記事のポイント キャンバは、AI技術の統合と開発を進めており、新しいAIプロダクトを2023年初めに発表した。同社の戦略は、AIの技術的側面よりもユーザーにもたらす実際の利点に焦点を当てることにある。 キャンバの調査によ […]
- キャンバは、AI技術の統合と開発を進めており、新しいAIプロダクトを2023年初めに発表した。同社の戦略は、AIの技術的側面よりもユーザーにもたらす実際の利点に焦点を当てることにある。
- キャンバの調査によると、マーケティングとクリエイティブ部門のリーダーはAIを重要と考えているが、多くのユーザーはAIツールが多すぎると感じている。
- 世界中にハブオフィスを持つキャンバは今後各国での投資を強化し、AI活用に取り組む社内エージェンシーを国際的な組織にすることを目指す。
キャンバ(Canva)は2019年以来、AI技術の開発と統合を行い、マーケティング会社やクリエイティブ会社のユーザー向けに独自ツールを展開するとともに、GoogleやオープンAI(OpenAI)の技術の統合を進めてきた。
それでも、2013年に設立されたオーストラリアのデザインプラットフォームであるキャンバは、AIツールの開発を続ける一方で、マーケティング活動でどの程度AIをアピールすべきかを、いまだに模索し続けている。
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実用的なAI提案をいかに実現するか
キャンバは2023年初め、ブランドデザイン分野向けに複数のAI製品を発表した。「マジック・リサイズ(Magic Resize)」や「マジック・リブレイス(Magic Replace)」のような、画像のサイズ変更や画像への追加を簡単に行えるツールを含め、キャンペーンでこれらのツールを売りにしてきた、とキャンバのグローバルブランドおよびクリエイティブ部門責任者、ナタリー・シュワルツ氏は語る。
シュワルツ氏は、「我々は一般的に、AIを魔法のように表現してきた」と言い、キャンバがマーケティング活動におけるAIツールの位置づけをどのように説明しているかについて述べた。「我々は、エンドユーザーにとっての利点を示すだけでなく、AIの活用をどの程度アピールするかについて、実験してみるつもりだ」。
ツールがAIを使用していることよりも、ツールができることに焦点を当てることで、キャンバは、現在のAIのハイプサイクルに投資している消費者以外にも広くアピールすることを目指している。また、個人的な使用や中小企業での使用だけでなく、大手のマーケティング組織にもアピールしたいと考えている。
「人によっては、『この製品にAIが搭載されていたら、あるいはAIで動いていたら、私には使えない』とか、『私には手の届かないものだ』というハードルがまだあるかもしれない」とシュワルツ氏は言う。「我々は今日まで、いかにして中核となる利点を示すかに注力してきた。これがその方法だとか、これが背景にある(技術)とかよりも、あなたのデザインで何をする必要があるか、そしてそれをどのように実現するのかということを前面に出している」。
根強いAIへの不安感
キャンバの社内チームは、ブランドデザイナー、映像作家、カメラマン、モーションデザイナー、コピーライターを100人以上擁し、マーケティングにおけるAI活用とのバランスを管理している。マーケター向けの仕事は、他のオーディエンス向けの仕事よりも内容が多岐におよぶかもしれない。
キャンバは9月第3週、4000人以上のマーケティングおよびクリエイターを対象にジェネレーティブAIについてどのように感じているかを調査した新しいデータを発表したが、それによると、マーケティングおよびクリエイティブ部門のリーダーの75%が、AIをすでに「ツールキットの不可欠な一部」と考えていることがわかった。
「AIが話題になっており、我々の最近のリポートで、多くのマーケターがAIの採用に積極的であることがわかったいま、我々はAIについてより明確に話すことを考えている」とシュワルツ氏は言う。「我々のサービスにどのようなテクノロジーが使われているのか、どの程度はっきりさせるかはオーディエンス次第だ」。
とはいえ、この調査では、69%がAIツールが多すぎると感じ、65%が「学習曲線に圧倒される」と感じており、また、「顧客データ(76%)、企業データ(75%)、個人データ(74%)」をめぐるデータプライバシーへの懸念が根強いこともわかっている。
AIの利用に関して、潜在的な顧客の不安を解消するのは難しい。ブランドコンサルタントであり、メタフォース(Metaforce)の共同創設者であるアレン・アダムソン氏は、「AIと見なされれば、不安が高まるかもしれない」と述べる。同氏は、「より簡単に、より速く、より良く」することに焦点を当てたメッセージは、不安を増やすことなく消費者にアピールできると付け加える。
インハウスチームをグローバルで成長させる
最新のマーケティング活動で、キャンバはデジタル広告に焦点を当て、従来型のTV広告をミックスから外した。キャンバは具体的な広告費データを共有していないため、同社がいくら支出しているかは不明だ。
パスマティック(Pathmatics)からの有料ソーシャルデータを含むビビックス(Vivvix)のデータによると、2023年の前半6カ月間を通して、キャンバは広告に2750万ドル(約40億5800万円)を費やしている。同じデータから、キャンバが2022年に1億ドル(約147億5800万円)の広告費を支出したことがわかっている。
シュワルツ氏は、キャンバは世界中にハブオフィスを作り、さまざまな国のマーケティングに投資することで、社内チームを国際的に成長させることにも注力していると説明する。社内チームが日々の広告、電子メールマーケティング、パフォーマンスマーケティング、大手ブランドのキャンペーンを担当する一方で、キャンバはメディアバイイングでは体験型のエージェンシーやOMDと協力している。
キャンバのウェブサイトによると、同社はReddit(レディト)やソニー・ミュージック(Sony Music)などのブランドと仕事をしており、その製品が「職場の効率性、創造性、生産性を高める」ために使用できることを紹介することに重点を置いている、とシュワルツ氏は述べている。
[原文:Canva’s in-house agency will ‘experiment’ with what it says about the AI used in its advertising]
Kristina Monllos(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:分島翔平)