EQUALITY AND OPPORTUNITY

「エージェンシーによる DE&I 改善は、見せかけばかりだ」:とある黒人コピーライターの告白

今年6月、広告エージェンシー勢は従業員の多様性に関するデータを公表し、多様性、公平性、包摂性(以下DE&I)をめぐる広告業界の現状を改善すると宣言した。それ以来、いまも熱心に取り組んでいると、エージェンシー経営/幹部陣は米DIGIDAYに語ったが、現場の従業員らは今年9月、さらなる行動の必要性を訴えた。

それから3カ月以上経った現在も、エージェンシーにおけるDE&Iの状況はほとんど変わっていないようだ。匿名性を保証する代わりに本音を語ってもらうDIGIDAYの告白シリーズ「THE CONFESSIONS」。今回は、とあるクリエイティブエージェンシーの黒人コピーライターに、この6月以来、エージェンシーで何が変わり、何が変わっていないのか、現状を語ってもらった。

なお、読みやすさを重視し、発言は端的にまとめてある。

−−エージェンシーはDE&Iの改善について、依然として計画の段階?

いまだにだらだらと、しかも長期にわたる計画をこねくり回している。自分に言わせれば、バカバカしいにもほどがある。雇用方針を変えたり、ダイバーシティ(多様性)やインクルージョン(包摂性)に対する姿勢を改善したりするだけのことに、どうして半年もかかる? という話さ。 

たとえば、うちのエージェンシーは多様性の数字を公表さえしていない。しかも、わざわざコンサルティング会社を入れて、長期計画にした。どう考えても、ありえない。いいかい、マイノリティ(少数派)の雇用と、その実現に向けて何が必要なのかが議題に上ったのは、今年の6月だ。なのに、外部の人間を入れて具体的な話を始めたのは、この秋だっていうだからさ、おかしな話だろ。結局、エージェンシーはあくまでもマイペースなんだよ。

ーーエージェンシーに本気で変える気はあると思う?

一応、まだ希望は捨ててない。雇用を始めたところがあるのも知っている。ただその一方で、うちのエージェンシーみたいに、見せかけだけのところも、すました顔で平気で嘘をつくところもある。我々は真摯に受け止めている、誰もが平等の立場で気持ち良く働ける職場を作りたい、なんて言いながら、じつは世間が耳にしたいことを口にしているだけ、という状況も見える。大半はどうせ、本気で変えたいとは思っていないし、エージェンシー独特の文化を変える必要があるとも思ってないんだろう。

ーーその根拠は?

これは単に雇用体制の問題というだけじゃない。エージェンシーの社内文化の問題でもあるからだ。そもそも、マイノリティに冷たいエージェンシーはたくさんあるし、たとえマイノリティを雇っていたとしても、それは特定のタイプのマイノリティでしかない。どこのエージェンシーにもマイノリティに関する不文律/基準みたいなものがあって、その会社が雇うタイプのアジア人でなければ、絶対に雇わないし、そこが雇うタイプの黒人でなければ、絶対に雇わない。わかるだろ、つまりどこもエージェンシー文化は手放したくないんだよ。有害な環境のなかで作り出した負の遺産を守りたいのさ。

ーー黒人の新規採用ばかりが取り沙汰され、既存の黒人クリエイティブの待遇改善はないがしろになっている。それも問題のひとつだと?

まさに、そのとおり。問題だよ。自分は実際、いまの職場で経験した偏見についてHR(人事部)と話をしたし、ブラック(アフリカ系)やブラウン(ヒスパニック系)を新たに雇う準備を始める前に、まずは社内文化を変えるべきだとも伝えた。それと、いくつかほかのエージェンシーの面接も受けてみた。それでわかったのは、たいていのところには雇用に関する姿勢を変えるつもりなんてない、ということ。一応、マイノリティと話はするけれど、マイノリティに対する見方を変える気は毛頭ない。詰まるところ、この問題を扱う人間が変わらないかぎり、社内文化は何ひとつ変わらないと思う。

ーーエージェンシーに変わって欲しいと願うことは?

エージェンシーを率いるリーダーたちには、ダイバーシティ(多様性)の改善を[ダイバーシティ部長という役職を作って、誰かひとりに押しつけるのではなく]、自ら牽引していくリーダーになってもらいたい。自分の代わりに仕事をしてくれる誰かを雇うのは、[自身の会社を多様かつ包摂な場にするという]責務を重要視していないと、自ら認めているようなものだろ。HR(人事部)のトップ、CEO、CCO、そういう幹部たちが、ダイバーシティは本当に重要なんだと声を上げないとだめだ。そして、ダイバーシティとインクルージョンの実現に欠かせないもろもろについて、自ら率先して学び、変えていって欲しい。クリエイティブ部門はエージェンシーの心臓だ。クリエイティブ部門を動かす人間が本気で取り組まないかぎり、ダイバーシティの話が先に進むことは、まずない。金を約束する人もいるだろうし、助成/補助金を出すところもあるだろうが、それで話が先に進んでいく未来は、自分には見えないね。

[原文:‘There’s a lot of posturing’ Confessions of a Black copywriter on agencies’ sluggish response to fix diversity, equity and inclusion

KRISTINA MONLLOS(翻訳:SI Japan、編集:長田真)