魅了されるバイヤーが増えている、Amazonの広告ビジネス:「そうだったのかという理解が広がっている」

先日のAmazonによる年に1度の株主への書簡で広告事業は取り上げられなかったが、このところのレポートや広告バイヤーたちによると、Amazonの広告収益は、スポンサープロダクト広告とヘッドライン検索を中心に、見えないところで密かに増え続けている。30億ドル(約3270億円)の広告ビジネスをベゾス氏が書簡の重点項目にしなかったのは、Amazonがそれだけ巨大だということだ。

それにAmazonは広告提供を強化してきた。商品を増やし、使いやすさを向上させている。なかでもヘッドライン検索広告が大きく成長しているのは、Googleと仕事をした経験があり、すでに検索ビジネスのエキスパートであるバイヤーが多いことから、うまい具合にバイヤーにとって魅力的なのだ。

膨れ上がる広告事業

ブランドの関心が高まった結果、Amazonの広告は価格が上昇している。マークル(Merkle)のデジタルマーケティングに関するレポートによると、CPCはスポンサープロダクト広告が前年比で65%、ヘッドライン検索広告が前年比で128%上がっている。この推計値にはバイヤーたちも同意見だ。

「Amazonが自ら構築していくのか、それともエージェンシーやブランド、あるいはサードパーティのツールの展開をAmazonが促進していくのかはわからない」と、デジタルマーケティングエージェンシーである360iのeコマース担当VP、ウィル・マルガリティス氏は語った。

Source: Merkle Q1 2018 digital marketing report

Source: Merkle Q1 2018 digital marketing report

2017年第4四半期、Amazonの決算報告の「その他」収益に従うなら、Amazonの広告ビジネスの収益は約17億ドル(約1850億円)ということになり、前四半期の11億2000万ドル(約1220億円)から増加している。調査会社eマーケター(eMarketer)によると、2018年、Amazonは広告ビジネス全体の収益が30億ドルを超える可能性がある。マークルのレポートによると、スポンサープロダクト広告は96%、ヘッドライン検索広告は90%、支出額が前年から増えている。

広告主たちの見方

Amazon株主への書簡において、CEOであるジェフ・ベゾス氏は、車両を走らせて日替わりセールを提供する「トレジャートラック(Treasure Truck)」の成功まで取り上げた一方で広告ビジネスに言及しなかったが、広告業界の側はAmazonが一番の関心事だ。テックの巨人であるAmazonの価値に関する、ブランドの考え方が大きく変化した。Amazonの広告は、小売り、レビューの監視、さらには供給のロジスティクスなどを含む、もっと大きなAmazon戦略と連動して実施したときに機能するのだ。

広告主たちの見方が「変化して、Amazonは卸売り先にとどまらないという理解、広告プラットフォームでもあるのだという認識が広がっている」と360iのマルガリティス氏。「Amazonに投じた額は、Facebook、Google、さらにはテレビに投じた額と連動するし、コンバージョンにさらに近い。そうだったのかという理解が広がっている」と、同氏は語った。

Source: eMarketer

Source: eMarketer

エージェンシーたちは熱心だ。WPPのCEOであるマーティン・ソレル氏は1月、2018年はAmazonの広告に、2017年の2億ドル(約218億円)を超える3億ドル(約327億円)を使うとCNBCに語った

オムニコム傘下のレゾリューション・メディア(Resolution Media)のプレジデントであるジョージ・マナス氏によると、マークルの数字は驚きではないという。もしかすると「少し控えめかもしれない。もっと多い可能性はある」と同氏は語った。

魅力的なAmazon広告

株主への書簡で、Amazonの広告事業に関する新しい統計はまったく明かされなかったが、ベゾス氏が披露したほかの数字から、Amazonの広告事業の成長に関する洞察が得られる。たとえば、Amazonが世界で販売した商品は半分以上がサードパーティのセラーからのもので、また、Amazon Primeの会員は現在1億人を超えている。前者は潜在的な広告主がさらにいるということだし、後者は顧客に関するさらに貴重な知見の存在を示唆するものだと、eマーケターの予測アナリスト、モニカ・ピアート氏は語る。

それに、FacebookとGoogleにおけるブランドセーフティーの状況や、政府によるデータのプライバシー規制を踏まえると、広告主にはAmazonがますます魅力的に見えてくる。

「Facebookのような会社だと、広告が体験を妨害するものになる恐れがあるのに対し、Amazonの広告は、まるで広告ではないかのように見える。顧客からすると『あれ、これを探していたんだけど、ほかの選択肢も表示してくれるのか』ということになる」と、eマーケターのピアート氏。

「ウォールドジャングル」

Facebook、Google、Amazonにはそれぞれ巨大なデータがある。しかし、コマースが主眼である点でAmazonはほかと違う。Googleは意図を把握し、Facebookはソーシャルがあり、Amazonは購入を求める。しかも、Amazonにはeコマースにとどまらない、はるかに大きなビジネスがある。

「FacebookやGoogleを説明するのに『ウォールドガーデン』という言葉が使われるが、Amazonはさながら『ウォールドジャングル』だ。それだけサービスが幅広いということ。プライムビデオ、日用品、決済、そしてウェブサービス。運営する多元的なビジネスが、さまざまな形で一人ひとりのミクロ経済になっている」と、レゾリューション・メディアのマナス氏は語る。

AmazonはプライムビデオやFire TVなどにさらに潜在的なインベントリー(在庫)があると、マナス氏は続けた。ピアート氏は、Amazon Echoとオーディオ広告の今後に注目していると語った。

そしてAmazonは、これが関係性のビジネスであることも理解しており、ニューヨーク市で広告に取り組む人員の採用を進めてきた。「データにとどまらず、関係性の価値を認識している。この業界が人を通じて動いていることがわかっている」と、マルガリティス氏は語った。

Kerry Flynn(原文 / 訳:ガリレオ)