TikTok(ティックトック)が若いユーザーの心を捉えているなかで、ウェルネスブランドが直面する課題が浮き彫りになってきた。とあるサプリブランドの商品が、TikTokを愛用する対象年齢以下の女の子たちによって、推奨量以上に摂取されていることがわかったのだ。そのため、即座に製品販売を中止せざるを得なかったという。
2020年2月最終週、10代のTikTok(ティックトック)ユーザーたちは、夢中になれる新商品を見つけた。サプリメント会社であるレイ・ウェルネスの「メタボリズム・ドロップス(Metabolism Drops)」だ。
このドロップは、以前はレイ・ウェルネスのD2C(Direct-to-consumer)サイトと米国内のターゲット(Target)の店舗で販売されていたが、TikTok上のダイエットしたい若い女性たちのあいだであっという間に一大ブームを起こした。1瓶たった14.99ドル(約1550円)という価格もその要因だった。この製品は、10代ではなく18歳以上の女性を対象にしたものであり、1日1粒だけなめることになっている。だが、レイ・ウェルネスがTikTokに投稿された動画を見て確認したところ、18歳以下の女の子たちが、推奨される量以上を摂っていることがわかった。オンラインで批判を受けたレイ・ウェルネスとターゲットは、ほかのダイエット用サプリメントとともに、その週のうちに製品販売を中止した。
フラット・タミー・ティー(Flat Tummy Tea)やシュガー・ベア・ヘア(Sugar Bear Hair)のような企業はそれぞれ、ダイエット文化や身体に有害な原材料をプロモーションしたとして、集中砲火を浴びたことがあった。レイ・ウェルネスの事例はさらに、ソーシャルメディアの時代、特にTikTokが若いユーザーの心を捉えているなかで、ウェルネスブランドが直面する課題を具体的に示している。TikTokは2019年に世界で15億ダウンロードを記録し、そのユーザーの多くはZ世代だ。
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「コントロールが難しくなる」
インフルエンサーマーケットプレイスのハートビート(Heartbeat)の創業者で最高経営責任者(CEO)を務めるブライアン・フリーマン氏はこう話す。「キム・カーダシアンのデトックスティーブームのように感じたが、キム・カーダシアンのような中心人物がはじめたことではなかった。この出来事は、TikTokがどのような作用をもたらすかを物語っており、興味深い点と、危険にもつながりうる側面を浮き彫りにしている。TikTokはブランドに大きな経済的機会をもたらす」。
「#RaeWellness」「#MetabolismDrops」「#RaeWellnessMetabolismDrops」のようなハッシュタグは、この2週間でTikTokから削除されている。#RaeWellnessのタグがついた動画は13万4000回、#Raeのタグがついた動画は1140万回視聴された(これらの動画がすべて、ブランドを特に取り上げたものではない)。ドロップを扱った動画には「#WeightLoss」「#LoseWeightChallenge」「#Diet」のようなハッシュタグも付いており、TikTokで見た人が大勢いるため、「夏のボディ」「体重減少」「製品の購入」が対応するキャプションについていることが多い。
マーケティング会社RQの共同会計責任者であるアレグラ・サルケ・ハシー氏は「健康関連の製品が口コミで広がってしまうと、コントロールするのは非常に難しくなる」という。「非常にコスト効率のよい価格で空腹を抑えられる、とてもシンプルな方法を推奨する製品があれば、若い女性は群がるだろう。さらに話を進めるとしたら、口コミで広がるとはどういうことか、消費者習慣をどのようにコントロールしたいのかを、ブランドはより良く理解しなければならないだろう」。
誤用の蔓延で販売停止に
TikTokで製品が口コミで広がったことを受け、ターゲットは3月1日にドロップを棚から撤去した。ターゲットの広報担当者は「レイ・ウェルネスの要請により、ターゲットは、レイ・ウェルネスのメタボリズム・ドロップスを自主的に下げた」と話した。
この広報担当者は、レイ・ウェルネスへのさらなる質問に言及し、筆者をレイ・ウェルネスの声明に誘導した。
声明の中でレイ・ウェルネスはこう述べている。「我々は、ダイエットについての話とともに、10代の少女がこの製品を誤用しており、ときには推奨される以上の量を服用しているという会話が発生していると気づきはじめて、心配になった……指示通りにメタボリズム・ドロップスを用いていればなんのリスクもないが、こうした誤用を受け、我々は先んじて、製品の販売を一時停止しようと決断した。そして、すぐにターゲットとともに行動し、店頭ならびにオンラインから製品を自発的に引き上げた」。
レイ・ウェルネスは現在、TikTokで活動しておらず、インスタグラムのようなほかのプラットフォーム上でインフルエンサーとともにサプリメントのマーケティングを行っているが、TikTokではこの特定の製品のプロモーションはしていなかった。それでも、TikTokのバイラルな性質によって、不用意に、また間違った消費者集団に製品を広めることになってしまった。
「雪玉効果のスピードが速い」
広告エージェンシーであるヤードNYC(Yard NYC)の共同創業者でCEOのルース・バーンスタイン氏は「TikTokではトレンドがすぐに取り上げられ、何度も繰り返される。雪玉効果のスピードが、ほかのプラットフォームで見るよりもずっと速く、10代の女の子たちは、それがTikTokからのものだと思うと、トレンドに飛びつく」と語る。
ドロップはまだ、ほかのカプセル類とともにレイ・ウェルネスのウェブサイトに掲載されているが、現時点ではどちらも購入できなくなっている。レイ・ウェルネスのウェブサイトではほかにも18種類のサプリメント製品が販売されている。ドロップが将来再び入手可能になるかどうか、また、この若いブランドの販売や今後のパートナーシップにどのような影響が及ぶかはわからない。
レイ・ウェルネスは2019年9月に誕生し、2020年1月にターゲットでの製品販売がはじまったが、昨年「不安解消剤」、具体的にはプロプラノロール(Propranolol)と呼ばれるβ遮断薬について副作用に言及しないままソーシャルメディア上で宣伝したとして、「ハーズ(Hers)」という製品が批難の的になった。同社は、薬剤の重大性を軽視したために、たちまちソーシャルメディアで反発を受け、結果、謝罪を出すことになった。レイ・ウェルネスはまた、自社が持つ複数のチャネルで公式な謝罪をしなければならない。
ここから前へ進むために
ここから前へ進むためにはいくつかの疑問があるが、そのひとつに、レイ・ウェルネスが今後D2Cやターゲットでのメタボリズム・ドロップスの販売をどのように監視して、10代の購入を防止するかがある。しかし、ウェルネスブランドの責任として、自社製品について消費者を教育し、続いてボディイメージについての会話をはじめ、健康や幸せであることが傍観者の頭に確実に残るようにしなくてはならない。
「口コミで広めたいと思うことと、実際にそうなったときにマイナスの影響を受けることは別の話だ。ブランドにできるひとつのことは、つながりを持つインフルエンサーやネットワークは慎重に選び、適切な年齢層が対象になっていることと、製品にメリットがあると伝える方法が操作されていないことを確かめることだ」と、バーンスタイン氏は述べた。
Katie Richards(原文 / 訳:ガリレオ)