パンデミックとそれに伴う在宅勤務へのシフトによって、これまでラウンジウェアやアクティブウェアを販売したことのないブランドの多くが、これらのスタイルの選択肢を爆発的に増やすことになった。この状況は、アクティブウェアを販売しているブランドとそのツールを販売している企業の双方にとって、大きな収益機会となっている。
昨年、各種ブランドたちはそれまで予想もしていなかった新しい方向への転換を強行することとなった。米DIGIDAYの姉妹メディア、グロッシー(Glossy)の調査によると、調査対象となったブランドや小売業者の57%が2020年に新しいカテゴリーを立ち上げたことが分かっている。特にパンデミックとそれに伴う在宅勤務へのシフトによって、これまでラウンジウェアやアクティブウェアを販売したことのないブランドの多くが、これらのスタイルの選択肢を爆発的に増やすことになった。
新しいカテゴリーに参入することは、費用がかかり、困難であることが多い。特にアクティブウェアでは、綿のような素材よりも製造が複雑なスパンデックスのような機能性素材を使用することがよくあるため、この傾向はさらに強まる。しかし、開発や立ち上げのプロセスを容易にする新しいツールが複数登場している。ライセンス形式で入手できる素材や、アクティブウェアを開発するためのプログラムなどがこれに含まれる。この状況は、アクティブウェアを販売しているブランドとそのツールを販売している企業の双方にとって、大きな収益機会となっている。
そのようなツールのひとつが、ザ・アスレチックスMVMT(The Athletics MVMT)という会社から提供されている。同社は約半年前にソフトローンチし、コートニー・カプレット氏によって公式に4月20日ローンチされた。カプレット氏はファッション・ブランドの10コルソ(10 Corso)の創設者であり、ブランド開発エージェンシーのフォーム・デパートメント(Form Department)の創設者だ。ザ・アスレチックスは、ブランドが独自のアスレジャーラインを構築するのを支援するブランド構築プログラムだ。
Advertisement
カプレット氏は、ザ・アスレチックスと協力することで、製品開発と製造の大部分がすでに完了した状態で参入できるため、ブランドの開発に要する時間と投資を単独で開発する場合の数分の1にまで削減できると語った。ブランドは、ザ・アスレチックスが開発した30品目のアクティブウェア・ベースラインから選択し、色、素材、グラフィックをカスタマイズして独自のアクティブウェア・コレクションを作成することができる。このプログラムは、アクティブウェアの経験がないアパレルブランドや、まったくアパレルを生産していない企業をターゲットとしている。カプレット氏によると、これまでに同サービスを利用した企業は、新しいブランドからエンターテインメント企業、テレビネットワークにまで及んでいるという。
競合他社に遅れをとらないよう
カプレット氏によると、通常、アクティブウェアのラインをゼロから開発するには、サンプルを使って数カ月に渡ってサイズやフィット感の調整が必要であり、最低でも製品あたり2000ドル(約21万7000円)のコストがかかるという。ザ・アスレチックスは製品ごとに一律料金を課している。たとえば、トレーナー1枚あたり20ドル(約2170円)となっている。この価格には製造、タグ、パッケージが含まれている。ブランドはそのレートで製品を大量購入し、それに対してザ・アスレチックスは販売価格も提案する。トレーナーの場合は72ドル(約7800円)だ。カプレット氏によると、ブランドと契約を結んでから30日以内に新製品を発売できるという。
ザ・アスレチックスはプログラムを利用しているブランドを公表していないが、同氏によると100以上のブランドに起用されているという。同氏はソーシャルメディア広告と顧客獲得のための直接的なアウトリーチを組み合わせて使っている。
「私たちはパンデミックの前からこのコンセプトの開発を始めていたので、アクティブウェアが爆発すると予期していたわけではない」とカプレット氏。「10品目から始めたが、このカテゴリーへの(新しい)関心が集まったことで、30品目に増加した」。
アクティブウェアの売上高は昨年11%増加し、全世界で1570億ドル(約17兆円)に達した。このカテゴリーを立ち上げたブランドは、ほぼ即座に利益を上げた。コールズ(Kohl’s)は2020年にアクティブウェア・ラインを立ち上げ、今後3年間で同社の収益の30%を占めると予想している。
エディテッド(Edited)のリテール・アナリスト、クリスタ・コリガン氏は「昨年、いくつかのブランドは急速に適応し、絶えず変化する環境に対応する新しい製品カテゴリーを提供し始めた」と述べた。「フォーマル分野あるいはトレンド優先分野のアパレル専門店は、競合他社に遅れをとらないよう、これまでにないラウンジウェアの主要アイテムを導入した。以前からアスレジャーやラウンジウェアを提供していた小売業者も、こうしたストーリーをプロモーションの焦点にし始めた」。
B2Bの収益源にしようと画策
同氏によると、ワクチンが普及して通常の生活回復の兆しが見え始めている今でも、アクティブウェアの需要は高いままだという。
また、アクティブウェア企業のB2B売上を増やすチャンスもある。パンゲア(Pangaia)のスウェットパンツやスウェットシャツはパンデミックを通じてセレブたちのお気に入りとなったが、同社は現在、特許取得済みのパフォーマンス素材をほかのブランドにライセンス供与することでB2Bの収益源にしようとしている。ビジネス・オブ・ファッション(Business of Fashion)によると、同社の幹部はB2B販売が成長の主な原動力になると予想している。
[原文:‘Build-a-brand’: New companies are making it easier to launch loungewear]
(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)