「プログラマティックを知ろうとする広告主は少なかった」:元トレーディングデスク幹部の告白

大手エージェンシーのトレーディングデスクは繁栄を極めた。あまりに多くのプログラマティック広告主が運用方法について厳しい質問をぶつけることなく、競争力のあるメディア価格の追求に目がくらんでいたためだ。少なくとも、トレーディングデスクの幹部だったある人物はそう考えている。

匿名を条件に業界の裏事情について赤裸々に語ってもらう「告白」シリーズ。今回の記事で取材した元トレーディングデスクの幹部は、プログラマティック広告主はプログラマティックの知識が不十分で、怪しいビジネス慣行の食い物にされているかどうかをわかっていなかったと振り返っている。

読みやすさを考慮し、内容には若干の編集を加えている。

──あなたのトレーディングデスクは、どのように利益を得ていたのか?

その点に秘密はなかった。我々は取引先からメディアを購入し、さらに高い価格でクライアントに販売していた。販売価格を高く設定していたのは、我々の購買力によって、有利な価格で購入できるという付加価値があったためだ。社内ではしばしば、有名デザイナーのスーツを購入することに例えられていた。有名デザイナーのスーツを購入するとき、仕立屋が支払った生地代を質問することはない。クライアントは契約を結ぶ際、結果を監査する権利を放棄しなければならなかった。我々は透明性が低いことを明確にしていた。

──どのように広告主に販売していたのか?

我々は社内で、トレーディングデスクを立ち上げたら、新規事業を積極的に推し進めるべきかどうかを話し合っていた。しかし結局、ネットワーク内のメディアエージェンシーがクライアントに売り込んでくれた。そうしたエージェンシーの一部はトレーディングデスクにあまり乗り気ではなかった。このエキサイティングな新しいメディア購入方法は、損益計算書(P&L)に影響を及ぼす可能性があると言われていたためだ。ほかのエージェンシーのCEOたちは状況を受け入れた。我々がGoogleやFacebookと渡り合うようになり、プログラマティックから大金を得る方法を見つけ出したためだ。当初、広告主に対しては、競争力のあるメディア価格を売りにしていたが、前払い金を支払えば結果がついてくるという売り文句に変わった。

──トレーディングデスクが広告主の金を運用し、どれくらい利益を得ているかについて、広告主は知ることができない。広告主はこの点を不安に感じていなかったのか?

2年前、エージェンシーのトレーディングデスクはもちろん、もっと広いプログラマティックのエコシステムに詳しいマーケターはあまりいなかった。実際、オンライン事業や商取引を担当するクライアントの幹部から、トレーディングデスクの仕組みに関する技術的な質問がよく来ていた。我々が購入したメディアの評価方法に関する問い合わせも多かった。プログラマティック予算に対する利ざやを尋ねられたら、我々はどこに付加価値があるかを示すため、利益率を伝えるようにしていた。ただし、具体的な金額は決して明かさなかった。Googleはそうした情報を開示していないため、我々もそうすることに決めた。

価格であれ、ビューアビリティ(可視性)や詐欺対策のようなものであれ、どこに価値があるかをクライアントに示すことができれば、メディア販売価格に25%の利益を上乗せしても問題ないと思う。

──クライアントの無知につけ込んでいなかったか?

つけ込んでいない。クライアントはトレーディングデスクのデータを監査できなかったが、どのインベントリー(在庫)が購入されたかを知っていれば、メディアオーナーからそれらの価格を聞き出し、基準価格にすることも可能だった。

──広告主が気にしていたのは利ざやだけか?

エージェンシーとトレーディングデスクが互いに売買しているという理由で、両者への支払いが重複しているのではないかと尋ねてくるクライアントもいた。ただし、よくある質問ではなかった。トレーディングデスクモデルを深く掘り下げようとするクライアントが少なかったためだ。現在は状況が変わっているかもしれない。透明性に関する議論が業界に大きな変化をもたらしているためだ。

ごく少数だが、エージェンシーからトレーディングデスクの商品を買うべきではないと確信しているクライアントもいた。我々はそうした判断を尊重した。最初からエージェンシーを信用していないクライアントは、おそらく我々とも仕事をしないと感じたためだ。

──広告主がトレーディングデスクに取引の開示を求めた場合は?

取引の開示は可能だった。ただし、我々のトレーディングデスクは開示に応じなかった。

──アービトラージモデルが悪用されたことはあるか?

我々は社内で頻繁にそのことを話し合った。我々と特定アドテクベンダーの関係に注目し、我々がそれらのベンダーからインセンティブを受け取り、便宜を図っているのではないかと考える人もいた。そのため、我々はクライアントに対し、優先パートナーの存在を明らかにしていた。しかし実際のところ、私がエージェンシーのトレーディングデスクで働いていたあいだ、ほとんどのクライアントは我々の優先アドテクベンダーを知らなかった。そのため、我々は彼らに、優先アドテクベンダーの製品が必要である理由を説明しなければならなかった。

Seb Joseph(原文 / 訳:ガリレオ)