すべては9年ほど前、大手ホームセンターのホームデポ(Home Depot)から始まった。 トレードスクール(Trade School)の創設者でプレジデントを務めるジェンナ・フランコーニ氏は当時、クリエイティブエージェン […]
すべては9年ほど前、大手ホームセンターのホームデポ(Home Depot)から始まった。
トレードスクール(Trade School)の創設者でプレジデントを務めるジェンナ・フランコーニ氏は当時、クリエイティブエージェンシーであるガイデッドバイグッド(Guided By Good)傘下の22スクエアド(22squared)でソーシャル戦略担当チームを率いていた。同氏はホームデポでコンテンツ需要高における急激な仕事の増加を経験した。22スクエアドでは突然、ホームデポのPinterestインベントリを満たすため、父の日キャンペーン向けのデジタルおよびソーシャルアセットの撮影から4万のピン制作までを、3週間でこなす必要に迫られたのだ。
フランコーニ氏は米DIGIDAYの取材に対し、「コンテンツの量や複雑さ、タイムラインなど、あらゆるものが突然、爆発的に増えた感じだった」と話す。また、当時を振り返り、ホームデポがファーストパーティデータの宝庫を深く掘り下げ、新たなインサイトを生み出そうとするなかで、「デジタルとソーシャルへの投資が殺到した時期だった」と説明する。これを受け22スクエアドは、このような新しい需要に対応できるコンテンツショップを独立させることにした。そうして2020年に誕生したのが、トレードスクールだ。
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「ホームデポは、自社の顧客についてはるかに多くの情報を持っていた。米国の世帯の80%に相当する顧客について、これまでより多くの情報を得たことで、パーソナライゼーション戦略が可能になった」とフランコーニ氏は付け加える。
トレードスクールは、クライアントが効果的なコンテンツを作成・拡大できるよう支援することに重点を置き、絶えず変化する業界において、従来のエージェンシーよりも機敏に動くことを目指している。過去3年間で、同社はホームデポを旗艦アカウントとして維持する一方、(フェデックス[FedEx]からバッファローワイルドウィングス[Buffalo Wild Wings]にいたる)新規クライアントを獲得し、従業員数を3倍の120人以上に増やした。
フランコーニ氏はこのインタビューで、コンテンツビジネスの変化と、エージェンシーとしてインフルエンサー分析をどのように優先しているかについて述べている。なお、インタビューには読みやすさを考慮して編集を加えてある。
◆ ◆ ◆
――トレードスクールの成り立ちは?
コンテンツに対するニーズが突然爆発的に増加した後、私を含め22スクエアドにいた何人かが、「これまでとは違うやり方をしなければならない」と言うようになった。従来の統合型エージェンシーの構造で運営し続けていては、我々の業界がいかに変化していくかという需要に応えることはできない。我々は異なるプロセスを用い、役割をハイブリッド化し、仕事を生み出す方法を変えた。
――これまでのモデルとの違いは?
我々は単なるコンテンツマシーンではない。時に、我々が社内エージェンシーの延長線上にあることもある。それが非常に現実的な取り組みであることに気づいた。とくにここ1年半のあいだ、大企業は社内にあった素晴らしいグループを分割してきたが、スキルセットや処理能力の問題で、来るものすべてに対応できるわけではなかった。我々は、現代の問題にも対応できるよう、ある種のモジュラー式のサービスモデルを採用している。
――従来のエージェンシーとの違いはどこにあるのか?
我々には戦略がある。ブランドのコミュニケーションチャネルからインフルエンサー戦略まで、すべてが戦略やコミュニケーショングループに含まれているが、クリエイティブとプロダクションは、プロセスにしっかりと統合され、その上流に位置している。すべてを社内でプロデュースしている場合、タイムラインと予算をコントロールできるため、複雑なオペレーションをやり遂げることができるうえ、それを可能とする柔軟性と敏捷性を持ち合わせている。
我々のポジショニングステートメントのひとつに、「次を見据えた企業である」というものがある。たとえば、デジタルやソーシャルをインプットし、それぞれに本当に有効なビジネスモデルを構築する方法を考え出さなければならない。しかし同時に、再び変化し、業界の流れに対応する準備も必要だ。だからこそ、業界がどこへ向かおうとも、どこへでもついて行くつもりだ。トレードスクールを創設してまだ3年しか経っていないが、すでに立ち上げたときとはまったく違う姿になっている。
――クリエイティブやインフルエンサーの結果をどのように測定するのか?
我々のビジネスのなかのこの部分は、現在非常に流動的だ。我々は測定に投資し、より洗練された解析業務を構築することが、どのような点で意味があるのかを理解しようとしている。ホームデポやいくつかの大企業のようなクライアントは、測定と解析の大部分を担当する大規模なチームを社内に抱えている。
我々は、ブリーフのなかでそれに関する十分な情報を得ており、プロジェクトはそれに基づいているが、我々自身がそのループを100%閉じているわけではない。より注目しているのは、クリエイティブの測定部分への投資であり、インフルエンサーに関連するアフィリエイトの分野では、現在使用している独自モデルが我々にはある。
――業界ではどのような技術に期待を寄せているか?
AIが現在のバズワードであることは明らかだ。(中略)そして、我々は間違いなく、クリエイティブの提供において、そのテクノロジーを実験し、実際に使ってみて、熟考している。しかし、私がもっとも興味があるのは、クリエイティブの変化の速さ、そして、自動のバージョン管理技術や独自コードとクリエイティブの職人技や芸術とのバランスをどうとるか、ということだ。
サードパーティの視点から見ると、この領域にはいま非常に多くのプレーヤーがいて、どの技術スタックが我々にとって、そしてクライアントにとってもっとも理にかなっているかを理解しようとしている。アートとサイエンスはこの1年でものすごく融合しており、我々の業界はいま、この種のイノベーションに胸を躍らせている時期だと考えている。
[原文:Trade School founder Genna Franconi on the influencer content business and future of AI]
Antoinette Siu(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:島田涼平)