WeWork(ウィーワーク)は3月、コンテンツマーケティング企業のコンダクター(Conductor)を未公開の額で買収した。いまやWeWorkは、世界最大規模のシェアオフィス運営企業であるだけでなく、コンテンツ・マーケティングのサービス提供にも取り組んでいる。
WeWork(ウィーワーク)は世界最大規模のシェアオフィス運営企業であるだけでなく、コンテンツ・マーケティングのサービス提供にも取り組んでいる。
WeWorkは3月、コンテンツマーケティング企業のコンダクター(Conductor)を未公開の額で買収した。昨年度に実施された大型買収のひとつに数えられている。コンダクターの業務は、Google、YouTube、Pinterest(ピンタレスト)や他の検索エンジン経由で人々が何を検索しているのかを分析し、企業がどのような質問に答えることができ、どうやって自分たちをマーケティングすれば良いかを見極める助けを提供することだ。またマーケティングに必要な人材や他のリソースを提供するということも行っている。
シティーバンク(Citibank)、セールスフォース(Salesforce)、そしてWeWork自身といった、大手のクライアントをコンダクターはすでに抱えている。ビジネス拡大、新規オフィスオープン、エンジニア雇用、新規顧客獲得のための資金といったリソースをWeWorkと共有している。コンダクターの2018年第二四半期は12年に及ぶ歴史のなかで、もっとも良い成績を残したものであり、新ビジネス部門は前年比で130%の成長を見せ、275人のチームにさらに50人以上のスタッフを追加したと述べた。
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「WeWorkはミッションとビジョンをスケール化させ、可視化させるのに良いプラットフォームだと感じた。誰も知らないミッションを持っていても仕方がない。広く知られるようにできれば、それは素晴らしい」と、コンダクターのCEOであるセス・ベズマートニック氏は言う。
WeWorkという企業
買収の前に、WeWorkのエグゼクティブたちは、彼を必要スタッフ全員出席のミーティングに招待した。これによってWeWorkのリーダーたちが言葉通りに透明であり分散されていることを示したのだ。
「ビジネスが拡大するためのプラットフォームとして、WeWorkにはたくさんのリーダー職が存在している。WeWorkの大きな未来予想図を描いた時に、物理的なスペース、というのはその出発点だった。しかしさらに広い意味ではビジネスに成長して欲しい、従業員や収益を拡大して欲しい、というものがある。そしてデジタルマーケティングはこういったビジネスが助けを必要としている分野だった」と、ベズマートニック氏は言う。
WeWorkのはじまりは、2010年に建てられたニューヨークのひとつの共同ワーキングスペースだった。それから8年が経ち、マンハッタンが抱える最大のオフィステナントのひとつにまで成長した。世界規模で200のロケーションを抱えている。これらのロケーションにおいて、何千ものスタートアップやそれよりも大きな規模の会社が勤務している。彼らにWeWorkはスペースにプラスしてコーヒー、インターネット、そしてマーケティングを提供しているわけだ。消費者直結型のビジネスをしているビジネスのなかにはマーケティングのほぼ全部を社内で行っているところもある。これに都合の良いことに、コンダクターはプラットフォームとカスタマーサービスの担当者を持っており、こういったビジネスにコンテンツマーケティングに関する手助けをすることができる。エージェンシーの仲介はどちらでも良い。
コンダクターの世界戦略
ベズマートニック氏にとっては、コンテンツマーケティングこそがマーケティングの基盤である。アドビ(Adobe)やセールスフォースは、すでにウェブサイトに到達している顧客をどうやってより良く対応することができるか、という点でテクノロジーのサポートを行っているが、コンダクターのフォーカスは新規の顧客を獲得することにある。
コンダクターが抱えるクライアントの数は1000を超す。WeWorkによる買収以来、その新規ビジネスの数は19%も増加している。そのなかにはソーファイ(SoFi)、ビザ(Visa)、ノードストローム・ラック(Nordstrom Rack)といった大手が含まれている。WeWorkが抱えているクライアントもコンダクターのクライアントに加わりつつあり、その規模は小さいものの成長を見せている。買収以来、増えたクライアントの数は70だが、そのなかでも、WeWorkのクライアントから12社がコンダクターのクライアントとして加わった。ベズマートニック氏によると、特に特化したプラットフォームはないとのことだが、ただひたすらビジネスの成長を主眼としているビジネスよりは、顧客を第一に考えている企業の方にコンダクターは興味を持っているとのことだ。
WeWorkもコンダクターも、ともに企業顧客をさらに獲得したいと考えていると、ベズマートニック氏は言う。WeWorkのクライアントのうち25%は一般企業である。これは2016年春にローンチしたサービスであると、ベズマートニック氏は説明する。これは1年前の同時期には20%であったことと比べると上昇している。コンダクターの本部はニューヨークにあり、クライアントは米国に集中している。しかしキエフ、サンフランシスコ、そしてロンドンとオフィスを構えたいまは、世界規模でも成長をしつつあるようだ。
成功するエージェンシー
コンダクターは、ブランドがエージェンシー、コンサルティングを起用しているか、それとも、ただWeWorkで勤務しているだけか、といったことに関係なくテクノロジーを提供する。
「エージェンシーの将来は非常に明るくも、非常に暗くもある。これまでを振り返ると、特にデジタルマーケティングにおいては、エージェンシーはコンピテンシーを提供してきた。何かの業務をアウトソーシングしている形だ。企業が大きくなることを脅威ではなくチャンスと捉えるのが成功するエージェンシーだ」と、ベズマートニック氏は言う。
Kerry Flynn(原文 / 訳:塚本 紺)