リンジー・カウフマン氏が代理店のハバス(Havas)で働いていた2014年、オフィスの大規模な改装が行われた。パーティションで仕切られていたスペースが取り壊され、いま流行のオープンフロア型オフィスに変わったのだ。そして、このときから彼女の仕事に集中できない日々がはじまった。
後に退職してフリーランスとなったカウフマン氏は、「そのオフィスが嫌いだった」と語る(ただし、オープンフロアになったことと同氏の退職には何の関係もないそうだ)。自らをADHD(注意欠陥・多動性障害)だというクリエイターの彼女にとって、オフィスの椅子に座り続けるだけでも大変なことだったという。ましてや、仕事をしている彼女の席に同僚たちがやって来たりすると、仕事を終わらせることなど不可能だった。
オープンオフィスは最近流行りの職場環境であり、創造性と協調性を育むことができると考えられている。また、企業にとっては、スペースを最大限に利用できるため、パーティション型と比べてオフィスにかかるコストが少ない。だが、オープンオフィスは、従業員全員にとって最適なオフィス環境ではないことを理解すべきだろう。
リンジー・カウフマン氏が代理店のハバス(Havas)で働いていた2014年、オフィスの大規模な改装が行われた。パーティションで仕切られていたスペースが取り壊され、いま流行のオープンフロア型オフィスに変わったのだ。そして、このときから彼女の仕事に集中できない日々がはじまった。
後に退職してフリーランスとなったカウフマン氏は、「そのオフィスが嫌いだった」と語る(ただし、オープンフロアになったことと同氏の退職には何の関係もないそうだ)。自らをADHD(注意欠陥・多動性障害)だというクリエイターの彼女にとって、オフィスの椅子に座り続けるだけでも大変なことだったという。ましてや、仕事をしている彼女の席に同僚たちがやって来たりすると、仕事を終わらせることなど不可能だった。
オープンオフィスは最近流行りの職場環境であり、創造性と協調性を育むことができると考えられている。また、企業にとっては、スペースを最大限に利用できるため、パーティション型と比べてオフィスにかかるコストが少ない。だが、オープンオフィスは、従業員全員にとって最適なオフィス環境ではないことを理解すべきだろう。
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ブルックリンにオフィスを構える代理店のヒュージ(Huge)は、現在、大規模な改装を行っているところだが、オープンオフィスの限界を認識している。同社はオープンオフィスを今後も維持するつもりだが、生産性が下がる可能性に対する施策を打った。カウフマン氏のように、自分の空間が必要な従業員には、ミーティングルームやラウンジを設けて、逃避できる「安全な空間」を提供する予定だとコミュニケーション担当ディレクターのサム・ワトソン氏はいう。
反対に、代理店の360iは、オープンオフィスにした方が高い生産性を得られる従業員たちの存在に気がついた。それはエンジニアだ。もちろん彼らにもプライバシーやひとりになれる環境が必要なことはわかっているが、同社は「テックラボ(tech lab)」というスペースを設け、彼らがある程度のプライバシーを保ちながらもオフィスの一員と感じられるようにした。また、座って仕事ができる小さな部屋も用意している。
一方、出版社のアシェットリーブル(Hachette Livre)は、役員室を廃止したものの、パーティションで仕切られたオフィスは維持している。書籍の編集ではひとりになることが求められるからだ。
オープンオフィスとプライバシー
オープンフロア型オフィスという考え方は、決して新しいものではない。このコンセプトが初めて登場したのは、コミュニケーションの質が高まるという報告がドイツでなされた1950年代にまでさかのぼる。そして、一部のエージェンシーが早くからこの流れに飛びついた。
1999年には、TBWA/Chiat/Dayの創業者ジェイ・シャイアット氏が、デスクやパーティションを取り払い、従業員が社内のどのような場所でも働けるようにしたと「ワイアード(WIRED)」が報じている。これは究極のオープンフロア型オフィスだった。
だが、「ザ・ニューヨーカー(The New Yorker)」の記事にもあるように、オープンオフィスは実際のところ、従業員の満足度を低下させ、どちらかといえば混乱した非生産的な職場環境を生み出している。
ある代理店の従業員は自社のオープンオフィスが気に入らないと語っている。隠れる場所がないことがひとつの理由だ。「私が(オフィスに)いつ来ていつ出るのかを誰もが知っている。それに、『人と直接あって話すこと』がすべてである業界では、自分がそこにいると思われるようにしなければならないという理由だけで、長時間働くことを余儀なくされるのだ」とこの従業員はいう。以前はパーティション付きのオフィスにいたため、こうした問題はほとんどなく、ひとりの空間で作業に集中する時間もあったそうだ。
生産性が上がらない
複数の調査結果が繰り返し示しているように、物理的なプライバシーと心理的な健康状態は関係している。そして、オープンオフィスにいる人たちはクールでリラックスした職場環境にいると感じているかもしれないが、実際には、オープンフロア型オフィスは生産性を損ない、多くの従業員が自分の周りの環境をコントロールできないと思ってしまうのだ。また、オープンオフィスであることでオフィス内での病気が増えることもわかっている。
カウフマン氏にとって、状況は悪化している。フリーランスになって以来、彼女は複数の代理店で仕事をしているが、そのどれもがオープンオフィスなのだ。この問題はカウフマン氏にとって大きなテーマとなっており、同氏はこのテーマについて至る所で執筆をし、マーケティングカンファレンスで講演を行う予定もある。
「もちろん、共同作業を重視する考えも理解できる。しかし、部署を超えた会議などの交わりはオープンスペースで、個人の仕事はパーティションで区切られた個々のスペース行えばよい。人間は、そもそもこのようなオープンな環境で働くようにプログラミングされていないのだから」と同氏は、「クリエイティブなオフィス」がもつ弊害に対して問題提起している。
Shareen Pathak(原文 / 訳:ガリレオ)
Photo from 米DIGIDAY