FUTURE OF WORK

米国で拡大する、ノマドワークの潮流:アパート生活を捨てキャンピングカーへ

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常に新しい場所へと移動し続けたり、1箇所に数週間、数カ月単位で滞在しながら移動する「デジタルノマド」の存在は、昨今ますます受け入れられつつあり、従業員と雇用者の両方に利益をもたらしている。

MBOパートナーズ(MBO Partners)のレポートによると、米国では2019年から2020年のあいだに、デジタルノマドの人口は50%近く増加し、1090万人に到達。特にクリエイティブ領域に従事する人々に、魅力的な生き方として捉えられているようだ。

AIを活用して、企業と人材をマッチングする人材エージェント、ジーニー(GENIE)の共同創設者ニッキー・バデノック氏は、「人材を『所有する』のではなく、状況に応じて『最高の人材にアクセスする』という考え方に、企業の思考がシフトしている。リモートワークが浸透しつつあるいま、経営者たちは、自社のクリエイティブ部門を、オフィス内に縛っておく必要はないということに気付きつつある」と述べた。

経営者だけではない。昨年9月、B2Bマーケティング代理店のオクトパス・グループ(OCTOPUS Group)のアカウントディレクター、ジャック・フェリス氏は、ロンドンにある自身のアパートを売却し、夫婦で改造キャンピングカーでの生活を開始した。これは、オフィスに常駐する必要がなくなったことで可能になったことだ。「今年に関していえば、私たちは仕事のほとんどをコーンウォールとデボンからリモートでこなしていた。私の勤務時間は、9時〜5時の時間帯に縛られているが、朝食前にランニングをしたり、ビーチでウォーキングをするなど、プライベートな時間を最大限に楽しんでいる。以前は通勤に使っていた1時間を、いまでは自分がやりたいことに充てることができているのだ。職場の幸福度が一気に向上した」と述べる。同氏は近々、週に2日はオフィスに出勤しなければならなくなるが、それでも「私の会社はとてもフレキシブル」だと述べる。

経営者が得られるメリット

リモートワークは、一部の企業にとっては新しい取り組みだが、以前からそのメリットを享受してきた企業もある。デジタル、インバウンドマーケティングの代理店であるレッド・エボリューション(Red Evolution)の創業者、デーヴィッド・ロビンソン氏は現在、10人の従業員を抱えているが、彼らは基本ノマドスタイルで仕事をしている。またロビンソン氏自身も、スコットランドのアバディーンを拠点としつつも、大型キャンピングカーで定期的にイギリスのウェールズ、ドーセット、コーンウォールに旅行しているという。

なお、現在レッド・エボリューションの従業員のひとりは、イングランド北部のニューカッスルにあるコワーキングスペースで仕事をしている。「彼は、最初に入社した時はパリに住んでいて、フランス語を学んでいた」という。ほかにも、バルセロナからサンディエゴに引っ越す途中のスタッフもいる。

「もし、採用対象をオフィス周辺に居住する人に限定されていたら、レッド・エボリューションはまったく違った状況になっていただろう。私は、従業員がオフィスに来られるかどうかよりも、彼らの『仕事の質』を重要視している」とロビンソン氏は語る。

前出のバデノック氏も、従業員を自社オフィスに閉じ込めておくことに執着しない雇用主は、彼らに質の良い仕事環境を提供でき、結果として大きなメリットを得られると考えている。「確かに、ノマドワーカーは(滞在する)山の頂上や村のなかを歩き回り、良いインターネット接続状態を探す必要があるかもしれない。しかし、自由を感じて生活することは、彼らに解放感をもたらし、結果的に積極性の向上につながる」。

従業員が得られるメリット

パンデミック到来以前から存在していた多くのトレンドと同様、世界的なロックダウンやリモートワークの普及に伴い、ノマドワークもこの18カ月で急激に広がりつつある。また多くの雇用主が、従業員から寄せられるパンデミック後の勤務状況への期待に応えるため、柔軟性を高めていることから、この傾向は今後も続くと予想される。

パフォーマンス・マーケティング代理店であるジャーニー・ファーザー(Journey Further)のペイド広告担当エグゼクティブ、ナターシャ・カーライル氏はこの1年、キャンピングカーで過ごしながら働いてきた。主にリーズを拠点とし、週に数回オフィスで働いている。また、そのほかの時間を使って、彼女はパートナー(ふたりとも、クライミングと水泳だ大好きだ)とともに、ヨークシャー・デールズとピーク地区を旅行している。「職場から離れて新たな環境にいるということは、心の健康にとても良い影響を与えている。就労の自由だけでなく、移動し探検する自由を持つことは現代の夢である」。

またカーライル氏は、ジャーニー・ファーザーについて、同社は従業員が個々に合った時間に働けるように対応してくれていると評価する。「仕事を完了し、クライアントに貢献することができていれば、どこで仕事してもかまわない」。

ノマドワークの注意点

もちろん、ノマドワークを行ううえで、考慮しなければならない要素もある。インターネット接続だ。フェリス氏はモバイルWi-Fi受信機(MiFiボックス)を持ち歩くようにしている。また、この受信機が使えない場合は、車の外側にアンテナを取り付けてWi-Fiを使用できるようにするという。「電話会議をしたり、ファイルにアクセスする分にはこと足りる」。

電力もまた、考慮しなければならない要素だ。「私の場合、ソーラーパネルによる独自の供給と、運転中にエンジンから立ち上がるレジャー用バッテリーシステムを確保している。ノートパソコンのバッテリーは、1日仕事をするだけでも大きく消耗するので、注意が必要だ」。

また、前出のロビンソン氏は、ノマドワークを行う場合、各々がプロフェッショナルとしての責任感をしっかり意識する必要がある、と強調する。「キャンピングカーを停めて、美しい波を眺めていてサーフィンをしたくなったとしても、期日の近い締め切りがあった場合は「私がここに住んでいるのは仕事のためであり、仕事を完了させなければならない」と自分にいい聞かせなければならない。ノマドワーカーは、自分の仕事ぶりが他者の目にさらされることがないので、極めてプロフェッショナルである必要がある」。

多大なクリエイティビティをもたらす

ただ、うまく成立させることができれば、ノマドワークは個人と雇用主の両方に、多大なクリエイティビティをもたらす。「世界を揺るがすアイデアが欲しい。そして開かれた目や気持ち、魂を持ち、飢えた精神と好奇心を持っている人々と一緒に働きたい」と語るのは、ポルトガルの山中に住むジーニー社のフリーランスライター兼アートディレクターの、エマ・バンクス氏だ。

「私は、川で身体を洗って、ゲル(円形の移動型住居)に住んでいるからといって、お花畑な気分でいるわけではない。普段の電話会議に、新しいエネルギーや大胆なチャレンジ精神をもたらしているつもりだ」。

[原文:‘The modern dream’: Swapping apartments for campervans, nomadic working is on the rise

NICOLA SMITH(翻訳:塚本 紺、編集:村上莞)