PURPOSE DRIVEN MARKETING

パーパス と、ビジョン や ミッション はなにが違うのか?:パーパス・ドリブン・マーケティング でインパクトを#3 - 児玉太郎氏

本記事は、「パーパス・ドリブン・マーケティング」をビジョンに掲げた「Advertising Week Asia2021」のアドバイザリーカウンシル4名によるリレー寄稿企画。3本目となる今回の著者は、アンカースター株式会社で代表取締役を務める児玉太郎氏です。

パーパスドリブン、パーパスドリブンカンパニー、とはなんでしょうか。また、パーパスと並べて使われることがある、ビジョンドリブンやミッションドリブンという言葉についても、いまいちピンと来ていない方も多いと思います。これらの言葉の意味について、なるべくわかりやすくまとめてみます。私は専門家ではないので、あくまで独自の理解と解釈であることを、どうぞご了承ください。

まずは、カンパニーという言葉について、あらためて調べてみました。カンパニーと言えば、いわゆる「会社」という意味で使われることがほとんどだと思いますが、ほかにも、多様なシーンで使われることがあります。たとえば、とあるロックバンドが、大勢のスタッフとともにワールドツアーをしているとき、そのチーム全体のことをカンパニーということがあります。軍隊では、80人から250人ほどの中隊のことを、カンパニーと呼びます。カンパニーとは、同じ想いをともにする、気の知れた仲間やチームやグループ、組織の総称です。

次に、ドリブンとはなんでしょうか。ドリブンは、ドライブの過去分詞です。過去分詞とは、「過去の行為による結果の状態」のことらしいのですが、難解です。ビジネスに置き換えたほうがわかりやすくなるかもしれません。ビジネスにおいて、ドライブ=運転するのは、組織や事業などです。すなわち、私たちがここで使うドリブンとは、組織や事業が、なにかによってドライブされてきて、今の結果があるのか、今の状態になったのか、ということだと言えます。私は、もう少しシンプルに理解するために、組織や事業を動かすために必要な力の源泉、エネルギーみたいなものだと解釈しました。

ビジョンによってドライブされてきた状態を、ビジョンドリブンと表現し、ミッションによってドライブされてきた状態を、ミッションドリブンと表現します。復讐心に燃えている人は復讐ドリブンと言えますし、恐怖によって動かされているチームのことは、恐怖ドリブンと表現できるかもしれません。

ビジョン、ミッションという言葉

さて、ビジョンとか、ミッションという言葉がでてきました。あらためて、これらの言葉について考えてみましょう。パーパスについては、最後にまとめることにします。

ビジョンとは、なにかを見ることができる能力、すなわち視力のことです。なにかが見える状態や感覚のことも指すので、視覚とも言えます。また、物理的な映像やイメージを視る力だけではなく、頭の中になにかを想像する力や、想像している状態や感覚のことも、ビジョンと表現します。

私たちが、ビジネスシーンにおいて、ビジョンという言葉を使うのは、物事の本質を議論し、未来を想像し、理想を語りあっているときです。しかし、自分の頭の中にある想像や、その想像をしているときの感覚=ビジョンを仲間に共有して、自分と同じ感覚を持ってもらうことは、なかなか難しいことです。組織の中で、ひとつのビジョンを共有するために取られる手法は、さまざまなものがあります。言葉を丁寧に組み合わせて情景を表現しようとしてみたり、絵や図にして想像の可視化を試みたりします。また、ありとあらゆる方法を組み合わせて、じっくりと時間をかけて、立体的にビジョンを共有しようとすることもあります。

ミッションの語源は、はるか昔のキリスト教の布教活動にまでさかのぼります。世の中に広く信仰を広げていく任務のことをミッションと言いました。このように、ミッションとは、大切な任務や使命のことを指します。

ビジネスにおけるミッションの活用については、ここ数年、さまざまな書籍が出版されているように、一種の経営手法として、注目されています。私の前職であるFacebookは、私が入社したころ、まだ社員が数百名程度のいわゆるスタートアップ企業でしたが、「世界をひとつにつなげる」という、誰にでもわかりやすいミッションを自らに課し、そのミッション達成に向けて、やらなければならないことはすべてやる、という経営を行ってきました。このミッションの特徴は、簡単に計測可能なことで、目指すゴールは世界の総人口、すなわち78億です。利用者数が、その1%にも満たない頃から、このミッションを実現すべく、愚直に事業を展開してきた結果、今では世界中で30億以上の利用者がいます。シンプルで明確なミッションが、組織を力強くドライブすることができる、ひとつの事例になっていると思います。

では、パーパスとはなにか?

パーパスとは「なにかが行われたり、生まれたり、存在したりしていることの理由」という意味です。ビジネスシーンで使われるようになってきたのは、ここ数年のことです。

先述のビジョンやミッションは、どちらも理想の未来を実現したり、ゴールを目指したりするものでしたが、パーパスは少し趣旨が異なります。パーパスは、「この世の中に生を受けた以上、果たし続けなければならないこと、世の中の一部としてなにを担っていくのか」という自分の存在そのものの意味を考えつづけるような、終わりのない感覚を持つ言葉です。その奥ゆかしさというか、継承しつづける意思のような感じが、我々日本人にはどことなく、おさまりの良い概念かもしれません。

最後に、パーパスドリブンカンパニーについて考えてみましょう。上述を組み合わせると、「パーパスをエネルギーにした、同じ想いを共有する仲間たち」ということになります。
世界中で、ミッションやビジョンだけでなく、パーパスステートメント(宣言)を掲げる企業が増えてきました。特に大きな企業になると、売上や利益を追求するのではなく、社会の中で重要な役割を果たし、より良い世界を創っていくための重責を担うことが世論的にも求められるようになってきています。世界規模の困難や不平等の解決を想い、より豊かで、平和な世の中を創りつづける責任を果たしていく、という企業姿勢があって、はじめて世の中にその存在価値を認められ、支持されて、物が売れて、事業が成り立つ。パーパスドリブンカンパニーには、人格があり、意思があり、血が通っている、まるで一人の人みたいな会社のことなのかもしれません。

お読みいただきありがとうございます。参考になりましたかでしょうか。1日でもはやく、安心で健やかな毎日が戻りますように。

世界最大級のマーケティング・コミュニケーションのプレミアイベント 「Advertising Week Asia2021」は、5月27日(木)からオンライン開催されます。そのビジョンは、「Making an Impact With Purpose Driven Marketing. – How We Can Redefine Business & Drive Social Changes.(パーパス・ドリブン・マーケティングでインパクトを:社会変革の推進とビジネスをいかに再定義できるか?)」。オンライン視聴の期限は6月25日(火)です。

Written by 児玉太郎

※DIGIDAY[日本版]は、Advertising Week Asia2021のメディアパートナーです。