多くのエージェンシーにおいて、大きな問題となっている人材流出。だが、そもそも業界の転職率は40%と極めて高い。
エージェンシー、ワークアンドコー(Work & Co)共同設立者のジーン・リーベル氏によると、同社は創業2年目だが、設立当初から辞めた従業員は1人もいないという。しかも、従業員数は当初の5人から106人へと増え、クライアントにはYouTubeなど有名企業が名を連ねている。
マネージングパートナーであるMCDパートナーズ(MCD Partners)のデイビッド・イーストマン氏は、「彼らのWebサイトは、未来のクライアントというよりは、未来の才能ある人材へ語りかけている」という。「Webサイトからは、彼らが1つの特定のものを追求していることが伺える。デザインだ。彼らはソリューション志向型であり、有望視されているビジネスモデルを実践しているのだ」。
多くのエージェンシーにおいて、大きな問題となっている人材流出。だが、そもそも業界の転職率は40%と極めて高い。
エージェンシー、 ワークアンドコー(Work&Co)の共同設立者ジーン・リーベル氏の話によると、創業2年目の同社、設立当初から辞めた従業員は1人もいないという。従業員数も創業時の5人から106人へと増え、クライアントにはYouTube、大型量販店のターゲット(Target)、銀行のチェイス(Chase)や航空会社のヴァージン・アメリカ(Virgin America)などの有名企業が名を連ねている。
リーベル氏は冗談交じりに「まず1つ目に、そもそも誰も信じないから、あまり大きな声では言いたくないんだ。2つ目に、私には証明することができないしね。そして最後に、彼らは私のことを嫌なやつだと思っている。しかし、2年も無事に経営し、誰も辞めてないということは、とても特別なことであり、私のキャリアのなかでもっとも誇りに思っている」と、米DIGIDAYの取材で語った。
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サービス担保のため、経験者にこだわる
この転職率0%の背景には、ワークアンドコーが平凡な営業マンやマネージャーで満足するような企業ではなく、何かを作りたいというパッションをもった人材だけを雇っているという事実があると、リーベル氏は話す。ワークアンドコーはインターパブリックグループのエージェンシーであるヒュージ(Huge)のすぐ近くに拠点を構えるが、同社の多くの従業員がかつてヒュージに勤めていた。
「経験のある人材や専門職の人材は、デジタル商品やサービスを製作している企業にとって、もっとも重要なリソースだ」とリーベル氏。「創業2年のベンチャー企業には不釣り合いなほどの人材を採用するのは、我々がサービスの質を追求するためなんだ」と話す。
リーベル氏は、ワークアンドコーを元ヒュージの役員たちとともに共同設立した。このメンバーには、ヒュージで元デザイン部門を率いていたジョー・スチュワート氏、元パートナーであり商品デザイン部門を率いていたフェリペ・メモリア氏、商品デザイン部長のマルセロ・エドゥアード氏、ヒュージの元商品戦略を率いていたモハン・ラマスワミー氏が含まれる。
2015年の夏にはヒュージにてAppleのアカウントプランナーを担当していたケイシー・シーハン氏と、ヒュージのグローバル・クリエイティブ・デイレクターを担当していたジョン・ジャクソン氏を雇い入れた。これで役員10人中8人は、元ヒュージの職員ということになる。
なぜ、彼らは辞めようとしないのか?
