ストックフォトサイト「シャッターストック(Shutterstock)」で、責任者としてホームページの鮮度を維持する仕事を任されているロビン・ラング氏。小規模なフォトギャラリーのキュレーターとは違い、同氏の手元には1億点の画像が存在し、毎日、約10万点が追加されている。そんなラング氏の1日を紹介する。
ロビン・ラング氏は、すべてのキュレーターが夢に描く仕事に就いている。しかし、問題なのは、得てして夢というものは、悪夢の領域に踏み入る危険も孕んでいるということだ。
ストックフォトサイト「シャッターストック(Shutterstock)」と、その姉妹サイト「オフセット(Offset)」でラング氏は、責任者としてホームページの鮮度を維持する仕事を任されている。毎月30の新しい画像コレクションをいっぱいに満たしているのだ。小規模なフォトギャラリーのキュレーターとは違い、同氏の手元には1億点の画像が存在し、毎日、約10万点が追加されている。サラダを食べる女性やビジネスに関する隠喩など、とてつもない数の画像だ。
「もっと小規模なプロジェクトに従事できたらと思うこともあるが、博物館のキュレーターなら何度も同じものばかりを見続けなければならない」と、ラング氏は語る。
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ヴォーグ(Vogue)やタイム(Time)、コンデナスト・トラベラー(Condé Nast Traveler)などの高級誌で画像編集者としての経験を積んだラング氏だが、ストックフォトに関しては、経験の壁に直面していることを認めた。同氏はベクター画像(解像度を損なうことなく、拡大縮小できる画像)が何なのかを知らなかったし、クライアント企業にとって背景とボタンが重要であることも学習しなければならなかったという。
「いささかプライドを傷つけられた」と、ラング氏。
そしていま、シャッターストックで画像を見つけることに日々を費やすラング氏は、同社のチームが新機能を試し、アイデアを売り込む、強力な顧客のような存在になっている。同氏は、「部屋の隅にいる孤独なグラフィックデザイナーになりたくない」とも述べた。
今回は、そんなラング氏の1日を紹介しよう。なお、文意を明確にするため、以下には若干の編集が加えられている。
09:00 am エンパイアステートビルディングの20~21階にあるオフィスに到着。観光客の大群を避けるための通用口があるのは幸いだが、時折、目を見開いた迷子に遭遇することも。この通用口は、会議やデスクから離れて、気軽なおしゃべりを楽しめる絶好の共有空間だ。
09:30 am 我々クリエイティブチームはスタンドアップミーティングを取り入れている。このアイデアは開発チームから拝借したものだ。この15分ミーティングで、その日に取り組む各プロジェクトをざっと確認し、障害を克服するための戦略を議論する。私が座るのはデザイナーたちの隣。動画チームともめることも少なくなり、彼らがいま、どんな新プロジェクトに取り組んでいるのかわかるのが楽しい。たとえば彼らは、シャッターストックが今度開催するコンテスト「Pixels of Fury(怒りのピクセル)」のティーザー動画を完成させたそうだ。
09:45 am オフィスのエントランスにはデジタルウォールが設置されている。私は毎週、デザイナーと協力しながら、このデジタルウォールの斬新さの維持に努めている。そこに映る画像は通常、私がウェブサイト用に作成した新しいコレクションの一部だが、折に触れて、シャッターストックのコレクション画像が1億点に達したときなどの記念碑的出来事も取り上げる。そのときはドローンの画像に重点を置いた。いまやドローンはスポーツやフォトジャーナリズム、あるいは旅行写真にまで投入されているのだから。

シャッターストックのデジタルウォール
10:00 am 私はシャッターストックのほかに、傘下の専門特化型ブランド、オフセットのキュレーションも担当している。我々は、特定のテーマに基づくコレクションからベストな画像を紹介するニュースレターを毎月、顧客に送信している。現在、私は新しいコレクションの仕上げをしている。タイトルは「Home for the holidays(ホリデーシーズンを自宅で)」で、次回、送信される予定。また我々は、オフセットブランドが独占使用権を擁する画像の新たなサブセットもすでに用意している。私はチームとミーティングを行い、これらの新たに追加された画像にスポットを当てる最善の方法をブレインストーミングした。
12:00 pm カフェテリアに行けばランチにありつけるが、食べ物の屋台が立ち並ぶブロードウェイバイツ(Broadway Bites)がグリーリースクエアで活動を再開している。外に出られるせっかくの機会にあらがうことはできない。インド料理のインディアンプロジェクト(Indian Project)で食糧を調達し、オフィスに戻ってクリエイティブチームの仲間数人とテラスで食事。
01:00 pm 私はいま、イベントチームと協力しながら今度のシカゴのプロジェクトで使用される画像のコレクションをまとめている。そんなわけで、私のデスクのそばにやって来た彼らと軽く雑談。これらの画像が、このプロジェクトをプロモートすることになっている営業チームのニーズを満たしているか確認する。
01:30 pm 私は毎日、デザイン/写真業界全体で起きている新しい動きに追いつくための時間を確保しようと努めている。我々のチームは「Slack(スラック)」を使って、発見した興味深い情報を共有している。また私は、フォト・ディストリクト・ニュース(Photo District News:PDN)やコンシェンシャス(Conscientious)、アパチャー(Aperture)、ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・フォトグラフィー(British Journal of Photography)、デザインミルク(Design Milk)など、さまざまな専門誌やウェブサイトもチェックしている。
02:00 pm デジタルプロデューサーが、昼の気分転換としてクリエイティブチームのために、毎日行われている5分間のトリビアゲーム大会を開いてくれた。トリビアは楽しいが、ゲームのあとで共有される馬鹿げたGIFこそが本当のハイライトだということに、誰もが賛同してくれるのではないだろうか。みんな自分自身に関する素晴らしいユーモアのセンスの持ち主で、真面目に受け取られる冗談はほとんどない。
02:05 pm この仕事の好きなところのひとつは、開発中の新製品に関われることだ。UXデザイナーから、現在開発中の新しい検索方法に関する意見を求められていたので、本人と会って彼女のアイデアについて議論し、使えそうなデザインのワイヤーフレームをいくつか検討する。
02:30 私の仕事の中核をなす業務は、ウェブサイト用に毎月、新たなコレクションをキュレーションすること。コンテンツに関する裁量を与えられている私だが、顧客の検索から集められたデータをテーマの基礎にしている。私の目標は、このデータを活用して、顧客が何を、いつ検索するのか予測し、コレクションの準備を整えて、彼らのニーズを満たすことだ。
04:30 pm:私はいま、メディア広告チームと協力しながら、将来のFacebookキャンペーンで使用する画像をキュレーションしている。私は、シャッターストックが制作するどんな広告にも、視覚的に人を引きつける魅力と、幅広いオーディエンスに役立つ有用性のバランスがとれた画像をめざしている。
実際には、これがとても難しいときもある。我々の顧客は非常に幅広いので、1点のビジュアルで万人のニーズを満たすことはできないと納得するしかないが、シャッターストックのウェブサイトを訪れてくれた顧客が、キュレーションされたコレクションを閲覧して、自分自身のプロジェクトにぴったり合う刺激的な画像を見つけてくれれば、と願っている。
勤務終了後 パーティー! 写真家の友人がニューヨークを離れるので、彼のスタジオでパーティー。お酒を飲みながら、お別れのあいさつをする。
Grace Caffyn (原文 / 訳:ガリレオ)