インフルエンサーマーケティングが始まったばかりの2010年代初頭、キム・カーダシアン氏のようなセレブリティやデビッド・ドブリック氏のようなユーチューバーが、その有り余るフォロワーから利益を得たい広告主の頼りの綱だった。
しかし、ある時点で消費者の信頼、ひいてはオーディエンスのエンゲージメントが低下し始め、マイクロインフルエンサー、つまり、ソーシャルメディアで1万~10万のフォロワーを持つ人々が台頭してきた。
ソーシャルメディアのTikTok化は、すでに急成長していたインフルエンサーマーケティング領域の成長をいくらか促し、そのアルゴリズムがあらゆる規模のクリエイターに話題性を与え、ブランドとの契約を獲得するチャンスをもたらした。そして今、顧客関係管理(CRM)プラットフォームのハブスポット(HubSpot)によれば、インフルエンサーマーケティングに投資するマーケターの半数以上が、マイクロインフルエンサーと仕事をしているとされている。
クリエイティブエージェンシーである19th・アンド・パーク(19th and Park)のシニアストラテジストを務めるデビン・ペイトン氏は、「従来インフルエンサーのエンゲージメント率は1~3%だ」と述べ、「3%超は平均以上と見なされる」と補足した。マイクロインフルエンサーの場合、この数字は5%から始まる。「この種のインフルエンサーは実際、本人が思っているより大きな力を持っており、ブランドは今、そのことを本当の意味で理解し始めている」と同氏は話す。
以下では、マイクロインフルエンサーに関する賛否両論を紹介する。
インフルエンサーマーケティングが始まったばかりの2010年代初頭、キム・カーダシアン氏のようなセレブリティやデビッド・ドブリック氏のようなユーチューバーが、その有り余るフォロワーから利益を得たい広告主の頼りの綱だった。
しかし、ある時点で消費者の信頼、ひいてはオーディエンスのエンゲージメントが低下し始め、マイクロインフルエンサー、つまり、ソーシャルメディアで1万~10万のフォロワーを持つ人々が台頭してきた。
ソーシャルメディアのTikTok化は、すでに急成長していたインフルエンサーマーケティング領域の成長をいくらか促し、そのアルゴリズムがあらゆる規模のクリエイターに話題性を与え、ブランドとの契約を獲得するチャンスをもたらした。そして今、顧客関係管理(CRM)プラットフォームのハブスポット(HubSpot)によれば、インフルエンサーマーケティングに投資するマーケターの半数以上が、マイクロインフルエンサーと仕事をしているとされている。
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クリエイティブエージェンシーである19th・アンド・パーク(19th and Park)のシニアストラテジストを務めるデビン・ペイトン氏は、「従来インフルエンサーのエンゲージメント率は1~3%だ」と述べ、「3%超は平均以上と見なされる」と補足した。マイクロインフルエンサーの場合、この数字は5%から始まる。「この種のインフルエンサーは実際、本人が思っているより大きな力を持っており、ブランドは今、そのことを本当の意味で理解し始めている」と同氏は話す。
以下では、マイクロインフルエンサーに関する賛否両論を紹介する。
マイクロインフルエンサーに賛成する理由
2016年の時点ですでに、マイクロインフルエンサーは広告主に人気がありすぎた。当時、DIGIDAYが報じたところによれば、広告主がフォロワーの多い人々に札束を配るにつれて、オーディエンスのエンゲージメントは先細りになっていった。ピアツーピアの口コミ型マーケティングを活用したい広告主にとって、マイクロインフルエンサーはまさにスイートスポットだったのだ。
ハブスポットによれば、数字の観点から見るとフォロワー数10万人以下のマイクロインフルエンサーは、より多くのフォロワーを持つインフルエンサーに比べて、エンゲージメント率が最大60%高いという。事実、インフルエンサーマーケティングに投資するマーケターの56%が、マイクロインフルエンサーと仕事をしている。
インフルエンサーエージェンシーであるキャプティブエイト(Captiv8)の共同創業者兼CEOであるクリシュナ・スブラマニアン氏は、「小規模なインフルエンサーは大規模なインフルエンサーより信憑性が高く、ニッチなコミュニティへのリーチに適していると言われているためだ」と、分析する。
また、スブラマニアン氏はメール取材に対し「ナノインフルエンサー(とマイクロインフルエンサー)については、クリエイターとそのコミュニティが密接な関係にあるため、エンゲージメントが高くなる傾向にあることが示されており、これは考慮すべき要素だ」と述べている。
費用対効果が高い
インスタグラムであれ、TikTokであれ、米国のマイクロインフルエンサーの平均報酬が1000ドル(約14万円)前後であることを考えると、予算が厳しい広告主にとって、マイクロインフルエンサーの活用は得るものが大きい。インサイダー・インテリジェンス(Insider Intelligence)によれば、フォロワー数50万~100万人のマクロインフルエンサーの場合、広告主はTikTokで4000ドル(約56万円)、インスタグラムで1万ドル(約140万円)の報酬を支払うこともある。