自社株を所有できることと、リーベル氏が思い描いたデザインワークの実現は、多くの社員にとって魅力的だ。それには、グローバル・クリエイティブ・デイレクターのジャクソン氏も賛同している。
また、ヒュージで元デザイン部門を率いていたスチュワート氏も将来的に自身のエージェンシーを経営するために、今後もデザインを続けていきたいという意向を示す。ワークアンドコーは彼らのような人材にはうってつけの環境を提供できているのだ。
マネージングパートナーであるMCDパートナーズ(MCD Partners)のデイビッド・イーストマン氏は「彼らは当たり前のことを真っ当にできているのがすごい」と話す。「彼らは才能豊かな人材を魅了し、社内につなぎ留めてきた。それは本当に難しいことだ」。
魅了される、クライアントたち
ワークアンドコーは、現在のデジタルショップがどうあるべきかを理解していると、リーベル氏は話す。同社はデジタル商品やサービスをとても重要視しているからだ。そしてワークアンドコーのデザイナーは、ほとんどが上席レベルのデザイナーで、しかも皆、協力的な人間ばかりだ。これがクライアントを魅了し、魅きつけているのだろう。
「クライアントは、商品とサービスの両方が必要だと、気付き始めている」と、リーベル氏。また、その運命をコントロールするためには、顧客とのエンゲージを獲得しなくてはならないと気づいた者が、もっとも優れているとも付け加えた。
その良い例として、航空会社ヴァージン・アメリカの新しいオンライン予約サイトが挙げられる。同社は、ワークアンドコーの最初のクライアントとして、クリーンな見た目で、モバイル仕様を基盤にしたオンライン予約サイトの再構築を行った。その使い勝手は、利用者からの圧倒的な支持を得たのだ。
ヴァージン・アメリカ航空の最高マーケティング責任者(CMO)であるルアンネ・カルバート氏は、「ワークアンドコーの担当者たちはヴァージン・アメリカの一部となり、私たちのチームの一員だった。今回の件から得たものは、物事をより早く、クリエイティブに進めなくてはならないということ。そして、彼らがヴァージン・アメリカ航空の企業風土を感じ取ってくれたということだ」と、語る。
人材への投資が、ブランディングとなる
MCDパートナーズのイーストマン氏によると、ワークアンドコーは自社のブランディングを、ビジネスモデルを通じて成功させているという。同氏は彼らのWebサイトを見れば、それがわかると話す。
「ワークアンドコーのWebサイトは、未来のクライアントというよりは、未来の才能ある人材へ語りかけている」と、彼は言う。「Webサイトからは、彼らが1つの特定のものを追求していることが伺える。デザインだ。彼らはソリューション志向型であり、有望視されているビジネスモデルを実践しているのだ」。
リーベル氏によると、ワークアンドコーはGoogleやFacebookを倣って積極的に雇い入れを行っているという。新たなビジネスがどんなものになるにせよ、洗練されたデザイン専門チームをもつことは成功につながる。
「クライアントを勝ち取ってから、スタッフ集めをするということではない」とリーベル氏は話す。「もし仮にFacebookと競っていたとする。彼らは優れた人材に会うとすぐに採用する。来年に行うかもしれないプロジェクトに必要になるという考えで採用しているからだ」。
今後、同社の成長はいかに?
しかし、この上下逆さまで頭でっかちなピラミッド・モデル。いまは問題ないかもしれないが、ビジネスの拡大からすると、難しい挑戦となる。仕事の質の保持から管理体制の変更、チームの風土まで、多くの問題点が浮上することだろう。リーベル氏もこれに気付いてはいるが、同氏は心配事を口に出すタイプではない。
「今後どうなっていくかは、我々もこれから注視していく」と、彼は言う。「我々はワークアンドコーを広い範囲に拡大してきた。すべてのプロジェクトに、我が社のコアとなる役員たちを参加させることが、我々が考える企業の拡大の仕方だ」。
プロジェクトの中心となるのは、才能あふれる人材だ。
「あなたが常勝するプロバスケットボールチームを作りたいと考えたとき、一番大事なことは優れた選手を獲得することで、戦略は二の次だ」と、リーベル氏は話す。「大事なことは、もしあなたのチームにレブロン・ジェームズ(NBAのスーパースター)選手のような素晴らしい選手がいれば、大抵の場合は勝つということだ」。
Tanya Dua(原文 / 訳:BIG ROMAN)
Image from 米DIGIDAY