世界一の広告出稿量を誇るプロクター&ギャンブル(P&G)の米国でのメディア・アカウント(2014年時点で26 億ドル、約3100 億円)はこの約十数年、広告ホールディングズ企業(以下ホールディングズ企業)世界3位のピュブリシス(Publicis)傘下のスターコム(SMG)がずっと盤石の座を守っていました。ところが2015年12月、ホールディングズ企業世界2位のオムニコム(Omnicom)系のOMGがこの米P&Gアカウントを奪取する「事件」が業界を揺るがしました。「ピュブリシスといえばP&G」と起想できる程の「業界常識」がひっくり返ったのです。
欧米では広告主がメディア(バイイング)のエージェンシーをおおよそ5年~10年に1度おきに「レビュー」と称し、入れ替えと効率化を図ってきました。クリエイティブ・エージェンシーを2~3年おきに見直しするリフレッシュ的なレビューに比べ、メディア・エージェンシーは広告主企業の設備投資的な「インフラ」を担っている事もあり、入れ替わりが頻繁では投資効率が悪く、緩やかだったのがこれまでの業界の理解。しかし、2015年は環境が一転し、ドラスティックなアカウント交代が次々に起こり、その象徴がP&Gのレビュー決断だったと言えます。