オムニコムグループの子会社、オーガニック(Organic)は、クライアントに対する「コグニティブ技術」の利用支援をその主な目的とした新部門、シンセティック(Synthetic)を立ち上げる。率いるのは、オーガニックの最高執行責任者(COO)キース・パイン氏と、チーフクリエイティブオフィサーのクリス・ケリー氏だ。
オムニコムグループの子会社エージェンシー、オーガニック(Organic)は、クライアントに対する人工知能や機械学習をはじめとする「コグニティブ技術」の利用支援をその主な目的とした新部門、シンセティック(Synthetic)を立ち上げる。
率いるのは、オーガニックの最高執行責任者(COO)キース・パイン氏と、チーフクリエイティブオフィサーのクリス・ケリー氏だ。
「近年、我々はコグニティブ技術を用いてクライアントと仕事をするようになった。そして、年末にかけて、この分野をさらに広く深く掘り下げ、独自性を追求していくために、新しい部門を設立するに至った」と、パイン氏はその必要性を語る。「シンセティックの特徴のひとつに、オーガニックからの高い独立性が挙げられる。スタッフ一人ひとりに自由裁量が許され、周りからダメだ、無理だと言われることなく業務に集中できる環境を実現した」。
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シンセティックが担うこと
コグニティブ技術とはAI、機械学習、ディープラーニングなどをまとめた総称だ。簡単な例でいえば、Facebookが写真から友達の顔を認識するのにはAIが、自動制御のスパムフィルターには機械学習の技術がそれぞれ使われている。そして現在、ブランド各社はさまざまな場面でコグニティブ技術を駆使したいと考えている。たとえばメディアバイイング(パフォーマンスに基づいて、広告を動的に挿入および提供する業務)から、自社のWebサイトを利用者向けに最適化する業務に至るまで、さまざまな場面でコグニティブ技術を活用できる。
シンセティックは開発者2名、デザイナー1名、ユーザーエクスペリエンス担当2〜3名、そして事業リーダーから構成される。さらにオーガニックから必要に応じてリソースを集める形で業務を進める。同部門は今後、2〜3週間おきにコグニティブ技術を使った実験を行う予定で、初回は評判分析と画像認識に関するものが予定されている。この実験結果を各ブランドのアカウント担当者に説明し、同担当者が「効果的」と判断した場合に顧客にその結果を伝え、それに基づいた新たな提案をする。
シンセティックの最初の顧客は、家具チェーンのアメリカンシグネチャーファーニチャー(American Signature Furniture)だ。オハイオ州に本社を構え、125店舗を持つ同社はeコマースで成長を遂げている。アメリカンシグネチャーファーニチャーCIO(最高イノベーション責任者)のスティーブ・ハファー氏によると、シンセティックには同社のショッピング体験にコグニティブ技術を組み入れる長期的構想を提供してもらうとのことだ。
新技術の評価をするために
「大型家具」業界でeコマースが占める売上比率はわずか3%にすぎない。高額商品の購入プロセスが複雑になっているのが、その主な要因だ。「当社は店員にタブレットを持たせている。当社の有するデータは膨大だ。Webサイトやカスタマーサービス、カートからデータが集積されている」とハフナーは語る。「コグニティブ技術のスタッフには、顧客体験に関わる業務全般に関わってもらうことになる」。
こうしたなかで課題として挙がるのはAmazonの脅威だ。アメリカンシグネチャーファーニチャーはAmazonで商品を展開するのではなく、競合している。新しい技術のテスト導入に数億円を投じるAmazonに対し、同社は新技術の評価でシンセティックに力を借りることで対抗する。「オーガニックの良さは、AIのような新技術を導入する際に、より効率よく技術を絞り込める点にある。我々はAmazonと競う立場だ。Amazonと同じようにイノベーションを行っていく必要があるが、同じやり方で競えるような資金力はない」。
もちろん、オーガニックがこの分野の先駆者というわけではない。 メディアエージェンシーのクロスメディア(Crossmedia)では、コグニティブソリューションの事業責任者として新たに就任したカリム・サンジャビ氏が、メディア事業にAIの導入を進めている。また、MDCメディアパートナーズ(MDC Media Partners)にはAIに特化したエージェンシー、ボーン(Born)がいる。
オーガニックは、顧客に提示する前に実験的かつ実用的なデータや技術を獲得することで、ほかとの差別化を図ろうとしている。「業界内にありふれた技術を量産するつもりはない」と、ケリー氏は述べた。
Shareen Pathak(原文 / 訳:SI Japan)
Image from 米DIGIDAY