GoogleとFacebookに次ぐ、デジタル広告の第三極と目されたSnapchatだが、早くも正念場を迎えた。 IPOから最初の決算となった第1四半期決算(Q1)で、運営会社Snapの収益がウォール街の予想を下回る1億 […]
GoogleとFacebookに次ぐ、デジタル広告の第三極と目されたSnapchatだが、早くも正念場を迎えた。
IPOから最初の決算となった第1四半期決算(Q1)で、運営会社Snapの収益がウォール街の予想を下回る1億4960万ドル(約165億円)だった。上場に絡む支出もかさみ22億ドル(約2500億ドル)の損失を計上。株価は一時20%以上下げた。
Snapchatの日間アクティブユーザー(DAU)は1億6600万。インスタグラムは月間7億、日間2億超と発表している。SnapのDAUはQ1で800万人しか増えなかった。伸びの鈍化は昨年末頃から指摘されており、収益成長も期待を裏切った。
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Facebookによる的確な競合戦略が功を奏したかもしれない。「24時間で消える動画」や「タテ縦動画」などSnapchatが優位性を発揮した機能面の差を、徹底的なコピーで消した。ユーザーベースやモバイルアップとしての成熟度、開発能力、アドテク、ビジネス開発など優位性を築いている部分での競争に落とし込んだ。

鈍化するSnapchatのDAU成長。Via Snap Q1
Snap CEOのエヴァン・スピーゲル氏は「もしクリエイティブな企業でありたいと思ったら、自分が素晴らしいものを作り出し、人々が自分のプロダクトをコピーしているという事実を基本的に楽しみ、心地よいと思わないといけない」と語り、暗にFacebookのコピー戦略を非難した。

Snapchatストーリーに瓜二つのインスタグラムストーリー。数あるコピーのなかでももっとも効果的だったと言われている。Via Instagram blog
DIGIDAY[日本版]の「重要なのは規模?:スナチャよりもインスタを選ぶ広告主たち」によると、インスタグラムストーリーが2016年8月にリリースされて以来、SnapchatのDAU平均成長率は82%低下したと言われている。アドテクに関しても、セルフサービス方式の広告買い付けで差が出ているようだ。インスタは統合型ダッシュボードでターゲティングとトラッキングができる。Snapchatもセルフ方式を導入したが、評判はあまり芳しくない。Facebookは広告IDがもたらす豊富なユーザーデータをもっているが、Snapchatは利用者の属性情報やデバイスをまたいでトラッキングする能力をもたない。
FacebookのQ1は絶好調だった。収益は前年同期比49%増の80億3000万ドル(約8800億円)に達している。Googleの親会社AlphabetのQ1も絶好調だった。先月下旬にIAB(インタラクティブ広告協会)が発表した「インターネット広告収益レポート」(2016年)は暗に、GoogleとFacebookがスマートフォンオンリーに移行するデジタル広告市場を複占(デュオポリー)を築いていることを示していた。専門家の分析では、2社はデジタル広告市場(2016年)の70〜77%、市場成長の90%を占拠したようだ。
AlphabetとFacebookの決算や両者のモバイル広告での能力を見る限り、デュオポリーはグローバルで今年一層深まっていく可能性が高い。ただ、アジアに関してはアリババ(コマース内広告などを展開)、テンセントと2強に匹敵する規模の企業があり、多様化する可能性がある。
Snapchatが輝きを取り戻すには、広告事業の確かな成長と、欧米圏に集中するユーザーを外に広げることが必要だ。アジアではすでに無数のSnapchatクローンアプリが生まれ、淘汰が起きた経緯があるが。
以下、今週のその他の注目トピック。
▼ベライゾン31億ドル買収で5Gに弾み
米通信大手ベライゾンは通信企業ストレイトパスを31億ドル(約3400億円)で買収した。ストレイトパスは5Gに不可欠な技術の特許を保持しており、AT&Tとの入札競争で当初入札価格の2.5倍程度に高騰した。
▼Abema TVが亀田興毅企画で大ヒット
Abema TVの亀田興毅企画が大ヒット。過去最高の約1420万視聴を記録。あまりの人気からアクセス過多により、サーバーもろとも「ダウン」。
▼WPP、Amazon特化コンサル買収
広告ホールディングス世界1位のWPP参加のデジタルエージェンシー、ポッシブルは9日、Amazon特化型コンサルティングファーム、マーケット・イグニション(Marketplace Ignition)を買収。創業6年、従業員35人。広告会社の広告以外のサービス拡充傾向に拍車か。
▼Twitter、NFLと提携
米アメフトリーグ(NFL)は11日(現地時間)、Twitterで動画番組をストリーミングすると発表した。コンテンツは30分のライブ番組、試合前番組、ビデオクリップなどを予定している。
▼Facebookが「不快サイト」防止策
Facebookは低質な情報を含むWebページへのリンクがニュースフィードに掲出されるのを防ぐ取り組みを明らかにした。低質な情報とは、リンクに飛んだ際に読者が不快感を感じるものであり、センセーショナルでスパム的なものとしている。
▼Googleが有名VRスタジオ買収
GoogleはVRスタジオ「オウルケミー・ラブス(Owlchemy Labs)」を買収した。GoogleのVRハードウェア / プラットフォームのデイドリーム部門に参加する。
Written by 吉田拓史