エージェンシーがFacebookの無責任な対応と傲慢なやり方に不満を募らせている。Facebook担当者からはメールの返信すらない一方で、広告代理店を介さずクライアントに直接営業を行ったり、データを独占しようとしたりする動きを見せる。データの強みを持つFacebookやGoogleに代理店はどう対応するのか。
10月24日に米サウスカロライナ州チャールストンで開催された「Digiday Agency Summit」で聞いた話だ。西海岸のあるエージェンシーの執行責任者は、Facebookのプラットフォームを使いこなせるようにする目的で、Facebook担当者との社内トレーニングを設定した。だがその担当者は、ダブルブッキングを理由に予定をドタキャン。エージェンシー側が予定を再調整するため毎週のようにメールを送り続けたところ、返信が来たのはなんと4週間後だった。
「Facebookに十分な投資をしていないから軽んじられているのかと思った。クライアント企業をすべて合わせれば、少なくとも300万ドル(約3.4億円)はFacebookに費やしているのに」と、彼女は不満をこぼした。
実は、Facebookについてこういった話はよく耳にする。およそ60のエージェンシーの幹部が参加した同サミットのタウンホールミーティングでは、エージェンシーがもっとも頭を悩ます問題のひとつにFacebookを挙げた。その理由は以下のようなものだ。
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- Facebook側の担当者が返答せず、エージェンシーからのキャンペーンに関する質問に答えられるだけの知識もないこと
- エージェンシーを避けてブランドと直接仕事をしようと強く働きかけていること
- Facebookがデータを独り占めしようとすること
「Digiday Agency Summit」では、エージェンシーが現在抱える課題について書き出してもらった。彼らの悩みのタネを知るにはぜひ詳しく見てほしい。
代理店介さず直接営業
「Facebookは常にサービスを更新している。だが、Facebookの担当者はその更新について教えてくれない」と、タウンホールミーティングに参加したとあるエージェンシーはこぼした。Googleも同様の対応をするが、Facebookはより過剰だとエージェンシー各社は口を揃える。
さらに、エージェンシーが腹立たしく思っているのは、Facebookが直接ブランドと掛け合おうとしていることだ。あるメディアエージェンシーの幹部は、Facebookが代理店を軽んじる理由として、結局のところブランドに決定権があるからだという。なかには、代理店側がクライアントを代弁して一度断ったにも関わらず、その後でFacebookやGoogleが直接自社の広告商品を営業することすらあったようだ。
「FacebookもGoogleも、何か新しいサービスをプレゼンしたり、素敵な夕食会でも開いてクライアントに気に入ってもらえさえすれば、彼らを説得して意思決定までさせられると信じている」。
データの強み
当然のことだが、こうしたグチの裏にひそむのはFacebookにエージェンシーの仕事を奪われるのではないかという恐怖だ。「FacebookやGoogleがクライアントと直接関係性を築けるような、大きな抜け道があるのは事実。それではエージェンシーは必要ないと見なされる」と、別の幹部は指摘する。
また、フィラデルフィアに拠点を構える、とあるエージェンシーのデジタル戦略部長はこう話す。「Facebookはたしかに魅力的だ。なぜなら、彼らは我々が想像できないような膨大なデータにアクセスでき、自分たちが占有するデータをもとにクライアントに提案ができる。エージェンシーより速くコンサルティングの機能を提供できるようになる」。
さらに、Facebookはクライアントに対し、外部のエージェンシーとではなく、Facebookのインハウスのコンテンツスタジオであるクリエイティブショップ(Creative Shop)と協働することを薦めることもあるという。
Facebookは協力的か
Facebookのグローバルエージェンシー開発部門でバイスプレジデントを務めるパトリック・ハリス氏は、エージェンシーからのこうした苦情に対し、エージェンシーとのパートナーシップの重要性について言及している。同社では過去6年、エージェンシーチームの人員を増やしており、広告主やエージェンシーに向けてオンライン学習や認定プログラムの「Facebookブループリント(Blueprint)」といったツールを開発している。
「私たちは完璧ではない。だが、これまで改善を重ねてきた」とするハリス氏は、「エージェンシーの期待に応えられていないのなら、当社には彼らに対する説明責任があるだろう」と語った。
Facebookがエージェンシーを通さずブランドに直接働きかけようとしていることについては、エージェンシーを除外しようとしているわけではないとする。「特定の商品やソリューションを押し付けているわけではない。クライアントやエージェンシーが使う広告ツールが、実際にブランド力を高めるのに役立っていることを確認したいのだ」とするハリス氏だが、同時に次のようにも述べた。
「メディア(バイイング)を超えた関係を当社と結びたいと考えるクライアントからは直接話をもらうことはしばしばある」。
ブラックボックス
ブランドが自社でFacebookを扱いきれるかは疑問が残る。エージェンシー各社は、クライアントがFacebookと直接仕事するのは至難の技だと警告する。Facebookは企業のマーケティング戦略全体のごく一部でしかないにもかかわらず、Facebookのプラットフォーム上でのマーケティング方法にはあいまいな部分が多い。
「Facebookはエージェンシーからのeメールにすら答えられないのに、クライアントに応えることができるとも思えない。Facebookの至らない点はそこにある」と、タウンホールミーティングに参加したとあるエージェンシー幹部は語る。
Facebookがデータを共有しないことについても、エージェンシー幹部たちはデータの信頼性に疑問を投げかけた。あるエージェンシー幹部はそれを「ブラックボックス」と表現する。「なにか手がかりがあるときに確証を得るのには使えるだろうが、それ以上のものではない」。
執筆協力: Shareen Pathak
YUYU CHEN(原文 / 訳:SI Japan)