大衆に求められるものなら、遊びも仕事に取り入れられるのが、エージェンシーの特権だ。
ポケモンGOはいま一番ホットなAR(拡張現実)モバイルゲームとなっている。プレーヤーはポケモンをゲットして、トレーニングさせるという単純なゲームだ。しかし、それが瞬く間にセンセーションとして社会に広まった。
エージェンシー業界も例外ではない。情報の共有のためにSlack(スラック)を使っているエージェンシーもいれば、リテイルのブランドマーケティングにポケモンGOを活用しだしたエージェンシーもいる。
大衆に求められるものなら、遊びも仕事に取り入れられるのが、エージェンシーの特権だ。
ポケモンGOはいま一番ホットなAR(拡張現実)モバイルゲームとなっている。プレーヤーはポケモンをゲットして、トレーニングさせるという単純なゲームだ。しかし、それが瞬く間にセンセーションとして社会に広まった。
エージェンシー業界も例外ではない。情報の共有のためにSlack(スラック)を使っているエージェンシーもいれば、リテイルのブランドマーケティングにポケモンGOを活用しだしたエージェンシーもいる。
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Slackの新しいチャンネル
グローバルデジタルエージェンシーであるミラム(Mirum)のシニアストラテジスト、鈴木良和氏は10才の頃にポケモンをプレイしはじめた。今回のアプリがローンチされてから4日間、懐かしさから1回も中断することなくポケモンGOをプレイし続けている。
「このゲームを攻略するために少し時間をかけなければいけない。実験しながら学んでいかなければならないんだ」と、鈴木氏。しかし、同氏はすでに攻略しつつあるようだ。「ポリゴンは僕の自慢だよ。まだ、ポリゴンをもっている人を見たことがないからね」。
鈴木氏は、ミネアポリスのミラムのオフィスで、Slackにポケモンファンのためのチャンネルを作った。オフィスの人数は60人で、そのうち20人がポケモンのチャンネルに入っている。近くにいるポケモンを捕獲するため休憩時間に集まるための連絡、情報交換、捕獲したポケモンのスクリーンショットを共有しあったりしているという。
「ただ、ポケモンGOのプレーヤーたちと話したり、一緒にポケモンを探したり、熱くなれる場所が欲しかったんだ。Slack以上に最適なプラットフォームはなかったよ」と、鈴木氏は話した。
ポケモンGOは、いままでにない画期的な最新技術が投入されたゲームではない。だが、このアプリは今後さらに市場へ浸透していくだろうと、同氏は断言する。現在までのところ、全ポケモン700匹のうち、アプリで出現するのは初期の151匹のみ。しかし、ポケモンの見た目などの特徴は、パーフェクトに再現されているわけではないという。そんななか、リテイルブランドのポケモンGOのプロモ活用は興味深いものがある。
また、シミラーウェブ(SimilarWeb)のデータによると、7月8日の時点で、アプリの使用時間は平均で43分23秒。これはWhatsApp(ワッツアップ)やインスタグラム、Snapchat(スナップチャット)、Messenger(メッセンジャー)よりも長い使用時間である。
店舗に客を呼ぶ新しい手法
多くのエージェンシーはすでに、ポケモンGOの潜在的な影響力を見抜いているだろう。しかし、エージェンシーのヒュージ(Huge)は、そのアイデアを実際に実行した数少ないエージェンシーだ。アトランタとジョージアのヒュージのカフェで、30分毎にポケモンをおびき寄せるためのルアー(エサ)を仕掛けているという。これにより、ヒュージのカフェにたくさんのポケモンGOプレーヤーが訪れたそうだ。
アトランタのヒュージ、エグゼクティブ・クリエィティブ・ディレクターのデレク・フリッドマン氏は、先週末にポケモンGOをチームで試していたとき、ヒュージのカフェが、2つのポケスポットのあいだに位置していることに気づいたという。ポケスポットでは、プレーヤーたちがアイテムを回収することができる。