理論的には、広告主はマイクロインフルエンサーと仕事をすることで、広告費を有効活用できるのだ。ひとりの大物にすべてを投じ、インフルエンサーやセレブリティが世間から反発を受ける(2023年のディラン・マルバニー氏とバド・ライト[Bud Light]、2017年ごろのケンダル・ジェンナー氏とペプシ[Pepsi]など)リスクを冒すのではなく、複数のインフルエンサーに広告費を分散できる。
ただし、小規模なクリエイターとの仕事でも、パートナーシップが本物でない場合、ブランドが世間から反発を受けるリスクはある。シーイン(SHEIN)のインフルエンサーマーケティングの失敗がその証拠だ。
広告エージェンシーであるクリスピンポーターボガスキー(Crispin Porter Bogusky)の北米担当プレジデントを務めるマギー・マレク氏は、従来のソーシャルメディアキャンペーンやWeb広告、バナー広告のようなメディアで小規模なクリエイターを増幅させることも、広告費の有効活用になると述べている。
「マイクロインフルエンサーを増幅させれば、リーチを獲得できる」とマレク氏は話す。「実際、彼らはクリックを促進し、売上を促進する。そして、そのコンテンツを増幅させれば、より多くの目に触れさせることができる」。
マイクロインフルエンサーに反対する理由
とはいえ、マイクロインフルエンサーが究極のインフルエンサーマーケティングだというわけではない。実際、クライアントのインフルエンサーミックスを多様化し、大規模なインフルエンサーと小規模なインフルエンサーの両方を含めることで、どちらか一方に依存しすぎないようにするインフルエンサーネットワークやエージェンシーが増えている。
「2~3年前は、いつもセレブリティを全面的に頼っていたが、ここ数カ月はさまざまなインフルエンサーをミックスしている」とペイトン氏は語り、「マクロインフルエンサーかマイクロインフルエンサーかという議論の多くは、クライアントの予算と目標によって決まる」と言い添えた。
経済の逆風が吹き荒れ、景気後退が叫ばれるなか、パフォーマンス指標や測定、効率性はますます重要になっている。広告エージェンシーであるロージーラボ(Rosie Labs)の創業者兼CEO、デビッド・ソン氏は、ひとりのマクロインフルエンサーやセレブリティではなく、複数のマイクロインフルエンサーと仕事をすれば、ひとつのアカウントではなく複数のアカウントで支出やパフォーマンスを追跡することになり、指標の追跡がさらに難しくなると述べている。
「多くの人に多くの金を渡すのと、ひとりにより多くの金を渡すのとではまるで違う」とソン氏は話す。「前者はとにかく広がりすぎてしまう。つまり、ひとりまたは一握りのマクロインフルエンサーの規模を実現するため、多くのマイクロインフルエンサーと仕事をすることは、シームレスなデータ報告体験が損なわれることを意味する」。
また、複数のインフルエンサーを探し、交渉してブリーフを作成し、契約を結ぶという仕事は、ひとりの大規模なインフルエンサーと仕事をするより時間がかかる。インフルエンサーマーケティングエージェンシーであるビリオンダラーボーイ(Billion Dollar Boy)の創業者兼グローバルCEO、エド・イースト氏は、「大物インフルエンサーやセレブリティと手を組めば、管理業務を削減できる可能性がある」と述べている。「ひとりのマクロクリエイターと契約することで得られるスケールメリットは、10~20人の小規模なクリエイターと仕事をすることで得られるスケールメリットより大きい」。
結論
インフルエンサーマーケティングは成長と成熟を続けており、広告主はインフルエンサーとの仕事に万能なアプローチなど存在しないと学びつつある。
クリエイティブエージェンシーであるラッカスマーケティング(Ruckus Marketing)のプレジデント、アレックス・フリードマン氏は「インフルエンサーマーケティングをディスプレイ広告やコネクテッドTV、より大規模なソーシャルメディア戦略など、大きなキャンペーンの一環として行うのではなく、サイロ化された戦略だ」と言う。
「ひとりのインフルエンサーがインパクトを与え、変化をもたらすにはやはり広告の基本的なルールに従う必要がある」とフリードマン氏は話す。「適切なオーディエンスが必要であり、適切なスポンサーが必要だ。実際のところ、スポンサーが鍵とも言える。インフルエンサーにとって、適切な製品、マーケティング活動、パッケージを用意しなければならない」。
[原文:The case for and against micro-influencers]
Kimeko McCoy(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:島田涼平)
Illustration by Ivy Liu