5月から8月のいわゆるサマーシーズンのあいだ、金曜日を時短勤務にしたり休日に設定するエージェンシーが増加している。その内容や制度には差異があるが、各社とも休暇取得がクリエイティビティを確保する鍵を握るとし、社員の燃え尽きを回避することはエージェンシーにとって極めて重要なことであると口をそろえる。
5月中旬、コンテンツマーケティングエージェンシーのインフルエンス&コー(Influence & Co.)が、初めて「サマーフライデー」を導入した。5月から8月のあいだ、金曜日の正午に終業するという試みだ。同社幹部は、このような福利厚生を導入することによって、パンデミックが社員にストレスを与えている状況に向き合い、米国でワクチン接種が広がり一部のレジャーが再開されるなかで社員が休む時間を取れるようにしたい、と話す。
インフルエンス&コーのCEOであるケルシー・レイモンド氏は、「社員が充電の時間を必要としていると感じていた」と語る。「みんな、この15カ月間(旅行、医療機関の受診、美容院など)やりたくてもできなかったことがいろいろたまっていたと思うので、もっと自由な時間が取れるようにしたかった」。
現在、エージェンシーのあいだでサマーフライデーが見直されつつある。同社のように初めて導入する企業もあれば、すでに導入された休暇制度の利用を奨励したり、さらに制度の拡充を図るエージェンシーもある。いまサマーフライデーへの注目が高まっているのは、困難な1年を経たあとで、社員たちがゆったりとくつろいで心の健康を改善する時間を設けて燃え尽きを避けるためだと、各社幹部たちは言う。
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労働時間は伸び、休みは減少
ピュブリシスグループ(Publicis Groupe)のUSマーケティングサービス人事最高責任者、バーバラ・ジョブズ氏は「パンデミックは、私たちのワークライフバランスにとてつもなく大きな影響を与えた」と述べる。「言うまでもなく、移動や交流に関する規制によってプライベートと仕事の境界線に混乱が生じてしまい、それが長時間労働と休みの減少につながっている」。
米国のピュブリシスでは昨年はサマーフライデーを実施しなかったものの、今年は傘下のエージェンシー各社で一部の金曜日や休祝日にからめた休暇取得を推奨する動きが始まっている。ジョブズ氏は「当社にとっては社員の健康が最優先事項。ワクチン接種が進み、一部の規制が緩和されているところなので、夏の期間を利用して家族や親しい友人と安全に再会し、有意義な休暇を過ごすことを奨励している」と話す。「人によって金曜日を何回か休むかしれないし、または当社ですでに長めに設定している休暇期間に休みを追加する人もいるだろう」。
金曜日の終業時間を早めてサマーフライデーとするエージェンシーもある。夏のあいだ、金曜日を終日休みとする試みもあれば、より柔軟な制度を試すエージェンシーもある。
たとえばコードスリー(Code3)は昨年、金曜日を半休にした。しかし、その半休をフル活用できる社員がいる一方で、ちょうど休もうとしたタイミングで仕事が入ってしまう社員もおり、「もっと各人に都合のいいスケジュールを組めるような余裕と柔軟性」が必要だと感じたと、同社人事担当バイスプレジデントのエイミー・フォレスター氏は言う。
そこで、フォレスター氏は「『DIY連休』という制度を設けた」と話す。この制度では、メモリアルデー(戦没者追悼記念日、5月最終月曜日) からレイバーデー(労働者の日、9月第1月曜日) のあいだ、月曜日または金曜日に合わせて5回の休みを取得できる。「いつ取得するかについては特に指示はしていないが、取得を計画するように指示している。旅行も再開されているところであるし、社員には夏を満喫し、再び人生を楽しんでほしい」とフォレスター氏は語る。
クリエイティビティを守る鍵
休暇取得奨励制度を設け、従業員に夏の金曜日を活用してもらおうと取り組んでいるのは、レイン・ザ・グロウス・エージェンシー(Rain the Growth Agency)の社長兼COOのジェーン・クリサン氏も同じだ。昨年から金曜日の終業時間を早め、有給休暇を40時間取得するごとに500ドル(約5万5000円)の奨励金を支給している。
「数字を見て、有給休暇の取得が進んでいないことに気が付いた」とクリサン氏は説明する。「誰にとっても精神的によい状況ではなかったため、今回の奨励金制度導入で、社員に休暇を取って休養してほしいと考えていることをあらためて強く打ち出した」。
各社幹部は、休暇取得がクリエイティビティを確保する鍵を握るとし、社員の燃え尽きを回避することはエージェンシーにとって極めて重要なことであると口をそろえる。
「燃え尽きは、会社の活力源である好奇心とクリエイティビティに致命的だ。だからこそ、充電とリフレッシュに関して何らかの制度を設ける必要があると考えた」とTBWA\シャイアット\デイ(TBWA\CHIAT\DAY)のロサンゼルス支社社長、エリン・ライリー氏は述べる。「社員のメンタルヘルスが向上し、それに伴って仕事の質も向上している。パンデミックが終息しリモートワーク体制を終えたあとも、この取り組みを続けていくことになると思う」。
[原文:Some agencies are giving summer Fridays a second look so employees can ‘enjoy their life again’]
KRISTINA MONLLOS(翻訳:SI Japan、編集:分島 翔平)