広告バイヤーは、使用するDSPの数を減らしてきている。それにより、入札で自社と競り合うリスクを減らし、料金と管理費を削減できるからだ。多くのDSPが似通った機能を追加したことで、プラットフォーム間の差はほとんどなくなってきており、規模が小さいニッチプレイヤーは困ったことになる可能性がある。
広告バイヤーは、使用するデマンドサイドプラットフォーム(DSP)の数を減らしてきている。
それにより、入札で自社と競り合うリスクを減らし、料金と管理費を削減できるからだ。多くのDSPが似通った機能を追加したことで、プラットフォーム間の差はほとんどなくなってきており、規模が小さいニッチプレイヤーは困ったことになる可能性がある。
「重複リスク」が淘汰の理由
「DSPとは束の間のロマンスだった」と語ったのは、ハバス(Havas)傘下のモバイルエージェンシー、モバクスト(Mobext)で米国のマネージングディレクターを務めるウォーレン・ゼナ氏。モバクストでは、ポートフォリオのどのクライアントに関しても、通常5~7個のDSPを使っている。だが、1年前には1ダースほどのDPSを利用していた。「エージェンシーが賢くなり、一番うまく行く組み合わせを選別するようになってきた」と同氏は語る。
Advertisement
デジタルエージェンシーのバム・ストラテジー(Bam Strategy)は、約1年前には3~4個のDSPを使っていたが、それを1~2個に減らしたと、同社のマーケティングディレクター、アダム・マスコット氏は語る。削減の大きな理由は、ほとんどのDSPには類似のインベントリー(在庫)があり、バイヤーにとって入札とターゲティングが重複するリスクがあるということだ。エクスチェンジの大半はセカンドプライスオークションを採用している。これは、2番目に高かった入札額で購入価格が決まるというもので、入札が重複すると、自社と競合し、インプレッションに払う金額が知らないうちに上がりかねない。
たとえば、バイヤーが20~25歳の女性を狙って複数のDSPで入札したとしよう。プラットフォーム上のインベントリーが同じである場合、このバイヤーは図らずも、同じインプレッションに3件、入札することになるかもしれない。このバイヤーが10ドルで落札したとすると、2番目の入札額もこのバイヤーによる10ドルになり、このバイヤーは10.01ドルを払うことになる。仮にこの重複がなければ、同じインプレッションを最低限のコストで獲得できたはずだ。
ブランドのあいだで「重複のないインベントリー」のアクセスを提供していないDSPの削減が進んでいると、エージェンシーのリチャーズ・グループ(The Richards Group)でプログラマティックの責任者を務めるデイビッド・リー氏は語る。1年前、リー氏のクライアントは5~7個のDSPを使っていたが、いまは3~4個しか使っていない。
追いつくバイヤーの理解
バイヤーがDSPを減らしているのは、効率化のためでもある。DSPが1つ増えると、バイヤーが習熟する必要があるプラットフォームや、キャンペーン中にモニタリングする必要があるダッシュボードが1つ増える。また、契約が複雑なことから、DSPを減らすことはすなわち管理費の削減だと、モバクストのゼナ氏は語った。
「多額の資金が流れるビジネスにとっては当然の結果だ。たくさんのプレイヤーが参入するが、最終的には均一化するのだ」とゼナ氏。「割り前を得ようとしてたくさんの企業がこの市場に参入したのは無理からぬことだ。しかし、(DSPの削減は)避けられないだろう。本当に良い技術をもっているところには、買収の要望があるはずだ。しかし、出口が見つかるところばかりではない」。
広告バイヤーたちは数年にわたり、DSPをコモディティのように扱ってきた。まるでアドネットワークのようにDSPにアプローチし、最終的には価格の優位性が得られるだろうとして、プラットフォームを10個もキャンペーンに追加したりしていたと、DSP企業のデータシュー(DataXu)でCROを務めるエド・モンテス氏は語る。しかし、プログラマティックバイイングの仕組みにバイヤーが気がついた現在、そのような日々は終わりに近づいている。
「バイヤーがプラットフォームを理解するという転換期が到来した。だから、DSPを削減するという話題をいくつも耳にする」と、モンテス氏は語った。
大は小を兼ねる時代
ピュブリシスメディア(Publicis Media)でプログラムとサービスのSVPを務めるリッチ・ソーベル氏は、DSPの削減は構造的なものだと語った。大手DSPがチャネルを問わず購入できる機能を追加したため、デスクトップ向けディスプレイ、動画、モバイル、ネイティブといった個別のDSPは必要なくなった。バイヤーは代わりに、大きなDSPを少数、採用するようになったとソーベル氏は語る。
「専門的なDSPの一部は苦しくなるだろう」と、DSP企業メディアマス(Mediamath)の北米マネージングディレクターを務めるロス・マクナブ氏は語る。「クライアントたちはそれを踏まえて、支出で意思を示している」。
Ross Benes (原文 / 訳:ガリレオ)