広告主たちがコロナ禍中に予算計画を再調整するかたわら、従来メディアの損失は新興メディアの利益となる。匿名を条件に本音を語ってもらうDIGIDAYの「告白」シリーズ。本稿では、新興の持株グループでマネジングディレクターを務める人物に、傘下のエージェンシー各社が堅調を保てる理由について語ってもらった。
広告主たちがコロナ禍中に予算計画を再調整するかたわら、伝統的な持株グループはこらえきれずに崩壊しはじめている。従来メディアの損失は彼らのライバルたる新興メディアの利益となる。
匿名を条件に本音を語ってもらうDIGIDAYの「告白」シリーズ。本稿では、新興の持株グループでマネジングディレクターを務める人物に、傘下のエージェンシー各社が堅調を保てる理由について語ってもらった。
インタビューの内容は読みやすさを考慮して若干の編集を加えている。
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――2020年の業績はいまのところどんな具合か?
第1四半期のバランスシートには多少の落ち込みが見られた。第2四半期は非常に厳しく、しかし5月以降は回復の兆しを見せている。この四半期にいくらかの成長が見られたことを考えれば、伝統的な持株グループほど悲観的になる必要はない。
従来メディアのような重荷を負っていないことが、我々にとっての有利な点だ。いくつものグローバルな広告主と取引をしているが、我々に割り当てられるマーケティングやコミュニケーションの予算は多くない。だがその分、予算の削減にも対応しやすい。
たとえば、クライアントが我々の予算を1000万ドル(約10億円)から500万ドル(約5億円)に減らしたとして、減額分を取り戻すことは大手に比べればずっと簡単だ。これがオムニコム(Omnicom)なら6000万ドル(約60億円)に削られた予算を1億ドル(約100億円)まで回復しなければならない。また、少数のクライアントに重点的に依存することで、予算減額のリスクをおさえている。
――ほかに注目すべき要因はあるか?
我々のグループはM&Aを通じて成長してきた。傘下に収めた企業の損益勘定は最大限効率化されている。ぜい肉をすべて削ぎ落とした企業を基礎としており、今年初めに我々自身のコスト削減を余儀なくされた際も、これが痛みを緩和する要因として働いた。もうひとつ、我々の取引の50%以上がテクノロジープラットフォームに由来するため、彼らの成長の波に便乗できたことも大きい。
――クライアントがあなたの会社に望むことは?
シニアマーケターのなかには我々に従来的なエージェンシーの役割を期待する人々もいるが、我々は純粋なメディアバイヤーと見られることを望んでいない。このような機会を回避することは少なからずある。同じく新興のS4やユー&ミスタージョーンズ(You & Mr Jones)などを見ても、マネージドメディアサービスはほとんどやっていない。我々の場合、クライアントによっては、実質的にデータエージェンシーの役割を果たすこともあるし、もっとコンサルタント的な立場で彼らのマーケティング業務の一部を担うこともある。
――どのような景気回復を予期しているか?
単純あるいは普遍的な景気回復とはならないだろう。我々は業種ごとの回復状況を注視している。消費財メーカー(CPG)のように分かりやすい回復が見込まれる業種もあれば、旅行のように回復までにしばらくかかりそうな業種もある。ちなみに、我々の扱いに占める旅行部門の比率は3%にも満たない。同じ業種でも会社によって回復状況に幅があり、判断は難しい。さらに、コロナ危機にうまく対応している市場もあれば、そうでない市場もあり、この点も考慮する必要がある。
――エージェンシーパートナーを選ぶ恒例の大規模コンペが差し迫っているが、ビジネスに与える影響は?
我々の提案手法は他社とは異なり、メディアバイイング一辺倒ではない。したがって新規取引の獲得においても、いわゆるピッチ市場への依存度は低い。また、ピッチコンサルタントを雇って、半年にもおよぶピッチプロセスを展開できるだけの資源もない。我々はそういうテンプレートには必ずしも当てはまらない、ほかとは違う提案方法を模索している。
[原文:‘We don’t have the burden of traditional media’: Confessions of an upstart agency holding group MD]
SEB JOSEPH(翻訳:英じゅんこ、編集:長田真)