メディアバイヤーたちは、新型コロナ禍によって続く不確かな状況と仕事のプレッシャーにより、急性の燃え尽き症候群状態に陥っている。この数カ月というもの、メディアバイヤーの多くは不透明な先行きだけでなく、クライアントのための絶え間ないプラン再考にも翻弄されてきた。
メディアバイヤーたちは、新型コロナ禍によって続く不確かな状況と仕事のプレッシャーにより、急性の燃え尽き症候群状態に陥っている。
この数カ月というもの、メディアバイヤーの多くは不透明な先行きだけでなく、クライアントのための絶え間ないプラン再考にも翻弄されてきた。先に決まっていたキャンペーンをそのまま実行する広告主が減っているからだ。いまや物事はぎりぎりまで決まらないことが増え、広告主がバイヤーにプランの微調整を求める頻度も格段に上がっている。それはバイヤーにとって長時間労働と消耗を意味し、新たに期待されるものが彼らのメンタルヘルスに悪影響を及ぼしているという。
「常に計画の練り直し、予算の組み替えだ」と、あるメディアバイヤーは匿名を条件に明かす。「多くのクライアントで、予算の承認を得るためのある種の社内闘争が起きているのではないだろうか。そのせいもあり、計画通りに物事が進まない。クライアントの多くは『計画は立てておいてほしいが、実行に移せるかどうかは直前になって知らせる』という感じだ。私は自分のキャリアにおいて、これほど多くのプラン再考を手がけたことはない」。
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「今年はレベルが違う」
バイヤーたちは、直前になってクライアントから調整が入ることには慣れているが、今年はレベルが違うと話す。
デジタルエージェンシーのルナ・ソーラー・グループ(Lunar Solar Group)の共同創業者でデジタル戦略担当ディレクターを務めるキース・マーティン氏は、「大急ぎでやらなくてはならないことが増えたのは確かだ」と話す。「実際この数カ月、我々は計画の調整と再調整に追われていて、まさにひっきりなしという状況だ」。
全体的に不確かな状況が続いていることで、広告主はキャンペーンにしっかりとコミットすることを躊躇しており、その結果、バイヤーが代替プランを立案したり、予算の割り当てについてクライアントと話をしたりすることに費やす時間が長くなっている。そしてこうした状況は、これまでには見られなかった消費者行動のせいで難しくなっている、ホリデーシーズンや第4四半期向けの計画立案に加え、インベントリーの問題にも波及している。そして、それがさらに「マーケティング目標に関連する予算や、キャッシュフローの予測に影響」を及ぼしていると、Wプロモート(Wpromote)のソーシャル担当 バイスプレジデントを務めるケビン・サイモンソン氏は話す。
広告主からのプレッシャー
広告の予算や計画を練り直すとなると、仕事から離れてリラックスする余裕さえ奪われかねない。バイヤーからは、いまこの状況で計画を練り直すだけでなく、パフォーマンスも維持することのプレッシャーは耐えがたいとの声が聞かれる。仕事の困難さが増しているのは、不確かな現状や絶え間ない計画の見直しばかりでなく、クライアントに非現実的な対応を期待されることも原因だというバイヤーもいる。
「いまでは、24時間年中無休で(クライアントから)Slackのメッセージが届く。文字通り日曜の午前1時に連絡してくるのだ」と、D2C(Direct-to-consumer)ブランドを顧客とするあるメディアバイヤーは、米DIGIDAYの取材で述べている。「私の場合、ワークライフバランスなど完全にどこかへ行ってしまった。私の知っている人たちも同じだ。これは、クライアントからのプレッシャーのせいにほかならない。パフォーマンスの悪い日が1日でもあると先方は大騒ぎするが、以前はもう少し寛大さがあった」。
一方別のバイヤーは、この手のプレッシャーはこの仕事につきものであるとする。しかし、ほとんどの人が在宅勤務をしているいま、多くのバイヤーがキャンペーンのパフォーマンスを完璧なものにすることに、「余計に」囚われてしまっているという。「席に1日じゅう座り、ストレスで苛立ち、絶えず更新ボタンを押し、あれこれとこねくり回し、ベッドに入るときまで考え続ける状態に陥るのはある意味簡単だから」と、マーティン氏は話す。
業務時間を制限するエージェンシーも
エージェンシーのなかには、在宅勤務に限度を設定し、コンピューターから離れる時間を持つよう、従業員に指示する企業も見られる。たとえば、ダラスに拠点を置く独立系メディアエージェンシーのアーム・キャンディー(Arm Candy)は、従業員に対し、今年は15日間の休暇をとることを義務付け、またメールや時間外のメッセージへの対応に制限を設けている。「ある程度のワークライフバランスの維持を図っている」と、同社COO(最高執行責任者)のローレン・ミラー氏は明かしている。
さらに同氏は、「従業員には金曜日早めに退勤するよう呼びかけ、休暇をとることを奨励している。そうすることで、集中してより一層仕事の成果を上げてもらうためだ」の述べる。バイヤーたちは、絶えず計画を練り直し、先の見えないこの経済状況でもクライアントのために「良い結果」を出すよう求められ続け、消耗してしまっているという。
「消耗し続けることの代償は非常に大きい」と、元バイヤーで、最近仕事のストレスから現在はクライアントサイドに移ったある人物は語った。
[原文:‘Seemingly nonstop’: Constant requests to replan and retool campaigns is getting to media buyers]
KRISTINA MONLLOS(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:村上莞)