品が「サステナブル」であるという主張を立証するようブランドに求めるものだ。製造時や販売時だけでなく、そのライフサイクル全体を通して、製品の排出量、素材、供給元に関する明確な情報を提供しなければならない。
つまり、持続可能な方法で作られた製品であっても、リサイクルできない、短期間で生分解しない、長持ちするように設計されていないものは基準を満たさないとされる。したがって、そのブランドは罰せられる可能性がある。
ファッションではグリーンウォッシュが大きな問題となっており、ブランドが自社製品をサステナブルであると宣伝するために使用しているさまざまな用語に関する規制は、これまでほとんど存在しなかった。ここに挙げている他の法律と同様に、グリーン・クレーム・コードの下でブランドに求められている主な要件は情報開示である。
「あらゆる類のものにおいて用語に関する規則が存在する」とセダム氏は説明する。「たとえば、ワインは特定の産地のものでなければ、特定の種類とは呼べない。だが、ファッションにはそのようなものが存在していないため、『サステナビリティ』といった用語がまったく意味をなさないものになってしまっている。そうした用語が完全に乱用されているのだ」。
[原文:3 pieces of upcoming fashion legislation to know]
DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)