「 ブラックリスト 」などの広告用語、差別的と見直す動き:「これは手っ取り早い方法のひとつ」

この数週間というもの、広告およびメディア業界の幹部と従業員たちは、遅まきながら内省の日々を過ごしている。人種差別や不平等について、また企業がどうすれば組織の多様性をうまく育むことができるかについて、自らを見つめ直しているのだ。

必要な変化のいくつかは、大きな成果を見るまでに何年もかかるだろうし、現状の業界に痛みをもたらすものかもしれない。しかし、それ以外の小さな変化については、業界はいますぐにでもポジティブな影響をもたらすことができる。

「自覚なき組織的差別だ」

3年前の2017年、広告業界ではブランドセーフティが大きな問題となっていた。英タイムズ紙(The Times)が「大手ブランドがオンライン広告を通じてテロの資金源に(Big Brands Fund Terror Through Online Adverts)」と題する調査報道を発表し、広告主は自分たちがブランドセーフティに関する制限をもっと強化し、攻撃的または違法なコンテンツのそばに広告が表示されないように、早く手を打っておくべきだったことを、手痛い形で思い知らされたのだ。

英国のコミュニケーションコンサルタントで、そのころ英国の広告主の業界団体である広告主協会(ISBA)にコンサルティングを提供していたターニャ・ジョセフ氏は当時、広告主が広告表示を避けたいサイトやコンテンツプロバイダーのリストを「ブラックリスト」と呼び、広告表示を許可するコンテンツのリストを「ホワイトリスト」と呼ぶのを業界全体でやめさせようと試みていた。「ブラック」という言葉を悪に、「ホワイト」を善に結びつける意味合いをもたせるのを避けるため、ジョセフ氏は、代わりに「セーフリスト」と「ブロックリスト」といった名称を使うことを提案した。

自身も黒人であるジョセフ氏に返ってきたのは、「たくさんのあきれ顔」だったと、同氏は振り返る。

「これは一種の自覚なき組織的差別だ。人々がそれと気づかないまま、ブラックという言葉を常にネガティブな要素に結びつけていることは、一見無害なだけにたちが悪く、うんざりする」とジョセフ氏は話す。「全体でみれば最高に侮蔑的な振る舞いとはいえないが、日常にありふれているという点では非常に辟易させられる」。

「ブラックリスト」という言葉

それから3年後のいまも、「ブラックリスト」と「ホワイトリスト」の用語は相変わらず広告業界で広く用いられている。

『オックスフォード英語辞典』によると、「ブラックリスト」という言葉が生まれたのは17世紀のことで、反社会的行動や裏切り行為が疑われる人物のリストを指すのに使われたと、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの言語学教授クリスタ・エスター・センドロイ氏は筆者に語った。この言葉の使用は20世紀に入って再び増加し、さまざまな力関係を表すようになった。たとえば雇用主が労働組合の活動に参加している疑いのある人物のブラックリストを作成し、対する労働組合側も雇用主のブラックリストを作成するという具合だと、センドロイ教授は説明する。同じく20世紀初頭の禁酒法時代(1920~33年)には、飲酒常習者であると疑われ、処罰の対象になりそうな人物のブラックリストが作成された。その後、20世紀半ばになると、米国で共産主義の同調者とされる人々が「ハリウッド・ブラックリスト」に載せられるようになり、エンターテインメント業界で働くことを拒否された。

言葉とそれが表す意味は、ネットワークを構成するノード(個々の要素)であり、それが脳内でワイヤーで接続されていると捉えるべきだと、センドロイ教授はいう。ひとつの単語がひとつのノードに相当し、それらがワイヤーによって他のノードと接続されることで、3次元のネットワークを形成しているのだ。響きが似ている、意味が似ている、あるいはよく一緒に使われる単語同士は、脳内で接続されることが多い。

