[ DIGIDAY+ 限定記事 ]ミレニアル世代やZ世代の社会人のなかには、1日8時間働いて給料をもらう生き方は古臭いと考える者も多い。雇用において給料や福祉、昇進といった要素と同じくらい、ライフスタイルやアイデンティティが重視されるようになったのだ。こういった期待は「従来型」の構造やプロセスを残す企業により大きな影響を及ぼす。
[ DIGIDAY+ 限定記事 ]WeWork(ウィーワーク)は今夏上場を発表した際、職場環境に次のような影響を及ぼしたいと表明した。「我々の使命は世界中の人たちの意識を高めることにある。当社には人々の労働、人生、成長をより高みに導く力があると確信している」。
オフィスのレンタル企業がどれくらいの数の人の意識を変革できるかは不明だが、同社の言葉を後押ししたのは若者の意識の変化だろう。とりわけ米国では、若い社会人が仕事と雇用について望むものは前の世代とは大きく異なっている。社会意識の変化、テクノロジーのやまない進歩、フリーランスと「ギグエコノミー」へのシフトのなかで、こういった若者の期待はかつてないほど急激に高まっている。
ミレニアル世代やZ世代の社会人のなかには、1日8時間働いて給料をもらう生き方は古臭いと考える者も多い。雇用において給料や福祉、昇進といった要素と同じくらい、ライフスタイルやアイデンティティが重視されるようになったのだ。WeWorkが提供するコミュニティやテーブルフットボール、ビール、「好きなことを仕事にする」ことのススメといった要素は、こういった意識の変化に基づいている。ブランドは社会的注目を求める。いまや社員を確保するためには、安定した給料を払い、金曜日に無料でベーグルを配る程度ではダメなのだ。新世代の社会人が職場に求める期待値は、前の世代よりはるかに高い。仕事のストレスは、もはや仕事で負うべきものではなく、メンタルヘルス面における深刻なリスクと捉えられている。「仕事には人生のほかの要素よりも意味を求めない」という考えは、目的意識の欠如と捉えられる。
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すでに「あって当然」の慣習
「若い世代は仕事に意味と目的を求める。自分たちの才能と強みを活かして自分がもっとも得意なことを毎日やりたい、自分の人生に一番フィットするものを仕事に選びたいというのが彼らの意識だ。そして1カ所にとどまるということにもあまり魅力を感じないようだ」と語るのは、ギャラップ(Gallup)でグローバルプラクティスリーダーを務めるエド・オボイル氏だ。
こういった期待は「従来型」の構造やプロセスを残す企業により大きな影響を及ぼす。リモートワークやフレックスタイム、ワークライフバランスといったコンセプトがもてはやされたのはもはや過去の話で、現代の社員にとってこういった要素はもはや「あって当然」なのだ。
ギャラップが発表した米国職場環境に関する最新の調査によれば、米国の社会人の53%が、新しい職を探すにあたってワークライフバランスが「非常に重要」と回答しており、54%が労働時間を選べるというだけの理由で仕事を変えると回答している。
新技術やツールのおかげ
契約やフリーランス、いわゆる「ギグエコノミー」が近年台頭しているのはこういった意識が根底にあり、WeWorkといった企業もその恩恵を受けている。ギャラップの推定によれば、米国の全労働者の36%が、主要な仕事においてフルタイムの契約ではない「代替的な労働契約」を結んでいるという。
こういった契約は柔軟でワークライフバランスに優れ、集中できる仕事環境を実現できると考える人は多いようだ。また、自分の運命を自分で切り開く感覚と満足感が得られると考える人もいる。
「仕事環境とスケジュールを雇用主に決められるより、自分で構築するほうが私には合っている」とあるマーケティング役員は語る。同役員はホールディングカンパニーの子会社のメディアエージェンシーを5年前に辞めて、よりフレキシブルなフリーランス契約を結んだ。
こういった契約が可能になったのも、もちろん新しい技術やツールのおかげだ。コラボレーションソフトや動画会議、プロジェクト管理ツールなどは明らかな後押しだろう。
雇用主にとっての困難
だが雇用主にとっては、柔軟な働き方をする一時的な社員の増加によって生じる課題もあり、それを克服して適応するのは必ずしも容易ではない。訓練やコミュニケーション、社員のエンゲージメント、報酬、管理構造などにおいて新しいアプローチを開発することが求められることが多い。
採用担当者らは、スタートアップやデジタルファースト企業を好む若い社会人が増えている理由もそこにあると指摘する。こういった企業のほうがより柔軟でお役所的でない傾向があるためだ。
企業にとって、すでに定着した慣行やアプローチを変えるのは容易ではないかもしれない。だが、適応に失敗すれば、気づかぬうちに競争力を失いかねないのがいまの時代だ。
「自分から望んでもう一度フルタイムの仕事につくとは考えにくい」と、前述のマーケティング役員は語る。「いまの世の中を見るに、今後私のようなライフスタイルで生きるのが難しくなっていくとは考えづらい。むしろより簡単になっていくのではないか」。
Jack Marshall(原文 / 訳:SI Japan)