PURPOSE DRIVEN MARKETING

カリフォルニアロールを許容するブランドに: パーパス・ドリブン・マーケティング でインパクトを#2 - 嶋浩一郎氏

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本記事は、「パーパス・ドリブン・マーケティング」をビジョンに掲げた「Advertising Week Asia2021」のアドバイザリーカウンシル4名によるリレー寄稿企画。2本目となる今回の著者は、株式会社博報堂で執行役員・エグゼクティブクリエイティブディレクターを務める嶋浩一郎氏です。

市場における優位性を語る時代から、社会におけるブランドの存在意義を語る時代へというブランディングの変化は、広告・マーケティング業界にいる皆さんがここ数年感じていることだと思います。これからのマーケッターは「市場のなかの私」を語ることより、「社会のなかの私」を語ることが重要になるわけで、まさにパーパスが大事になってくるということだと思います。

そんな時代にブランドはどう語られるべきなのか? PRパーソンの視点からお話をしてみたいと思います。

「市場のなかの私」から「社会のなかの私」へ

今起きている変化は市場のなかの優位性、たとえばシャンプーであれば洗浄料の強さを競う時代から、社会のなかの価値、つまり女性の髪形の自由、ひいては女性の自由な生き方を応援するブランドへ変化するということなんですが、このことはブランドが新しい文化の担い手、新しい概念を発信する主体になることを意味します。

そのとき、ブランドはよりナラティブな存在になるべきだと考えます。ナラティブというのは、ブランドが生活者に語られるという状態になることです。ナラティブの重要なことは、ブランドストーリーそれ自体だけでなく、ブランドが連続した時間のなかで議論される状況に置かれることです。そのためには、ブランドは絶対的な経典を配信する存在よりも、議論を生み出す存在になるべきではないかと思うのです。

余白が受け手のクリエイティビティを刺激する

議論され続ける…、ブランドがこの状況になるのはなかなか難しい。そのために僕は、ブランドに、そしてその情報発信に「余白」が大事だと思っています。「余白」は受け手の想像力・クリエイティビティを刺激し、ときにはブランドホルダーが想像もしえなかった文化をつくりだします。

どういうことか? 

江戸前寿司というブランドを広めたい寿司職人さんがアメリカ人に寿司の作り方を教えました。教わったアメリカ人はアボカドとサーモンをつかったカリフォルニアロールを生み出しました。これ、江戸前寿司原理主義者からすると「そんなものは寿司じゃない!」っていうことになるかもしれないわけです。でも、寿司という文化を大きく捉えてみると、誤読と誤配によって誕生したかもしれないカリフォルニアロールは寿司文化をより拡張していったと考えられるかもしれない。この誤読と誤配を起こす「余白」がブランドとその情報発信には必要なんじゃないかと思うのです。なぜなら、企業は今後文化の担い手になっていくからです。文化をつくるためには新しい解釈に対して寛容であるべきだと思います。

Zoomの開発者は会議の代替としてのサービスを生み出したわけだけど、受け手の一部はこのテクノロジーは飲み会にも使えるし、合コンにも使えると勝手に拡大解釈したわけです。受け手のクリエイティビティがリモート文化を拡張したわけです。

そういう、あらたに生まれる誤読を許容する度量をこれからのブランドは持ってなければいけないのでしょう。また、そういう受け手のクリエイティビティを誘発するようなコミュニケーションを展開していかなければならない。文化はひとりで作れません。文化は複数の人たちのあいだでつくられ、時間の変化とともに新たな解釈も加わっていくものです。ナラティブな会社は文化をつくっていける会社なのです。

文化はひとりでは作れない

「市場のなかの私」を語る時代から「社会のなかの私」を語る時代の変化は、ブランドの他者との関係性も変えていきます。かつては同業のライバルたちとの競争がブランド活動の中心にあったわけですが、同じ志を持つ異業種の人たちとの協業に変化していきます。

異業種との協業を進める時代にガチガチの経典よりも柔軟な文化を受け入れる企業の方が想定外のクリエイティブなアウトプットを生み出す可能性を秘めているのではないでしょうか?

世界最大級のマーケティング・コミュニケーションのプレミアイベント 「Advertising Week Asia2021」は、5月27日(木)からオンライン開催されます。そのビジョンは、「Making an Impact With Purpose Driven Marketing. – How We Can Redefine Business & Drive Social Changes.(パーパス・ドリブン・マーケティングでインパクトを:社会変革の推進とビジネスをいかに再定義できるか?)」。オンライン視聴の期限は6月25日(火)です。

Written by 嶋浩一郎

※DIGIDAY[日本版]は、Advertising Week Asia2021のメディアパートナーです。