広告支出の急拡大が、広告主、コンテンツ権利者、パブリッシャーを続々とCTVとOTTに惹きつけている。チームホイッスル(Team Whistle)は、2020年春にエージェンシーを買収し、本業でも成長を続けていることから、大きな収益を上げることができると考えている。
広告支出の急拡大が、広告主、コンテンツ権利者、パブリッシャーを続々とCTVとOTTに惹きつけている。
スポーツ放送局のチームホイッスル(Team Whistle)は、2020年春にエージェンシーを買収し、本業でも各種デジタルプラットフォーム、ソーシャルプラットフォームにわたって成長を続けている。
このことから同社はいま、大きな収益増を見据えている。
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チームホイッスルの取り組みの背景
ここ数カ月のあいだ、チームホイッスルは自販機型DVDレンタルからAVODへの事業拡大を図るレッドボックス(Redbox)と、OTT広告の販売代理契約を結び、ワールドゲームズ2022(the World Games 2022)の広告販売パートナーとなった。なお、ワールドゲームズ2022のスポンサーパッケージの販売を担うのは、チームホイッスルエージェンシー(Team Whistle Agency)という、ホイッスルのエージェンシー部門。また同部門は、ホイッスルのオーディエンスのほとんどが集まるソーシャルプラットフォームで、コンテンツとサービス提供も行う。また6月には、フォックス(Fox)傘下のTubi TV(トゥビTV)のブランド認知度向上を狙った、1時間のTikTok特番をTubi TV用に制作している。
チームホイッスルの事業収入の大部分はメディア事業で、その状況はまだしばらく続くと見られる。チームホイッスルのブランドパートナーシップ担当バイスプレジデントのダスティン・フライシュマン氏は、2022年にメディア事業とエージェンシー事業の両方の成長が期待されているものの、今後はメディアの方がより急速に成長していくと予想する。そしてその成長の大部分が、リニアからストリーミングへの世界的な移行の加速に牽引されるだろう。
チームホイッスルのソリューション担当 エグゼクティブバイスプレジデントのカイル・ヤング氏は「テレビに投下されていた800億ドル(約8兆8000億円)の予算が、いろいろなところに流れていくことになる。プラットフォームを超え、当社のコアビジネスがあるソーシャルに向かい、残りはOTTとCTVに流れていくだろう」と語る。
メディアとエージェンシーの両軸を伸ばす
すでにはじまりつつあるこうした変化は、新しい種類のコンテンツを販売できる新たな場所から、大量のアフィリエイトマーケティングまであらゆるものを生み出し、デジタルパブリッシャーにとってはさまざまな恩恵をもたらすものとなった。
しかし、これらの新興プラットフォームでますます増えるオーディエンスへと、ブランドや権利保有者がさらに力を注ぐなか、ホイッスルが狙っているのは、メディア事業とエージェンシー事業の両面を同時に伸ばしていくことだ。
「スタンダードなパブリッシャーとしてのサービスを超えて、エージェンシーとしてのサービスも提供することが、来年に向け我々が加速していきたい部分だ」とヤング氏は話す。「この領域では、まだ上っ面に触れただけという人たちが依然としてかなり多い。大手が巨大な存在感を放って参入しているが、挑戦者が挑む余地はある」。
予算の効率的な活用に貢献
ホイッスルのセールストークは、この領域で直接取引にありつけないことが多い、小規模パブリッシャーやIP保有企業たちの共感を狙っているように見える。パブマティック(Pubmatic)とフォレスター(Forrester)が10月に発表した調査によると、CTVとOTTの広告予算を中小規模のパブリッシャーに向けている広告主は、全体のわずか28%だった。広告主の多くは、その代わりエージェンシーが開設するPMPを利用する。
こうした状況のなか、ホイッスルは技術面でのサポートを提供するだけでなく、クライアントのコンテンツとマーケティングの予算の効率的な活用に貢献すると、ヤング氏もフライシュマン氏も口をそろえる。加えて同社は、オーディエンスに関する知見や専門知識も提供することで役に立てるのではないかと意気込む。しかし一方で、現時点ではエージェンシー事業のクライアントのOTT在庫を、自社の在庫とバンドリングする気はまったくないようだ。
フライシュマン氏は、「ホイッスルとレッドボックスを一緒に買える、といったGTM(Go-to-Market:自社の商品やサービスをどのように顧客に届けるかをまとめた戦略)はない」と話した。
[原文:‘There is room for challengers’: Team Whistle looks to OTT and CTV to boost its agency business]
MAX WILLENS(翻訳:SI Japan、編集:村上莞)