2015年9月28日から10月2日にかけて、ニューヨークで催された広告業界の最大イベント「Advertising Week」。英の最大手エージェンシー、WPPの最高経営責任者マーチン・ソレル氏は、同イベントにおける対談のなかで、「現在の広告には『従来の広告』以上のものが含まれる。これにはデータ、視覚化や、ヘルスケア情報なども含まれる」と、言及した。
また、「我々はブランディングについて、新たな概念を見つけなければならない。そうすることで、『クリエイティビティ』は広告代理店のクリエイティブ部門や、クリエイティブディレクターだけのものという考え方を改めるのだ。我々の利益の75%は、舞台の主役が気づかないところで創造されていることを自覚しなければいけない」と、同氏は話す。
ソレル氏は、コンサル企業メディアリンクの会長兼最高経営責任者マイケル・カッサン氏との30分ほどの対話において、多くのメディア関連のトピックスについて意見を交わした。コムスコア(comScore:米調査企業)のレントラック(Rentrak:エンターテイメント系調査企業)の買収、人材がいまだに大きな差別化要因であること、GoogleとFacebookがまるでテクノロジー企業や広告ブロック企業などのように振舞っていることについてだ。本記事では、その一部始終を紹介する。
2015年9月28日から10月2日にかけて、ニューヨークで催された広告業界の最大イベント「Advertising Week」。英の最大手エージェンシー、WPPの最高経営責任者マーチン・ソレル氏は、同イベントにおける対談のなかで、「現在の広告には『従来の広告』以上のものが含まれる。これにはデータ、視覚化や、ヘルスケア情報なども含まれる」と、言及した。
また、「我々はブランディングについて、新たな概念を見つけなければならない。そうすることで、『クリエイティビティ』は広告代理店のクリエイティブ部門や、クリエイティブディレクターだけのものという考え方を改めるのだ。我々の利益の75%は、舞台の主役が気づかないところで創造されていることを自覚しなければいけない」と、同氏は話す。
ソレル氏は、コンサル企業メディアリンクの会長兼最高経営責任者マイケル・カッサン氏との30分ほどの対話において、多くのメディア関連のトピックスについて意見を交わした。コムスコア(comScore:米調査企業)のレントラック(Rentrak:エンターテイメント系調査企業)の買収、人材がいまだに大きな差別化要因であること、GoogleとFacebookがまるでテクノロジー企業や広告ブロック企業などのように振舞っていることについてだ。本記事では、その一部始終を紹介する。
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調査企業の独占状態を許してはいけない
広告代理店が多数存在することで知られるニューヨーク市マンハッタンの一角、マディソン街は、2つ調査企業コムスコアとレントラックの合併を長い間待ち望んでいた。ニールセン(Nielsen:米調査会社)の独占状況を解消するためだ。そのため、昨年からWPPは、コムスコアとレントラックの少数株主として合併を勧めていたという。ソレル氏は調査分野について「長年注目してきた分野だ」と認識しており、WPPもこの2つの企業への投資は、ニールセンに対抗する存在を作り出す良い機会だと考えている。
「私は巨額の投資金を企業につぎ込むことはない。価値が高い企業には特にだ。しかし、この2つの企業は、我々にとって、とても興味のある企業だ」と、同氏は語る。「私たちは株主となって、この2つの企業が合併するよう促した。これは業界が望んでいたことでもある」。
人材へのプレッシャーは計り知れない
ソレル氏は、良い人材を獲得することについて、「楽観的ではいられない」と、人材確保に対するプレッシャーを常に感じるという。
Talent is, and will continue to be, the key initial differentiator between agencies. #SirMartinSorrell #AWXII pic.twitter.com/gPJ0eMH01X
— OgilvyOneNYC (@OgilvyOneNYC) 2015, 9月 30
素晴らしい人材は、今後も広告代理店の間での差別化要因となる。
#SirMartinSorrell#AWXII
— OgilvyOneNYC (@OgilvyOneNYC) 2015年9月30日
「自分がある代理店を経営しているとしよう。そのうえで広告業界の縮図を見てみれば、図の片方にはGoogleやFacebookなどの問題児がいて、みんなに好かれるAirBnbやUberもいる。反対側には3G Capital(ブラジルの投資会社)のような、毎年予算を入念に管理する堅実な企業がある。このような両者の真ん中に自分はいて、必死に経営をしなければならないプレッシャーは計り知れないだろう。人材の確保は広告代理店の間での重要な差別化要因であり、今後もそうであり続ける」
巨大技術企業から得たデータは信用するな
ソレル氏は、オラクル(Oracle)やセールスフォース(Salesforce)などのソフトウェア企業や、アクセンチュア(Accenture)、デロイト(Deloitte)やIBMなどのコンサル企業が競合であることを認め、GoogleやFacebookを「友を装う敵」だと、堂々と言い放った。
「彼らは技術企業を装っているが、心はメディア企業だ。これらの企業は、在庫を収益化しようとしている。だから、誰かが『Googleはデータ調査もしてくれる』とアドバイズしてきたら、私は『もう一度考えろ』と言ってやる。なぜかって、Googleは我々と同じ試合のプレイヤーだからだ。私はルパート・マードックやジェームズ・マードックらには深い尊敬をしているが、彼らに自分のメディア計画やメディア資産を確認してくれとは聞かないだろう。試合中にプレイヤーと審判に同時になることはできないし、理解しあうこともできないからだ。それをどうして、同じプレイヤーであるGoogleやFacebookに頼もうといえるのか? このような環境では、審判的立場としての第三者組織の力は大きい。販売効果を知りたいと思うなら、Google検索だけで明らかに効率良くデータを得られだろう。
アドブロックはデジタルビデオレコーダーと一緒だ
広告業界の人間にはアドブロックが、業界にどのような影響を及ぼすか悩んでいる者がいるかもしれない。しかし、米Digidayがソレル氏に質問したところ、広告ブロックを録画機器(DVR)になぞらえた答えが返ってきた。
「iOSやAndroidで行っていることの90%以上はアプリで行っていることだから、広告には影響されないはずだ。当時みんなが心配していた録画機器(DVR)みたいなものだ。実際に誰がどの機能を使用しているか数字を見てみると、とても限定的なものになっている。脅威となり得るのは、忘れてはいけないが」。
Tanya Dua(原文 / 訳:小嶋太一郎)
photo by MK Feeney