航空会社のジェットブルーは、アウトフロントメディア(Outfront Media)とともにブロードウェイ1500番へデジタルビルボードを設置した。このアンドロイドベースのビルボードは、フライトスケジュールとGoogleマップのAPIを利用して、さまざまな旅行先へどれくらい短時間で到着できるかを示す。
航空会社のジェットブルーは、新しいクレジットカードのプロモーションにあたり、アウトフロントメディア(Outfront Media)とともにニューヨークのブロードウェイ1500番へデジタルビルボードを設置した。このアンドロイドベースのビルボードは、ジェットブルーのフライトスケジュールとGoogleマップのAPIを利用して、タイムズスクエアの歩行者に、さまざまな旅行先へどれくらい短時間で到着できるかを示す。JFK空港まで38分で到着し、そこから3時間37分でプエルトリコのサンフアンに辿りつく、といった具合だ。
アウトフロントメディアは、アメリカにおける最大規模の屋外広告メディア所有企業のひとつ。そして、ジェットブルーとのこのプロジェクトは、彼らがまさに屋外広告に対して描いている将来を体現する形となった。デジタルであり、スマートであり、かつターゲット化されている。エージェンシー、マグナ・グローバル(Magna Global)によると、去年12月の段階で、アメリカにおける屋外広告は前年比で3%増加し、76億ドル(約8400億円)となった。このうちデジタルセールスだけに注目すると、前年比は14%増となる。
しかし、デジタル企業を構築するうえで考えると、デジタルの広告ビルボードを提供することは、小規模な一部に過ぎないとアウトフロントメディアのエグゼクティブバイスプレジデント、アンディ・シリウバス氏は言う。「デジタル企業を所有するというのは、デジタルインフラを通してメディアを売らないといけないことを意味する。約2年前にデジタルプランをまとめたが、いまだ進化途中だ。我々のデジタルシフトは終わらない」と、彼は付け加えた。
Advertisement
屋外広告のデジタルシフト
デジタルシフトすることは在庫システム、測定システム、そしてメディアバイイングのシステムを構築することを意味する。そのデジタルインフラを作るためにアウトフロントメディアは2年前に、ジェームズ・プライス氏をデータ分析とプログラマティック製品のシニアバイスプレジデントとして迎えた。彼を雇った目的は、データ管理プラットフォーム(DMP)とプログラマティック機能を開発することだ。今日、アウトフロントはテック分野で79人のスタッフを抱えている(それにプラスして、契約従業員も数を上下させながら雇っている)。彼らはメディアプランニング、バイイングのシステムを構築し、広告主が各自でアウトフロントメディアの在庫を購入可能にしている。これにはデジタルビルボードや静的ビルボード、バス広告、地下鉄広告も含まれる。
たとえば、もしもコカ・コーラが新製品をニューヨークとボストンに住む、ミレニアル世代の女性にターゲットを絞って宣伝したいとする。するとアウトフロントのシステムにログインして、このふたつの都市で利用可能な在庫をすべて見ることができるのだ。ニューヨークには4つのデジタル、ボストンには5つの非デジタルバス広告といった具合に。アウトフロントメディアはまた、ジオパス(Geopath)とも協働している。ジオパスは屋外スペースにおけるニールセンのような測定サービスを行っている企業だ。それによって、どのようなタイプの人がデジタルボードを毎日見ているか、またCPMをベースにした値段設定についての情報を広告主に提供している。広告主は屋外広告の効果をTVコマーシャルと比べることができる(従来、屋外広告は時間と場所に応じて、フラットな料金で取引され、CPMを扱うのは珍しい)。
「ひとつのダッシュボード上で広告主がすべてのメディアプランニングを行えるエンドツーエンドのソリューションだ。そしていま、テレビCMを買うべきか、ビルボード広告を買うべきか、より明確な情報を手に入れることができている」と、シリウバス氏は説明する。
今後1年半で700カ所に拡大
アウトフロントメディアの収益レポートによると、今年の第1四半期におけるオーガニックな収益は1.4%下がり、2億2400万ドル(約250億円)となった。しかし、ローカルとデジタルビルボードにおける収益は増加を見せていると、CFOのドナルド・R・シャーシアン氏は収支報告で語っている。
この期間にアウトフロントは、アメリカに17、カナダには6つのデジタルボードを作った。シリウバス氏によると、今後18カ月でボストンに700のデジタルビルボードを追加し、デジタルボードのハードウェアは継続して製造するという。
プログラマティックはアウトフロントにとって、デジタルシフトのもうひとつの柱となっている。ブランドと直接取引をする段階にまでは至っていないが、ヴィデリ(Videri)といったアドテクベンダーとプログラマティックギャランティード、そしてオープンエクスチェンジ取引についてパートナーシップを組んでいると、プライス氏は言った。「単純な例としては、雨の日にはこのブランドにデジタルボードAを提供して、もし雨が降らなければ、クリエイティブBを提供するといったことができるだろう」。
セールスへの教育も実施
アメリカだけで700人を超えるセールススタッフ全員が、会社の技術的な変革について来させるためには、「デジタルの良い面を理解するための基盤」を構築することが重要だと、シリウバス氏は考える。また、Facebook、Google、スナップが、どうやってメディアにセールスをしているかから学ぶべきだという。
セールススタッフへのトレーニングは、いくつかのレベルで構成されている。しかし、フォーカスはモバイルにある。デジタルのトレンドを取り上げる毎月のワークショップ、デジタルと屋外広告を統合する方法についてのセミナー、そして「アウトフロントアカデミー」と呼ばれるプログラムだ。このプログラムではゲストのスピーカーを招いて、営業スタッフが学ぶことができる。位置ベースのアドテク企業xAdやほかのベンダーとコラボレーションし、モバイルの検定テストも提供している。
Yuyu Chen(原文 / 訳:塚本 紺)