FUTURE OF WORK

大離職時代が到来か?:「燃え尽き」と「求人活況」で、目移り始めた労働者たち

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「大離職時代」に備えよう。

パンデミックからの脱却に加えて、夏以降、従業員の離職が相次ぐことが予想され、企業は不安を抱えている。

別の言い方をするなら、「キレ落ち(オンラインゲームの対人戦において、敗色濃厚の際に怒ってゲームを放棄すること)」だ。自分の会社でそんなことが起こっている証拠はないと思う人は、いずれ目にすることになるのだと覚悟しておいたほうがいい。

「これは実際に起こっている。その影響はすでにさまざまな組織で感じられるようになっている」。そう語るのは、ブレイブリー(Bravely)の共同創業者でプレジデントのサラ・シーハン氏だ。ブレイブリーは個人とパーソナルコーチをつなぎ、従業員への福利厚生サービスを提供するために利用されるプラットフォームだ。ピンタレスト(Pinterest)、ジロー(Zillow)、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)といった企業が採用している。「2020年に起こったことにより、多くの人が動かずにじっとしていなければならないと感じていた。彼らは、パンデミックが自分たちをどこへ連れて行こうとしているのかわからないと言っていた」と、シーハン氏は付け加える。

今日に至るまで、巨大な人材市場が存在するなか、1年以上パンデミックに悩まされたことと記録的な生産性が相まって、多くの労働者がバーンアウト(燃え尽き)しようとしている。パンデミックの発生以来、ブレイブリーではストレスやバーンアウトをテーマにしたセッションが700%増加したという。「力関係が大きく変化している。いま、主導権を握っているのは従業員のほうだ」と、シーハン氏はいう。「彼らが何かを要求してきても、そのニーズを満たすことができなければ、彼らはどこかほかの場所に行ってしまうだろう」。

従業員たちが抱えているもの

一生に一度の健康危機が叫ばれるなか、雇用主は従業員の健康を最優先に考えている。しかし、なお苦しんでいる従業員は多い。人事プラットフォームのバンブーHR(BambooHR)が先頃行った調査で、リモートワーカーの78%は過去1年間に自分のキャリア開発に悪影響があったと考えており、米国の平均的な従業員は、昇給や昇進に絡み、約1万ドル(約110万円)の損失を被ったと推定していることがわかっている。

また、彼らの属性を見ても、その体験には差がある。バンブーHRの調査によると、過去1年間にバーンアウトを感じたリモートワーカーのうち職務外の責任を負っていることがその原因だと答えているのは、黒人の割合が38%、アジア人が37%、ヒスパニック系が33%だが、白人は22%に留まっている。また、自分の価値を証明するためにより多くの努力をしなければならないと答えているのは、Z世代とミレニアム世代の従業員で61%だが、X世代が44%、ベビーブーマー世代が43%であるのと比べると、その差は歴然としている。

これは世界的な現象だ。Facebookのビジネス版アプリケーション、「ワークプレイス(Workplace)」の調査によると、英国の労働者は上司に新しいスタイルのリーダーシップを求めているという。そのうち58%が、理解ある心を感じなければ、仕事を辞めてもいいと考えていることがわかった。また、調査対象者1330人のうち69%が、職場での個人のウェルビーイングや幸福にとって、企業のリーダーシップが鍵になると回答している。

「理解と対話がもっとも重要」

ディズニー(Disney)やボッシュ(Bosch)のような企業をクライアントに持つエージェンシー、ベイリー・ラウアーマン(Bailey Lauerman)の最高経営責任者(CEO)、グレッグ・アンダーセン氏は、「いまになってスタッフが離職するリスクを考えるようでは、遅すぎる」と、述べる。ベイリー・ラウアーマンでは、自社の柔軟性ある全国規模の人材モデル、これはネブラスカ州オマハに拠点を置く同社にとってパンデミック以前から必要なツールだったものだが、非常に大きなメリットをもたらしており、そして業界を超えて世界中の多くの従業員が移動し続けていると、アンダーセン氏は考えている。「この業界でいま起こっている人材の移動は、我々にとって有利に働く。我々のようなエージェンシーにとって、より多くの優秀な人材を確保することができるからだ」。

無制限の休暇、PCや携帯電話の電源を強制的にオフにする日、朝のミーティング廃止、メンタルヘルスデー、ウェルネスプログラムなども、パンデミック中に必須条件となった「どこでも働ける」方針に加え、福利厚生サービスとして用意されている。そして、従業員の声に耳を傾けることも引き続き重要だ。「我々にとってもっとも重要なのは理解と対話だ」と、アンダーセン氏はいう。「このふたつのことがエージェンシーとスタッフの両方の視点から構築されることによって、どのような形で人材を採用するとしても、適切なものになる」。

エージェンシーの180では、プロジェクトごとのニーズや従業員の関心に基づいて、社内のエコシステムをメインオフィスから世界中の「ポップアップ」にまで拡大することに加え、仕事場を「クラブハウス」として再認識し、「コミュニティの中心であり、いなければならない場所ではなく、居続けたくなる場所」にしようとしてきた。そう語るのは、同社のグローバルCEOを務めるサンダー・ボルテン氏。「我々は、既存および将来の従業員が求める柔軟性と自律性を深く認識しており、過度な要求を課すのではなく、彼らを惹きつけ、力を与えられるよう努力している」と、ボルテン氏は述べる。

だが、従業員が仕事で満足するうえでもっとも重要な側面は、日頃から充分にコミュニケーションをとることかもしれない、と多くの専門家は同意する。

声がけの取り組み

デジタル・バンキング・プラットフォームのクウォンテック(Quontic)の最高人材責任者(CPO)、マイク・ランツ氏は、「リモート環境で仕事をすることは、絶対にリーダーにとって難しい。そのため、電話をかけて話をしたりして、つながりを維持するように気をつけなければならない」と語る。クウォンテックでは、パンデミックのあいだに150人以上の新入社員を採用したが、そのほとんどが同じ職場で働いておらず、顔を合わせたこともないと述べている。ランツ氏は、毎朝、社員と直属の上司とのあいだで「短時間の心地よいハドルミーティング」を行うことを推奨している。これにより、仕事の優先順位が伝達されるだけでなく、社員はコミュニティの一員であることを実感できる。

ノースカロライナ州ダーハムにあるエージェンシーで、プロクター&ギャンブル(P&G)やNetflixをクライアントに持つマッキニー(McKinney)では、従業員アンケートを定期的に実施し、全員の気持ちを把握するように努めてきた。特に、9月のハイブリッドモデルへの移行に向けて、社員の意識を把握するため、小グループでのディスカッションを行っている。同社CEOのジョー・マグリオ氏はこう語る。「マッキニーはこの15カ月で絶頂とどん底を経験してきた。私の役割は、その形跡を考慮に入れつつ、人々の声に耳を傾けることだ」。

[原文:The Big Quit: Employee burnout and a robust job market have workers eyeing greener pastures

TONY CASE(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:小玉明依)