たとえば「ブラック」という単語を使うと、それはすぐさま正反対の意味をもつ「ホワイト」に接続されると、センドロイ教授は説明する。「ブラック」と「ホワイト」という単語を用いることは、個人、プロダクト、企業、あるいはウェブサイトを、ふたつのはっきり異なるグループに分ける。両方に同時に属することはできない。そしてそれらの単語は明らかに人種の定義と、人種間の緊張に結びついている。

「言語がもつ性質上、(中略)その単語をどのような意味に用いようと、(ノード間の接続によって)その単語が内包するすべての意味が一緒についてくる」と、センドロイ教授は話す。ブラックリストとホワイトリストの例については、「それらの用語が特に人種的な背景を伴って使われているとは思わないが、だからといって(そこから連想される意味が)消えてなくなるわけではない。脳はそのように働くものだからだ」と、センドロイ教授は述べた。

言葉を置き換えるだけでいい

2018年の「ジャーナル・オブ・ザ・メディカル・ラボラトリー・アソシエーション(Journal of the Medical Library Association:米国医学図書館協会ジャーナル)に発表された論文のなかで、研究者のフランク・ホートン氏とシャロン・ホートン氏は、ブラックリストとホワイトリストのような用語を使うことは、本質的に人種差別的であり、使用をやめるべきだと主張している。

「そのような用語は、人種差別的な文化を反映しているだけでなく、人種差別を強化し、正当化し、永続させる働きをしている」と両氏は述べている。

ブラックリストとホワイトリストという用語を使っているのは広告やメディア業界だけではない。ここ何年か、特に最近になって、複数のテクノロジー企業がこれらをブロックリスト/許可リスト(allowlist)などの用語に変更しようとしている。たとえばウェブアプリケーションフレームワークのルビー・オン・レイルズ(Ruby on Rails)を手がけるチームは2018年に変更を実施しており、それ以前にまず、テクノロジー業界で広く使われている「マスター/スレーブ(Master/Slave)」という用語の使用をとりやめている。マスター(主人)とは、大元になるデバイスやプロセス、リポジトリを指し、それによって制御される後続または複製のデバイスやプロセスはスレーブ(奴隷)と呼ばれる。代わりとなる用語は、「プライマリ(Primary)」と「レプリカ(Replica)」、あるいは「メイン(Main)」と「セカンダリ(Secondary)」だ。

しかし、ほとんどの広告業界幹部は、「ブラックリスト/ホワイトリスト」をほかの用語に置き換えるために、コードベース全体を書き換える必要もない。ただ、その代わりに、いまこの瞬間から、「ブロックリスト/許可リスト」、「セーフリスト/拒否リスト(safelist/denylist)」、あるいは「選択/除外(inclusion/exclusion)」といった用語を使うと宣言すればいいだけだ。

「一番手っ取り早くできること」

先ごろ、製薬会社グラクソ・スミスクライン(GlaxoSmithKline:GSK)のEMEA(欧州/中東/アフリカ)地域担当メディアディレクター、ジェリー・デイキン氏が、LinkedIn(リンクトイン)への投稿において、「ブラックリスト/ホワイトリスト」という用語の使用をやめるよう広告業界に呼びかけた。世界広告主連盟(WFA)のCEO、ステファン・レールケ氏はこれに対し、「あなたのいうとおり(中略)言葉には影響力がある。我々WFAでは、ブラック/ホワイトリストの用語を使用しないことに決めた。今後は選択/除外リストと呼ぶことにする」と返答している。また筆者は、英国のインターネット広告協議会も会員に用語の変更を要請していると聞いている。

前出のジョセフ氏が語ってくれたように、コミュニケーションを専門とする企業は、混同や誤解を避けるために、できるだけシンプルな言葉を用いることを信条とすべきだろう。人種差別の問題に対して、広告およびメディア企業には、ほかにもっと重要な、大いに求められる変化があることは確かだが、それにはしばしの内省の時間と、そして長期的な実践が必要となる。

かたや用語の変更は、ジョセフ氏がいうように、「変化を起こすために一番手っ取り早くできることのひとつ」なのだ。

Lara O’Reilly(原文 / 訳:ガリレオ)