「データに敬意を払うこと、それが今年の大きなテーマだ」:Dotdash ニール・ヴォーゲルCEOとのQ&A

アバウトドットコム(About.com)は、20年近い活動ののち、2017年にリブランドを実施し、ドットダッシュ(Dotdash)となった。パーソナルファイナンスに特化したサイト「ザ・バランス(The Balance)」やヘルスサイト「ベリーウェル(Verywell)」を立ち上げて、バーティカル市場に参入するとともに、数万ものコンテンツに大なたを振るい、迅速性および広告主のプログラマティックニーズへの対応を念頭に、すべてのサイトを一新した。

すると、トラフィックと収益が急伸。第1四半期の収益は前年比70%増を記録し、同期の直接販売広告は前年度第4四半期のそれを上回るペースで伸びている。この業績により、ドットダッシュは去る3月29日、米DIGIDAYが主催するDIGIDAYパブリッシングアワード(Digiday Publishing Awards)において、年間最優秀パブリッシシャー(Publisher of the Year)を獲得した。そんな好調を極める企業のトップ、ニール・ヴォーゲルCEOがFacebookに支配された1年の終わり、2018年におけるパブリッシャー最大の懸念事項、そしてデータの重要性について語ってくれた。

なお、会話は簡潔にまとめてある。

――以前、Facebookはパブリッシャーのことなど構わないといっていた。パブリッシャーはその事実を2018年、ようやく受け入れたと思うか? また、パブリッシャーには自らの姿勢を変えるため、より多くの努力が必要だと思う?

姿勢を変えようとしないパブリッシャーは、早晩パブリッシャーではいられなくなると思う。Facebookというキラキラしたものばかりを追い求めるのは危険だ。本分を見失いかねない。我々のFacebookトラフィックはまったく変わっていない。理由はひとえに、Facebookに対する姿勢にある。Facebookのニュースフィードに載ることに関し、我々は彼ら任せにしていない。パブリッシャーである者は、正直でなければならない。自分なりの主張を持ち、それを貫く必要がある。

以前は、打ち合わせでよく「オフプラットフォームビデオに関する御社の戦略は?」と聞かれたもので、そのたびに「そういうものはございません」と答えるのは非常に厳しいものがあった。その手のものが我々のユーザーに価値を届けてくれるとは思っていないし、我々の事業に価値を生むとも思わない。これはあくまで良識に基づいた判断であったし、いまでこそ我々は先見の明があるとして多くのマスコミに取り上げられているが、実際は違う、正反対だ。自らの行動に分別を持とうと努めたに過ぎない。

――2018年のテーマもしくはキーワードは?

データが今年の大きなテーマになる。データに対して、できるかぎり敬意を払うこと。データを善用し、悪用しないこと。データのおかげで、インターネットは非常に優れた場所になった。訪れた人の好みを最初から知っており、推測も一からはじめることもしないサイトは、より良いユーザー体験につながる。

だが、我々は一線を越えている。アドテク企業も一線を越えている。金儲けに必死のパブリッシャーも一線を越えている。コンテンツマーケターも一線を越えている。行きすぎに気づいて戻ってくるのか、あるいは手ひどい報いを受けることになるのか、そのいずれかになるだろう。

――データの扱いに対する慎重度の高まりをパブリッシャーは、チャンスに変えられると思うか?

100%できる。プライバシーとファーストパーティデータは、実におかしなことになった、それもこれも、FacebookとGoogleが膨大すぎるデータを所有したためだ。かのパブリッシャーおよびアドテク企業が、あらゆる人々をターゲットにできるよう、世界中の全データを手に入れようと考えた結果そうなった。だが我々はすでに、誰かひとりについて800のデータポイントを手に入れ、その人が何を求めているかを証明しようとするよりも、コンテクスチャルターゲッティングのほうが優れていることを突き止めている。たとえば、子どもが発熱しているかどうかを知りたくて我々のサイトを訪れてくれたという事実、それだけで我々には十分だ。かつての花形メディア、雑誌はそれで機能していた。何かを意図している瞬間の人間は非常に理解しやすい。8000ものアドテクベンダーを介して、その人物をリターゲットする必要はない。

――アドテク企業は、プライバシーに関するこうした意識の高まりへの対応に腐心することになると?

何とも言えない。ただ、GoogleやAmazonの人間と協力できるアドテク勢は、好調の波に乗ることになると思う。

――今後、パブリッシャーがとりわけ慎重にならざるを得ないことは?

クオリティだ。低クオリティのものを提供するトラフィック源はもはや絶滅に近い。つまるところ、半端なくだらないコンテンツの居場所はネット上にほぼ存在しない。大切なのは、地に足をつけた、昔ながらのやり方に立ち返ること――質の高い仕事をする、それに尽きる。それをしない、あるいはしようとしない者にどんな未来が待っているのか、私にはわからない。世界が再編成のまっただなかにあるいま、中庸全体が危機に瀕していると思う。

Max Willens(原文 / 訳:SI Japan)