「エージェンシー業界の女性は、 #MeToo 運動で損をした」 : ある男性クリエイティブの告白:

#MeToo 運動が始まって以来、広告業界は、実際は何も変わっていないにも関わらずエージェンシー文化が変化したと喧伝する方法を探してきた

少なくともこれは、ある男性クリエイティブディレクターの見方だが、この人物は、業界におけるあからさまな性差別は減少しているものの問題はまだ残っていると話す。さらに、ある領域においては、男性が女性を指導することを拒否するなど、#MeToo運動が別の種類の問題を引き起こしているという。

匿名性を保証する代わりに本音を語ってもらう「告白」シリーズの最新記事で、このクリエイティブディレクターは、自身の行動の責任を負う必要がある男性は、まだたくさんいると思うと語った。なお、インタビューは内容を明瞭にするため若干の編集を加えている。

――#MeToo に対する男性の反応を見て、驚いたことは何か?

業界の男性は仲間内で、#MeToo 運動への恐怖を口にしているが、これがいかに馬鹿げたものであるかも話している。これは、学び、理解し、そしておそらくは成長する好機だったように思う。だが、若い世代はそうでもないが、数世代前の男性たちは、集まるたびにいま起こっていることについて不満を言っている。彼らには説明責任という感覚がなく、馬鹿馬鹿しいほど極端な行為に走って、もう女性には指導はしてやらないなどという。これは私が気に入っている話のひとつだ。メンターに手を挙げる対価のようなものは、誰かを指導するために、誰かの肩に振れたり、そばで心地よく話すことなのだろうか?

――つまり、女性が損していると?

そう。自分の行動を責められたくない男性は、恐怖感だけでなく、罰を与えてやろうという気持ちも少しもっている。指導を拒否する行為の背後には卑怯な意図があり、その先にはもっと厄介な結末がある。「女性が我々男性を拒否するなら、その罰として、若い男性社員に与えているのと同じ教育や学習の機会を与えない」という発想だ。

――女性が損をしているのは指導制度だけ?

一般的に女性は、権力を持つ男性には太刀打ちできない。クリエイティブディレクターやエグゼクティブクリエイティブディレクターは、時間に追われ、簡単な説明書を渡され、それを実現するよう言われるが、考えが一番合う相手は、必ずしももっとも面白いクリエイティブな人々ではなく、時間があってコミュニケーションしやすい人、同じような人生経験を持つ人だ。若い女性が上を目指すとき、超えるべき山がそこにはすでに存在するが、上司が男性で、抵抗感を体内に組み込んでいるなら、不公平さは2倍に見える。

――要するに、業界にいる男性は、変化にはまったく関心はない?

1年前、一瞬だが、立ち止まった瞬間があったと思う。ほんの少しのあいだ、男性が実際に口を閉ざし、何もかもが一斉に沈静化したときがあった。そのとき私は、たぶん、何か新しいことがはじまると思った。(たとえば)見た目が平均よりうえの魅力的な会計係の女性がいるとしよう。彼女が部屋から出て行っても、同室の男性が振り返って私を見て何か扇情的な発言をして、私がそれに同意する意味で親指を立てて見せることを彼は期待しないだろう。私はそういう類いのことを受け入れたことは一度もない。本当に正直に話すが、私はいままで、「ゾッとする」と思う状況下でも、それを口に出したことはない。クライアントの多くもそうだ。

――クライアントが何か不適切な発言をしたらどう対応する?

非常に侮辱的な発言でない限り、ビジネスを失うかもしれないという前提があるので、彼らを非難することはないだろう。女性が部屋を出ていったあとで、彼女をもの扱いしたとして事を荒立てたり、クライアントを攻撃したり、説明を求めて彼らに不快な思いをさせたりしたら、彼らはもう私とは仕事をしたくないと思うだろう――私はとても難しい立場に立たされることになるが、反論したことはない。

――そんなことをするクライアントは多い?

仕事のたびに1人か2人は絶対いる。さりげない言葉のことが多いが。

――反対意見を言いたいが、それを言うのは難しい?

本当に複雑だ。こういうことを成り行き任せにして、誰かをいい気分にさせるのは嫌なので、ある程度の責任は感じるが、同時に気まずい立場にもおかれてしまう。これは、女性たちが経験していることの比ではないだろう。だが、興味深いのは、男性の無作法な振る舞いを本当に不快に感じている男性の小集団がいるのではないか、という点だ。ただし、その割合は少ないだろう。

――今後望むことは?

ほかの男性に対しても誰に対してもだが、そうした無作法者が困る姿を見たいという意見を、公的な場でも私的な場でも言うことは一般的ではない。正直なところ、私はそうしている。私は彼らが職を失えばいいと思っているし、彼らに責任を取らせたい。彼らには報いを受ける瞬間が必要だが、いまはそれがない。

―― #MeToo 運動後にエージェンシーでの男性たちの行動は実際に変わったか?

良い方向への変化があったことは確かだ。その多くのきっかけを作ったのは女性たちだった。男性たちは職場での行動を正しはじめているが、必要なレベルにはまだ達していない。プラス方向への勢いはある。復讐を夢想する人間のように聞こえると困るが、愚劣なことをたくさんする人間は大勢いて、そのなかには権力を持つ人も多い。#MeToo 運動が広まらないのは、家父長制社会の闇の力があることの証だと思う。運動は十分に広がっていない。変化を起こせるほど十分には。悪さをしている連中がこの問題と正面から向き合う必要性を感じていないことを、私は残念に思う。

Kristina Monllos(原文 / 訳:ガリレオ)