「働く親」の支援を拡充する、欧米のエージェンシーたち:「前向きな変化が起きている」

少し前の火曜日、ペリ・グリンバーグ氏は1日のほとんどを電話対応に追われていた。グリンバーグ氏の子どもたちはイライラし、その日の夕方にあったミーティングの最中、別の部屋で騒いでいた。彼らの声は電話の相手である、エージェンシー幹部にも聞こえていたという。

「そのエージェンシー幹部は『電話は後にしようか?』といってくれたが、私は『いましかないので大丈夫です』と答えた」。そう話すグリンバーグ氏は現在、エージェンシーのラップ(Rapp)で人事担当 バイスプレジデントを務めている。同氏は、現状在宅ワークがときどき(あるいはいつも)混乱に陥るのは、受け入れざるを得ないと述べる。しかしグリンバーグ氏によれば、ここ数カ月で、エージェンシーで働く子を持つスタッフたちに対する周囲の態度には、顕著な変化があったという。「働く親であることを謝らなくてはいけない雰囲気は、もはやなくなった。完全に日常の一部になっている」。

グリンバーグ氏のように、蔓延する新型コロナウイルスのパンデミックの影響で、仕事と家庭のバランスを取る方法を模索するだけでなく、不規則な学校のスケジュールにも対応するはめになった親たちはたくさんいる。エージェンシー各社は、新学期がはじまり、クライアントだけでなく、日中は子育てにも対応しなくてはならないこうした親たちのことを考え、新たな福利厚生を用意している。一部の企業は、春のロックダウン中に行われたバーチャルアクティビティを復活させた。これは、従業員の会議中に利用される、Zoomでの読み聞かせや、Zoomを介したシッターと子どもたちの交流などが挙げられる。また、有給休暇を追加で付与したり、親の要望に応じて特定の時間帯の会議開催を避けたり、コンサルタントによるサポートを用意する企業もある。

バーチャル授業を提供

長いあいだ、エージェンシーは働く親にとって厳しい職業であるという評判が多かった。しかし今年になって、ようやく親たちに配慮した柔軟な対応を見られるようになっている。

「親である社員を含め、我々はみなこの異常事態がもたらした、独自のニーズを抱えている」と、ピュブリシスメディア・アメリカ(Publicis Media Americas)の最高人材責任者を務めるバーバラ・ジョブズ氏はいう。「柔軟性と共感こそ、いま誰にとっても必要なことだ。育児や自宅学習のニーズを満たすために、細かく休憩時間の確保を奨励したり、柔軟なスケジュールを提供し、すべての社員にセルフケアのための休暇取得を促すといった対応を実施している」。

ジョブズ氏によると、ピュブリシスグループ(Publicis Groupe)は現在、親のための定期的な支援フォーラムを開催し、ビジネスリソースグループも運営している。加えて同社は、ピュブリシス・スクーリング(Publicis Schooling)という、幼稚園前から高校生までの子どもたちを対象としたバーチャル授業を開始した。教えるのはピュブリシスグループの社員たちで、同社のAIプラットフォーム「マルセル(Marcel)」を利用してリモートで行う。これまでに37の授業が制作され、1500人以上の子どもたちが参加しているという。

必要不可欠な支援

パンデミックのなか、社員の子どもたちにバーチャル授業を提供しているのは、ピュブリシスグループだけではない。メディアエージェンシーのグッドウェイグループ(The Goodway Group)は、新型コロナウイルスの発生より前からフルリモート勤務を採用し、現在は社員の子どもたちにバーチャル授業を提供し、働く親たちを支援している。さらにこの秋から、バーチャルシッターと自宅待機中の有資格教師によるバーチャル家庭教師のサービスを開始し、親たちの勤務時間をカバーすることを目指すと、同社のピープル・エクスペリエンス担当責任者である、ジリアン・パップ氏は述べた。

また、8月と9月のあいだ、オムニコム・メディアグループ(Omnicom Media Group)は、同社で働く親たちを対象にイベントを2回実施。同イベントでコンサルタントを務めたデイジー・ダウリング氏は、働く親とその雇用者のための新たな労働システムの構築を支援する企業、ワークペアレント(Workparent)の創業者だ。

さらに、エージェンシーのOMD米国でマネージングディレクターを務め、OMGワーキングペアレンツネットワーク(OMG Working Parents Network)のエグゼクティブスポンサーでもあるキャロリン・パロディ氏は「働く親たちは子どもたちのために、再びリモート学習支援を模索しはじめている。彼らのコミュニティを支援することは、必要不可欠だと考えた」と述べた。

もう無視することはできない

子をもつ親だけでなく、高齢の親や病気の家族の介護をする社員への、新しい働き方に配慮したかつてないレベルの柔軟性を持つことの重要性が、ここ数カ月のあいだ明確に認識されるようになったと、あるエージェンシー幹部はいう。同氏によれば、働く親のニーズに対応する周囲の態度には、前向きな変化が起きている。

なぜなら「もう無視することはできない」からだと、カーマイケル・リンチ(Carmichael Lynch)のオフィスサービス担当責任者を務めるローラ・ノートン氏はいう。同氏によれば、エージェンシーで働く親たちを取り巻く力学の変化のきっかけは、Zoomで見た同僚やクライアントの子どもたちの姿だった。「我々は普段、社員たちを職場での役割を通して認識している。だが親としての一面を目の当たりにし、これまでにない繋がりが形成された」と、同氏は述べた。

[原文:‘Truly integrated’: As an unusual school year commences, agencies are aiming to help working parents more than ever before

KRISTINA MONLLOS(翻訳:的場知之/ガリレオ、編集:村上莞)