ピュブリシス・グループ(Publicis Groupe)のデジタルエージェンシーであるポーク(Poke)のオフィスには、中央の天井に円環状のディスプレイ「halo」を設置が設置されている。概念実証用のラジオプレイヤーだ。haloではありきたりなBGMを流すのではなく、ポークの企業文化を象徴する存在になっている。
「音楽は、我々の文化の決定的な要素だろう。仕事場が変わっても音楽は常にある」と、ポークの共同創設者であるニコラス・ローペ氏は、英DIGIDAYに語る。
どんなエージェンシーなのかは、素晴らしいオフィス空間だけではなく、社内に流れる音楽からもわかる。
ピュブリシスグループ(Publicis Groupe)のデジタルエージェンシーであるポーク(Poke)のオフィスは、もともとイーストロンドンにあった。だが、1年半前に同グループのほかのエージェンシーと同様に、ベーカー街に移転した。ポークの企業文化の多くを新しい環境にもっていくことはできなかったが、同社のラジオシステムだけは違った。
ポークは新しいオフィスにやってくると、オフィス中央の天井に円環状のディスプレイ「halo」を設置。概念実証用のラジオプレイヤーだ。haloではありきたりなBGMを流すのではなく、ポークの企業文化を象徴する存在になっている。
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社内交流を生み出す装置
「音楽は、我々の文化の決定的な要素だろう。仕事場が変わっても音楽は常にある」と、ポークの共同創設者であるニコラス・ローペ氏は、英DIGIDAYに語る。
多くのオフィスがそうであるように、エージェンシーのオフィスもヘッドフォン文化の興隆によって、表向きは静かになってきている。かつては、よそよそしいと考えられたヘッドフォンだが、オープンオフィスのエージェンシーでは、いまや定番のアクセサリーだ。ヘッドフォンは集中するための手段であると同時に、表向きは協力することになっている同僚から、うまく逃れる方法でもある。
オフィスミュージックの支持派は、仕事場に音楽が流れることの利点をいくつも指摘する。エージェンシーのヒュージ(Huge)やデジタスLBi(DigitasLBi)は、共有プレイリストのおかげで、従業員が前向きに雰囲気作りに貢献できるようになっており、これは内気なインターンにとってはとりわけ有用だろう。また、共有プレイリストは週末のムードも作りだしてくれる。オープンオフィスでは音楽が境界を打ち破る。それが、たとえテイラー・スウィフト「オタク」の主張であろうと、従業員が共通する興味や関心でつながることが、協力や関係構築を促すのだ。
音楽で生産性が向上する?
ソーシャル専門のエージェンシー、ウィー・アー・ソーシャル(We Are Social)の場合、従業員が自分の音楽を差し込める「ゾーン」が6つある。同社のオフィスマネージャーであるジェンナ・パンナマン氏によると、オフィスが静かなときも、BGMを流して「話がほかの人に聞こえにくくなる」と、のびのびと話ができるようになるのだという。
音楽を聴くことによる生産性の向上や、どの作業にどの種類の音楽が合っているかに関しては、すでに研究が行われている。エージェンシーであるアイリス(Iris)は、実際に音楽の効果を経験。アイリスのグローバルPRディレクター、ジュリア・ナイチンゲール氏は、「プランニングのチームは心が落ち着くクラシック、スタジオとデザインチームは元気のいいビート。クリエイティブはパワーバラードからテクノまで何でもいい」と語った。
もちろん、音楽の好みはさまざまだ。そのため、オフィスDJの役割が極めて重要になる。ポークの開発者たちは、ラジオの民主的な活用に長年取り組んできた。現在、ポークラジオのインターフェイスはWebベースのアプリになっており、「Spotify」で曲を選び、ドラッグして曲を追加する。曲には賛成票と反対票を投じることができる。反対票があまりに多い曲は完全に削除され、悲鳴がオフィスに響くらしい。
システムをグループ内で共有
ポーク創設者のローペ氏は、「ラジオを中心にした劇場のようになっている」と、オフィス環境について語る。「一部の曲やジャンルに対しては、明確な不賛成が表明される」。その結果、定期的に新しい音楽が追加されるという。「一般のラジオ局の場合、繰り返し同じ音楽を楽しむリスナーが多く、ほかの従業員も同じ曲を繰り返し聞くことになる。うちの場合は、曲のリピートは好まれず、新しいものを発見したがる」。同社ではこれが前向きな感情と創造性を喚起しているのだそうだ。
ポークのラジオには、誰が最高のDJか、誰がもっとも趣味が広いか、何曜日にどの種類の曲がいちばん再生されるかといった幅広いデータがある。誰も曲を用意しなければ何も流れないが、業務時間の94%は音楽が流れている。
このラジオシステムは6カ月前から、ピュブリシスグループのほかのエージェンシーにも公開されている。
「このラジオシステムから新しい体験が生まれる。それによって、この取り組みがより確立されるかもしれないし、対処が必要な点が浮き彫りになるかもしれない」。ただし、ピュブリシスグループは、さまざまなエージェンシーがポークの音楽プレイヤーをどのように使っているかに関する具体的なデータは披露しなかった。
企業文化を反映する音楽
「従業員たちは気分を反映してくれる曲を探している」とローペ氏は語る。気が散って時間が浪費される場合もあるかもしれないが、より健全な企業文化に貢献しているという。
「以前は、企業内部をつなぐのは情報主導のイントラネットだったし、ビジネスや企業内のコミュニティーは、感情的なものというよりは情報共有の場的なものとして考えられてきた。そこから、社内で対話を生み出すテクノロジーを開発することで、我々はずいぶん進化した。有益な対話かどうかにかかわらず、そうした対話が交流という協調的な精神を可能にする。会議室に入った人たちが、すべてをゼロから始めるということにはならない。音楽はつながりを生み出す素晴らしい装置なのだ。そのソーシャルなまとまりに全員が参加することができる」。
もちろん、職場に音楽が流れることの利点を褒めたたえる人がいる一方で、ただでさえ集中力が持続しないところに気を散らすものが増えるだけだと考える人もいる。どんな音楽を流すのか意見をまとめようとして、緊張が引き起こされるかもしれないし、とにかく音楽は嫌いだという人がいるかもしれない。ポークのシステムがすべてのエージェンシーでうまく行くことはないだろうと、ローペ氏も認める。
「音楽は、企業文化をより引き立たせる。もっともその企業が確固たる文化をもっているのであれば、ということだが」。
Lucinda Southern (原文 / 訳:ガリレオ)