FUTURE OF WORK

ロボット に精神衛生サポートを求める、燃え尽きた若者たち :「孤立し、声を奪われた」

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アドテク企業のクライアントマネージャーを務めるローラ・ケイ・アルブス氏は、27歳にしてすでにセラピストにかかっている。パンデミックとリモートワーク継続によるストレス増大が理由だ。

「対面でつながることができないと、チーム体制に亀裂が生じる。コミュニケーションがバーチャルに限られたせいで、我々独自のカルチャーが薄れてしまった。隔離生活によって全員が疲弊しつつある――きつい状況だ」とアルブス氏は話す。

アルブス氏は、バーチャルなメンタルヘルスサービスを利用し始めた。自身が勤める会社ビデオアンプ(VideoAmp)が提供するもので、コーチング、セラピー、瞑想その他のリソースからなる。「私は自分に合うセラピストに出会い、3回の無料セッションを終えた今も、引き続き彼女のセラピーを受けている」とアルブス氏はいう。

この1年は、キャリアをスタートさせたばかりの人々にとっても厳しい1年となった。昨年、マービン・ロカ・ジュニア氏は大学を卒業し、小売分野での仕事を終えてメディア業界のキャリアに乗り出すことを楽しみにしていた。しかし、パンデミックが広がるにつれ、彼の楽観はしぼんでいった。

「自分の成し遂げたことを祝えない状況は自尊心を低下させる。自分が孤立し、声を発する場がないように感じた。しかし、この状況に置かれているのが自分ひとりではないことは慰めになった。ひとりでないと思うと力が湧くし、その力を生かす方法を見つける必要があった」。

その方法のひとつがAI(人工知能)を用いたテクノロジー、すなわちボットを使って燃え尽きに対処するというものだ。

ロボットに悩みを打ち明けたい

オラクル(Oracle)が先ごろ公開した報告書によると、調査対象となったZ世代の労働者960人のうち90%が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が自身のメンタルヘルスに悪影響を及ぼしていると回答している。しかし、慰めを求めて人間に頼るのではなく、彼らが悩みを打ち明けたい相手はロボットだ。

実際、Z世代の労働者は、メンタルヘルスのサポートを人間よりロボットに頼るとの回答がほかの年齢層より105%多く、また同じ調査によると、Z世代の93%がより技術的なサポートソリューションを職場に求めているという。

この統計結果はロカ氏にとって驚きではない。現在は従業員エンゲージメント企業のタイニーパルス(TINYpulse)でPRおよびメディア担当アソシエイトを務めるロカ氏には、セラピーに「通う」友人がいるが、実際に彼らが話す相手はデバイス上のAIであり、この匿名性が快適なのだという。

しかしビデオアンプのアルブス氏は、理由はそれだけではないと見ている。「みな自分を弱者だと思われたくないので、上司に相談することを拒む。その点、テクノロジーを用いたメンタルヘルスサポートは安全だ。人間相手と違って批判されるおそれがない」。

テクノロジー依存に対する懸念

そしてそれこそが本当の問題だと、アルマズ・オヒニー氏は指摘する。30代前半のフリーランスのコピーライターで、広告エージェンシーでの勤務経験をもつオヒニー氏は、テクノロジーに依存しすぎると、表面下に潜むより深刻な職場文化の問題が覆い隠されてしまうのではないかと懸念する。

「人々が仕事の悩みを相談できる、信頼できる相手を見つけられる場所を企業に求めるよりも、AIのサポートを求めていることが気にかかる」と、オヒニー氏はいう。「人々が自分自身を正直に、弱い部分もさらけ出して表現できると感じられる世界に我々は向かうべきだ」。

オヒニー氏の経験によると、特にエージェンシーの場合、いわゆるきちんとした職場というものは、「同質」のリーダー集団が現状維持に心をくだき、従業員が職場での不満を打ち明けて波風を立てる余地をほとんど残していない環境だという。オヒニー氏はこのことを、インポスター症候群(自分は他人からそう見えるほど有能ではないと感じる心理)や自尊心の低さといった問題に対処する方法として、若い世代が技術的ソリューションに惹かれる傾向に関連があると見ている。

「職場や一部の体制には、しばしば多くの有害な点があるが、それでも結局のところ我々に生活の糧を与えてくれる存在なので、問題のある行動に声を上げることは困難な場合がある」として、オヒニー氏は不健全な文化がジェンダーや人種間の賃金格差を温存していると非難し、人々は声を上げることへの報復がリスクに見合わないと感じていると話す。

「私は不正に対して黙らない人間だ。実際そのために私は伝統的な職場から押し出されることになった」とオヒニー氏は述べた。

両方を組み合わせたアプローチ

当然ながら、メンタルヘルスのサポート体制は企業によって大きく異なる。多くのエージェンシーでは、パンデミックの発生以降だけでなく、ここ数年にわたり従業員のメンタルサポートのニーズ増大に応えようと努力してきた。その結果、現在では従業員がパーソナルカウンセリングやアプリによるソリューションを幅広く利用できるようになっている。

しかし一般的には、人々が適切にメンタルヘルス問題に取り組むために、AIと人間を組み合わせたサポートにアクセスできるべきだと考えられている。エージェンシーのグレイ(Grey)ロンドンで最高人材活用責任者(CPO)を務めるジャッキー・キング氏は、AIが訓練を受けたセラピストに取って代わることに疑問を呈し、両方を組み合わせたアプローチが望ましいと考えるひとりだ。

「企業向けにメンタルヘルスアプリを提供することは支持するが、それしかないというのはいけない」とキング氏は述べた。

[原文:‘Isolated and voiceless’: Burnt out young workers are turning to tech for mental health support

MARY LOU COSTA(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:長田真)