ヒュージカフェの周りに現れるポケモン
フリッドマン氏は、「これはカフェに足を運んでもらう絶好のチャンスだ。そこで、我々は約50ドルを費やして、ルアー『エサ』を仕掛けたのさ。より多くのプレーヤーがここに集まれば、より希少なポケモンを獲得できるはずだ」と、話す。
このアイデアによりヒュージのカフェは、先週の月曜日から客足が跳ね上がった。フリッドマン氏のチームは、この勢いを失速させないために、実験的に火曜日の午前11時から午後2時(東海岸の時刻)、カフェでポケモンGOをプレイしている様子を#hugecafeのハッシュタグとともにソーシャルメディアでシェアした場合、店でパンを無料でゲットできるようにした。
「今後もさまざまなアイデアを試していき、このゲームアプリをいかにマーケティング活用できるかを模索し続けるつもりだ」と、フリッドマン氏。
同氏にいわせると、ポケモンGOに関しての唯一の不満といえば、バッテリーがすぐになくなってしまう点だという。そこで、ヒュージのカフェでは、アンドロイド用とiOS用のモバイル充電ステーションを21個提供することにした。
人事も急遽、社内方針を発表
先週の金曜日にポケモンGOのサーバーがダウンしたとき、デジタルエージェンシーであるディープフォーカス(Deep Focus)は大パニックに陥った。アプリをダウンロードできなかった者は、すでにアプリでプレイしている者に嫉妬し、フラストレーションを抱えていたと、ディープフォーカスのプロダクト改善のグループマネジャー、トーファー・バーンズ氏は話す。
従業員がポケモンGOに熱狂しているため、ディープフォーカスのソーシャルメディアのリーダーは、月曜日に全社ミーティングを招集し、会社の新しいポリシーをアナウンスした。その内容は、ポケモンGOのアプリは個人の電話同然の扱いとし、仕事に影響が出ないのであれば、ゲームをプレイすることを許可する、というものだった。
バーンズ氏は、ポケモンGOをプレイしたい従業員は、いつもの出勤時間よりも30分早く家を出て、最寄り駅でインセンスを使用するか、ラッキーエッグ(幸運の卵)を使用し、経験値を倍増させることを推奨している。
オフィスでの新たな現象
クリエイティブエージェンシーであるアーノルド・ワールドワイド(Arnold Worldwide)のボストン本社では、400人の従業員のうち50人がポケモンGOをプレイしている。ソーシャルコンテンツ部門のシニア・アソシエイトのライアン・ビニクーム氏やソーシャルコンテンツ部門マネジャーのクリスティン・バース氏も、そのうちのひとりだ。

アーノルド・ワールドワイド ボストン本社のポケモンコミュニティー
「会社に出勤していたら、突然、私と会社の建物のあいだにルージュラが現れたんだ。こんな出来事は、いままでに想像もしたことがなかった。最高だよ。AR(拡張現実)を通して、このゲームがより私の実生活に関連している街で展開される」と、ビニクーム氏。
さらに同氏は、ポケモンGOのおかげで、見ず知らずの人と会話を交わし、いままでにないほど、意図せず8マイル(約12km)も外を歩いていたこともあったという(土曜日に8マイル、日曜日は4マイル歩いたそうだ)。「任天堂は健康志向の会社になろうとしているのだと思う。ポケモンGOはとても良いきっかけになった。しかも無料でね」。
ビニクーム氏やバース氏のように、アーノルド・ワールドワイドの役員たちはポケモンGOに夢中だ。それぞれ3つのチームに分かれて、バトルをし合っている(レベル5以上になると、陣営選択をし、ジムを取り合うことができる)。オフィスごとでプレーヤーたちのバトルが繰り広げられるているが、アーノルド・ワールドワイドは全社的なトーナメント戦の開催は予定していないらしい。
Yuyu Chen(原文/ 訳:中島未知代)